
混乱した心の部屋を整理する :
その大切な意味と効果
いろいろな事が重なって
気持ちが混乱したり、
どうしていいか分からなくなった時、
堂々めぐりにならない為にも、
散らかってしまって
どこから手をつけたらいいか分からずにいる部屋の中を
ご一緒に、少しずつ整理しながら
「部屋の中の見通しをよくしていく」ことが大切です。
見通しがよくなる事によって
次のようなことが生まれてきます。
それは、
「混乱した心」故に現れていたもの・・・
たとえば、
焦りからくる不安感やイライラ感、
自分を責めて落ち込む感情、などが
自然に薄れてゆく、ということです。
このことは、悪循環の思考や行動に陥らないためにも、大事なことになります。
そして自然に薄れてゆくことで、
ご自分で話しながら、たとえば
「わたしは、実はこう思っていたんだ」と
気づくことが出てきたり・・・。
カウンセラーは常に、このプロセスを大事にしながら、進めていく必要があります。
堂々めぐりによる悪循環と複雑化
上に記したプロセスのためには、
とても大切なことがあります。
ご相談者の心の状態 (内的な状態)が
『複雑化』することのない面談を心がける
・・・ということがそれです。
『複雑化(ふくざつか)』とは
少し分かりにくい表現かもしれません。
しかし、カウンセラーとしての経験から言えるのは、
複雑化してゆくことで、
様々な悪影響が生まれてくることです。

複雑化による影響: カウンセリングの副作用
複雑化につながるものに
侵襲的なカウンセリングがあります。
侵襲的とは(しんしゅう・てき)と読みます。
侵襲的な関わり方が
心の複雑化を生んで
副作用につながる場合があります。
以前のことですが、私の目に
「カウンセリングやセラピーの強い副作用の中にいらっしゃる」と感じる方が、時々お越しになりました。
ご本人自身では・・・
(以前のカウンセリングで) 自分の問題を、まだ解決し切れなかったので、今もこうなっていると思う。
・・・そうした意味の言葉を語ることが
殆どだったように思います。
そして、詳しく伺っていくと皆さんが、
侵襲的なカウンセリングのセッションを、繰り返し受けられていました。
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その大切な意味とは
このような場合には、
丁寧にお話をうかがいながら、
副作用の影響から少しずつ離れて、
ご自分を取り戻すお手伝いをすることが
もっとも大切なサポートになります。
わたしの経験では、そうすることで皆さん
安心した表情になって帰っていかれます。
ロジャースの言葉 : カウンセラーにとっての大切な姿勢
この章では
カウンセラー側の姿勢を振り返ってみます。
侵襲的なカウンセリングを防ぐ意味からも
カール・ロジャースが、
カウンセラーに向けて
大切な言葉を残しています。
カール・ロジャースとは、カウンセリングの世界では今も深く尊敬されている人物です。
「 自分のあり方が、クライエントに対してどのような影響を与えているかを、自分自身への批評眼をもって検討し続けること」
ロジャースのこの言葉は、
カウンセラーにとって
「自分の関わり方を、常に見直しつづける姿勢の大切さ」を教えてくれています。

同様なことが医療の世界にもあることを、
精神科医の立場から星野 弘(ひろし)氏が述べています。
星野 弘 精神科医
治療のやり方やアプローチの仕方によって、患者の予後(予後とは、将来にわたっての状態という意味)は変わる。
しかし患者の予後はしばしば、患者の個人的な性質に帰せられてしまい、治療者の言い訳になっている。
だが、治療者側の要因の方がよほど問題であると、私は思う。
しかも当の治療者が気づいていない場合が少なくないのは、原因を患者の個人的な性質や精神疾患の特徴にして、自分の治療を省みないためである。
患者さんとの治療関係を大切にされてきた星野氏の指摘は、
医療者だけでなく
カウンセラーにとっても大切な言葉になります。
一緒に片付けながら
散らかってしまって
どこから手をつけたらいいか分からずにいる部屋の中を
ご一緒に、少しずつ整理しながら
前向きな一歩を踏み出してゆく。
私たちの心は
散らかった部屋のように混乱し、
どこから手をつけていいか、分からなくなることがあります。
誰の心にも
そうした状態が訪れることがあります。
ですので、
堂々めぐりの中で道を間違えないためにも
お一人だけでは考えず、
ご一緒に整理しながら
改めて考えてゆくことが、大切になるように思います。
そうしたカウンセリングでありたいと
思っています。
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