神経症で悩んでいる方へ : カウンセリングで大切なこと

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神経症のカウンセリング

「カウンセリング 森のこかげ」です。

いまご覧のこの記事は
神経症に悩んでいて
カウンセリングをお考えのかた
に向けて記しました。

お読みいただいて
ご一緒に考えていけたら幸いです。

神経症の症状には
その人なりの理由や背景があるものです。

そのためカウンセリングでは
症状のことばかりでなく
いろいろなことを話し合いながら
ご一緒に考えてゆくこと
が、とても大切になります

あなたが少しずつ、楽になってゆくことが大切です。

神経症と呼ばれる分野は、あまりにいろいろな症状があり、しかも「体験した出来事や心の悩み」が原因として大きいものや、「生まれつきの体質や気質」が要因として関わるもの。「こころの働きの癖」が原因となっているものなど、さまざまです。
ですから、神経症という大雑把な呼び名を廃止して、症状ごとの、たくさんの診断名に分けたほうがよいと、考える傾向になっています。

 神田橋條治(じょうじ) 精神科医

神田橋氏の言葉にあるように
神経症としての症状は多様であるために
「人の数だけ症状がある」とも云われるほどです。

そして、『神経症』という用語は
患者さんや一般向けには、余り使われなくなっています。

しかし、治療者間や臨床家同士では
いまも普通に使われています。

心のペースを大切にしながら : 遠回りの近道

神経症のカウンセリングでは
症状を改善すること・取り除くことも
もちろん大事です。

そして、そのためには
むしろ、いろいろなことを話し合いながら
ご一緒に考えてゆくという
〝心のペース〟を大切にしながらのカウンセリングが、とても大事になります。

もしかすると、遠回りに思われますか?

でも、遠回りに見えて
結局は一番の近道ということは、案外多いかもしれません

以前のことですが
強迫きょうはく症の悩みでいらしていた女性に

病院のカウンセリングの時には症状の話ばかりだったけど、ここだと、いろいろなことを話して聴いてもらえるので、自分に合っている

そう云われたことがあります。

この記事では
神経症のカウンセリングで大切なことを
実際のカウンセリング経験を通して
お伝えしています。


臨床としてのカウンセリング

もしかすると、臨床(りんしょう)とは
聞き慣れない言葉かもしれません。

カウンセリングは臨床の世界にあるもので
カウンセラーは、臨床家 (職人)と呼ばれる者に属しています。

たとえば
下坂幸三 (しもさか・こうぞう)氏が
このように語っています。

下坂幸三 精神科医・心理療法
カウンセリングに志す者なら青年・壮年そうねん期には一日七〜八時間、臨床に打ち込める時間が持てたら幸せです。
難しい例も敬遠しないで多数例の経験を積まなくては、いつまでたっても、腕の立つ心理療法の職人にはなれないと、信じます。

症状の意味を大切にする

そして臨床には
ひとつの基本的な考え方があります。

「症状の意味を大切にする」
という考え方・姿勢です。

下坂幸三氏の言葉をお借りします。

下坂幸三
症状の意味を大切にするということは、治療的方法の違いを越えて、これまでは臨床の場での基本的な姿勢でした。
しかし薬物治療が全盛になった今日、精神科医療の世界では、このことが失われつつあることが心配です。


誤解されないために申し上げると
カウンセリングの中で
「症状の意味を考えていきましょう」
などと、やっているわけではありません。

『症状の意味を大切にする』というのは
具体的には・・・

症状とは
なにか大切な意味があって、現れているものかも知れない。
あるいは
なにかの必要があって、現れ出ているものかも知れない。

・・・このような
症状に向けた臨床家の眼差まなざしのことをいいます。

そして注意すべきは、
「症状の意味」という言葉にこだわって
それを無理に掘り出してみよう
などとすると、良い結果にはなりません。


道を踏み迷わないために

時折、こう云われることがあります。

こんな症状に、自分にとって意味があるなんて少しも思えない

おっしゃる通りだと思います。

ただ念のために申し上げると、
この場合の意味とか必要とは
雨が降りそうなので傘を持っている
・・・というような
整合(せいごう)的で、目に見えて分かりやすいもの
・・・ではないところに
その深い特徴があるかも知れません。



そのため〝症状〟を取り除くことにしか
両者 (ご相談者とカウンセラー)の目が向かずにいると

深い森の中に入りこんで
道を踏み迷うような事になりかねない
・・・ということがあります。

神田橋條治
神経症のパターンや症状は、すべて好ましからざるものであり、誤った学習の結果であると見なされがちである。しかし、この見方は治療には役立たない
好ましくないと前提して始める治療が、どのような経過をたどるかは、すでに日常目にする通りである。

うずくまる少女のシルエット

症状が改善してゆくとき : 心の道順に添うていくこと

下に記した言葉たちは
筆者とのカウンセリングの中で
ご相談者のかたたちが、語ってくださったものです。


落着いてきて (症状が) 気にならなくなってきたら、自分の中がカラッポになってしまったような、ひとりぼっちで暗闇に落ち込んでしまったような、そんな気持ちになってしまいました。


もうこれ以上良くなりたくない。


良くなりたいと思っているはずなのに (症状) がなくなったり、軽くなったりしていくのが、とっても不安なんです。


ご相談者の中には・・・

久しぶりに思いっきり食べて吐いたら、まだこんなに吐けんるだと思って安心した。

・・・そう打ち明けてくださる方もいます。

お読みになって
意外に思われるでしょうか?

