| はじめに |
カウンセリングも臨床行為ですので
臨床というものには共通して大切なことが
幾つかあると思います。
その中のひとつで
しかも、とても大切なものに
ご相談者の状態を
複雑化させないこと、が挙げられます。
複雑化しないように
カウンセリングをおこなっていく上で
ご相談者の内的な状態が
複雑化することがないような面談を心がける
・・・ということが、臨床では何より大切です。
たとえば、以前のことですが
わたしの眼には
カウンセリングやセラピーの
副作用の中にいらっしゃる
・・・そう思える方が
時々お越しになりました。
ご本人自身では
(以前のカウンセリングやセラピーで)
自分の問題を、まだ解決し切ることが出来なかったので、今もこうなっている・・・
そうした意味の述懐をされる場合が
殆どだったように思います。
そしてお話を詳しく伺っていくと
殆どの方が、侵襲(しんしゅう)的なカウンセリングのセッションを、繰り返し受けていました。
侵襲的とは、目の前のクライアントの心の状態や人となりを推し量らずに、あるいは推し量ることができずに、心の中を掘り返してゆくこと。
このような場合には
詳しくお話をうかがいながら
副作用の中から少しずつ
覚めてゆくことをお手伝いするのが
最も大切なサポートになります。
壊病と医原症
医療の世界
たとえば中医学(中国医学)には
壊病(えびょう)という言葉があります。
壊病とは、見当はずれだったり
適さない治療や対応を行なうことで
患者さんの状態や病像が変化していき
診断名が次々に変わっていくような姿を指しています。
日本にも「医原症・医原病」
という言葉があります。
元々の病気によるものではなく
治療が原因で生じている症状や病像という意味です。
壊病と同じような意味です。
端的に云うと
治療によって悪くなっているということです。
このような壊病だとか
医原症・医原病というものは
残念ながら、非常によくあるものです。
わたしが申し上げる「複雑化」とは
このような意味のことです。
ちなみに、精神科医の星野弘氏は
次のように記しています。
治療のやり方やアプローチの仕方によって、患者の予後(予後とは、将来にわたっての状態という意味)は変わる。
しかし患者の予後はしばしば、患者の個人的な性質に帰せられてしまい、治療者の言い訳になっている。だが、治療者側の要因の方がよほど問題であると、私は思う。
端的な例は患者の自殺に表れる。
精神科の患者は自殺のリスクが高く、精神科医が治療活動を続ける以上、患者の自殺を避けて通ることは困難である。とはいえ、特定の治療者に高率に発生する傾向は、厳粛な事実である。
しかも当の治療者が気づいていない場合が少なくないのは、原因を患者の個人的な性質や精神疾患の特徴にして、己の治療を省みないためである。
星野 弘 精神科医
一緒に片付けながら
カウンセリングで申し上げると
ご相談者の状態が
複雑化することのないような面談の為には
ひとつには
散らかってしまって、何処から手をつけたらいいか分からずにいる部屋の中を
一緒に、少しずつ整理しながら
部屋の中の見通しをよくしてゆく
・・・という仕事が大切になります。
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このことは、当然ですが
初回だけのことではなく
常に一貫して在り続ける必要があります。
しかも、それをでき得る限り
「クライエント・センター」の場の中で
自由にお話しをして貰いながら進めてゆく
・・・ということが
カウンセラーのとても大切な役割です。
とは云え
なかなか難しいことも多いですし、
上手くできない場合も出できます。
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