「心因」について


精神医学では、むかしから
さまざまな病態について、
その病態の元ととなる発病要因を、
「内因性・外因性・心因性」という
三つの要因として捉えてきました

精神医学は以前から「内因性」「外因性」
「心因性」の三つの原因領域を区別して考
えておりました。
この三分類はいろいろな問題を含んでいま
すけれども、成因論を考えて行く上で、
ひとつの枠組みとして残しておいてよいと
思っています。
(木村 敏 精神科医)

ここでは、
内因・外因・心因という三つの要因の中で、
カウンセリングに最も関わりの深い
「心因」について、触れています。



単なる教科書的説明でなく、
臨床や治療というものに即して
「心因」の考え方を語っているのが、
神田橋條治氏(精神科医・精神療法)です。

少し長くなりますが、
それを引用されていただきたいと思います。

『神田橋條治 医学部講義』創元社

(講義集なので原文は話し言葉ですが、
 ここでは文体を少し変えています)


「心因」というのはどういうことか。
たとえば、大阪の池田小学校で、たくさんの
子どもさんが傷つけられたり、殺されたりし
たけれども、死んだ人は心因反応を起こしま
せん。
生きている人だけが起こすものです。

あの事件のとき、ケガをした人がいます。
そばにいて免れた人がいます。見ていただけ
の人がいます。話を聞いた人がいます。一つ
の事件だけど、関わり方によって、人それぞ
れ条件が違う。

やっぱり刺された人、ケガをした人がいちば
んショックが大きかろう。
見ていた人はその
次だろう。話を聞いた人、テレビで見た小学
生なんかも、何かのショックを受けただろう。

人に現れる精神症状は、だいたいシッョクの
大きい人が重くて、小さい方が軽いだろうと
思うね。これはその通りです。だけども、
たくさん傷を受けた人がいちばんい心理的
な症状が出てくるかというと、そうではない
の。いろいろあるんです。話を聞いただけで、
ひどい反応を起こす人もいます。

そうすると、ケガをしたとか、現場を見たと
か、話を聞いたというのは、それぞれの
状況因であって、状況因が、そのままイコー
心因ないということなんです。

状況因とプラスそれを受け入れる個体の資質
との組み合わせによるものなんです。
医学部で勉強することでいえば、何でも同じ
です。たとえば細菌学で言えば、細菌プラス
宿主側の免疫能の問題があります。同じ考え
方です。

状況因を受け止めるその個体の性質によって、
心因というもの(心因の程度や中身)が作ら
れてくる。

別の言い方をすれば、状況因と個体との関係
で、ひとつの個体の中に、ある体験が作られ
てくる。
だから心因とは、言い方を換えると、その個
(その人)がどのような体験として受け止
めたかという「体験因」でもあるわけです。

そして、すべての事柄・体験の意味は、それ
見る人・体験した人によって、それぞれ違
って
くるものなんです。したがって科学的で
はないということで、「心因反応」という言
葉は曖昧だから使われないことになったの。

「体験」なんてものは曖昧で、本人しか分ら
んわけでしょ。多くは言語表現によってしか
捉えられない。だから科学的な概念としては
曖昧だということで、「心因」という言葉は
診断学のいろんな体系からは排除されたの。

なのに、なぜ精神科では「心因反応」という
言葉を使うのか。それは治療現場で「心因」
という言葉がいつも頭にあるといいからなん
です。
そして「心因」というものは何によって捉え
られるかと言うと、「察する」ことによって
捉えられるんです。

心因の存在は、診断されるわけではないの。
そうじゃなくて、心因というのは、「そう
じゃないかしら?」と思って、察してあげる
わけです。

さっき話に出た八十四歳のおじいさんだった
ら、「この人がウツになられたのは、いろん
な検査をしても何も出ないから、やはり歳を
取っていろんなものから離れてしまったため
に、憂うつになられたのだろうなあ」と察す
る作業がある。
それがなくて「症状評価尺度でやったら『う
つ』だから抗ウツ薬を出す」となると、それ
は〝科学〟です。ハッキリしたものだけを取
って、それで薬を出すという形になると、
命はメチャクチャになってしまう。医学だけ
で医療をするとムチャクチャになるの。

医療や治療には、うんと曖昧な領域がたくさ
んあって、お天気とか、食べ物とか、周りの
人と何を話したかとか、本人がどう感じてど
んな気持ちになったかというような、〝科学〟
に則らない因子がたくさんある。

そのときに、医療従事者に「察する」力があ
れば、道具としての医学を間違った使い方で
患者に用いることがないようにできる。
そういう察する力を残すために、「心因」と
いう言葉はまだ残しておいた方がいいんだと
思います。

お読みいいただけると幸いです
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