しかし、人の心にうていくなら
少しも意外な言葉ではありません。

何故なら、
ご自分の中の様々な気持ちと出会い
それを少しずつ整理し消化してゆくこと
・・・

それが、神経症に限らず
〝こころ〟が関わることではとても大切になるからです。

小倉 清(おぐら・きよし) 精神科医
症状には、それなりの意味があり、歴史があり、必然性があってあらわてきているものであろう。
そうした背景を無視することは、臨床家のなすべきことではないのである。

著名な精神科医であった
故・安永浩(やすなが・ひろし)氏が
次のような事例を語っています。

安永 浩
長年の神経症症状が見事にとれて、医師・本人ともども喜んだのに、突然自殺を遂行するというショッキングな例も、実際に存在する。

身体に現れる神経症

身体の機能障害(きのう・しょうがい)として生じる神経症も、
よく知られています。

機能障害とは
肉体には具体的に疾患しっかんや病変は確認できないにもかかわらず
その動きや働きの面で、失調がみられる状態です。


役者さんに見られる症状

役者さんの中には
セリフを喋っている時に
口が思うように動かなくなる症状に
苦しむ方がいらっしゃいます。

ジストニアと呼ばれていますが
神経症の症状のひとつです。

カウンセリングにもお越しになります。

楽器演奏にかかわる症状

音楽大学の在学生だとか
音楽教室の先生の中には
楽器演奏にかかわる指や手が
思うように動かなくなる症状に悩むケースがあります。

手や指に身体上の異常は見られません。

スポーツ選手のイップス

スポーツ選手に見られるイップス
このカテゴリーに入ります。

早めの対応が大切

ここに挙げたような
からだに現れる症状の場合には
症状が具体的な見えるものとして
現実生活に現れ出るために
「どうにかしよう」という焦る気持ちから
症状に対して試行錯誤が繰り返されているものです。

そうなると
発症したその時点での内的な意味から
(症状的には同じであったとしても)
どんどん遠ざかった状態になっていきます。

えて、専門的な表現を用いると
初期状態に対して、二次的、三次的な加工が加えられていく
という言い方になります。

カウンセリングをお考えの場合には
可能であれば
発症後、できるだけ早めのほうが良いように思います。

田辺靖雄さんのケース

      田辺靖男と九重佑三子の写真

歌手の田辺靖男さんのケースも、
こうした病態だったかも知れません。

ご自分では気づかぬうちに
心がいっぱいに、なっていらしたのでしょうか。


ある朝、仕事に行くために玄関を出て、歩こうとしたとき、両足の付け根に激しい痛みが走って、そのまま一歩も歩けなくなってしまった。
足を踏み出そうとすると激しい痛みが襲ってくる。
すぐに病院へ連れていってもらい、その日から車イス生活。

通院しながら、病院でありとあらゆる検査をしたけれど、どこにも異常が見当たらない。「原因不明」と告げられた。

そこで、すぐに入院するよう云われた時、奥さんで歌手の九重ここのえ佑三子ゆみこさんは、「原因が分からず、治療法もないというなら、入院させる意味がありません」と云って、自宅に連れて帰って来たといいます。

その日から、自宅で夫婦二人三脚で養生をしていく中で、また元気に歩けるようになり、1年後に仕事に復帰したということです。

玄関から出ようとして歩けなくなる暫く前から、体調の変調があったと云います。
たとえば、あくびが出て仕方がない。とにかくあくびが出る。

それから歌詞が覚えられなくなっていた。
ぜんぜん歌詞が頭に入ってこなくて、ステージに出てもうまく歌えなくなっていたけど、忙しかったので、とにかく仕事をこなし続けていた、と云います。


もしかすると、発症のしばらく前から
ストレスと疲労とによって
なんらかの葛藤かっとう状態にいらしたのかも知れません。

奥さんの九重ここのえ佑三子ゆみこさんは、
「絶対に治る、良くなると信じていた」と語ります。

ご主人を見ていて、もしかすると
何かを感じていたのかも知れません。

ただし、一見神経症ではないかと
見まかうような機能障害が
中枢神経の疾患による場合もあるため、
まず検査が必要です。


カウンセリングは「試しに一度」でも
もちろん大丈夫です。

あなたが、少しずつ楽になっていくことが、一番大切です。

そのために
カウンセリングはあります。

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