フラッシュバックとトラウマ


フラッシュバックへの理解


もしかすると、

辛くなってしまったり、
ひどく苦しくなる場面の背後には

フラッシュバックが
関わっているかも知れません。

カウンセリングを行なっていると

「性格や考え方から来るもの」
と思われている問題の中に、

フラッシュバックが見つかることは
けっして珍しくありません。

| フラッシュバックとは |


心の領域で云う
〝フラッシュバック〟とは、

過去の体験を連想させるような・
過去の体験と結びつくような

なんらかの刺激に出会った時。

あるいはそうした体験記憶と
よく似た状況に置かれた時に、

(これをトリガー/引き金と云います)

〝あのとき〟の感情や感覚が
不意に蘇ってきて、

さまざまな反応を引き起こす状態、
を云います。

     ●●●

あるときテレビで、
住宅街で爆発があったニュースが流れ、
現場の近所に住む老人が

爆発音を聞いて、太平洋戦争の時の東
 京大空襲の情景を思い出して、とって
 もこわかった


と震えながら、カメラの前で語る姿を
見たことがあります。

| 一般のイメージでは |


フラッシュバックでは
上の老人のように

〝あのとき〟の情景や記憶も
一緒に蘇ってくるケースがあります。


もしかすると、多くの人が持つ
フラッシュバックに対するイメージとは、

そのようなものかも知れません。

つまり、事件や事故・
災害などに巻き込まれた方たちが

そうした記憶から抜け出せずに、

パニックになったり
なにかの精神症状を現したり

・・・というものとして。

     ●●●

しかし、そのようなフラッシュバックは

フラッシュバックの中でも
実は、少数派になります。

フラッシュバックを生むような
トラウマとなる体験の多くが、

実は、普段の生活や出来事の中・
日常の人間関係の中で
作られているからです。


カウンセリングで出会う
フラッシュバックのほとんどが

そうしたものになります。

| 感情だけが反復想起する |


多くのフラッシュバックでは、
トリガーに接した時に

無意識のうちに
感情や感覚だけが反復想起されるため

フラッシュバックが起きている(いた)、
と気づくことは
とても難しくなります。

神田橋條治・精神科医/心理療法家
パニックや衝動行為・行動がみられたときには、フラッシュバックではないかと、まず考えてみてください。

フラッシュバックという言葉が映画に由来するので、視覚イメージだとみんな思っているでしょ。そうじゃないんですよ。


| それは情動反応 |


フラッシュバックに結びつく
トラウマ体験(心傷体験)は

実際には
トラウマ〝感情〟として
脳裏に刻み込まれています。

トラウマ感情とは、

○ 怒りや恨み・恐怖心

○ みじめさ・悲しさ・くやしさ

○ 不安感・絶望感・ひどい無力感

・・・などの感情を云います。

そして、感情のエネルギーの
より強いものを「情動」と云います。

強い感情や情動は
自律神経系を通して

心身の反応を
瞬時に引き起こすことになります。

     ●●●

しかも、
「養老孟司さんのケース」にも
あるように

トラウマとしての感情は、

その場・その瞬間に、
無意識のうちに
脳裏に刻み込まれるため、

自分自身でも分かりません。


| それ自体で動いてゆく |


そして
一旦作られたトラウマ〝感情〟は、

きっかけとなった
体験や出来事とは離れて、

それ自体で本人を動かし
フラッシュバック反応を
引き起こすことになります。


| フラッシュバック反応 |


発生する感情や情動が強いほど、
たとえば

瞬間、頭が真っ白になったり。
混乱してパニックになってしまったり。

     ●●●

不安に襲われて動揺したり。

     ●●●

突発的な怒りが湧いてきて、
感情的な言動を見せたり。

     ●●●

ひどく辛くなったり苦しくなって、
(立ち去れるような場合には)
突然その場から立ち去ったり。

     ●●●

否定された様な思いになって
絶望感や悲しさに襲われたり。

・・・というような、様々な反応が
引き起こされることになります。

| 引き起こされる問題 |


つまりフラッシュバックとは、

過去のトラウマ体験による感情が
刺激されて、突然蘇ることで

なんらかの心身の反応が引き起される
情動反応」がその本質です。

情動反応ですので、
単なる考え方や気の持ちようなどで

解決できるものではありません。


更には、トリガーとなるものも
いわゆる
〝些細なこと〟が多く、

ご本人はもちろんのこと
周囲の人・身近な人たちも

その反応や行動が
フラッシュバックによるもだとは、
まったく分かりません。

多くの患者さんでは、フラッシュバックのトリガーになったものがごく些細なことのために、気づいていないことが殆どです。
神田橋條治・精神科医


そのため、その言動が
フラッシュバックからくる反応
にもかかわらず、

そんなふうになるのは、
自分がダメだから
自分の性格が弱いから」と

悩んだり苦しんでいる人たちが
いらっしゃいます。

     ●●●

たとえば、
ある女性のご相談者が、

自分が陥る状態が
フラッシュバックであることを知り、

そういう時には皆んな、自分と同じよ
 うになるんだと思ってた。でも他の人
 たちは、それを表に出さずに普通に振
 る舞えてる。わたしはそれが出来ずに、
 混乱して、周りの人に迷惑をかけてし
 まう。
 だから自分はダメで劣っている、と思
 って来たんです


そうおっしゃったことがあります。



(ある症例報告から)
有名大学を出た二十代のある女性は、従来のうつ病のように、頑張り続けた結果うつ病になったわけでなく、上司に「キミ、それくらいのことも出来ないのかね」と、言われたことで、うつ病にまでなってしまった。

もう1年以上も精神科クリニックに通院し、薬を飲み続けてるいるが、一向に治らないということでカウンセンリグを続けた。

そうした中で、この女性は、この上司の言動が、幼い頃の親への恐怖心を、無意識のうちに再燃させていたことが、分かってきたのである。


| トラウマ・体験と感情 |


繰り返すようですが

フラッシュバックの背後には、
その人にとっての

心傷体験からくるトラウマ感情が
活動しています。

そして、トラウマ感情を作る体験は
子どもの頃ばかりではありません。

人生のいかなる時期にでも、
フラッシュバックにつながる心傷体験は
起こり得ます。

     ●●●

作家の三島由紀夫が
あるインタビューの中で、
このようなことを語っていました。
体験ていうのは誰でもあるんですけども、それじゃあ、たとえば死にそうな体験をしたとか、エベレストに登って落っこちそうになったとか、そういうのばかりが体験ではないんですよね。

〝体験〟というのは分からないところに隠れていて。

たとえば道を歩いている時に、ちょこっと小石につまずいて・・・
その小石というものが、人生で大きな意味を持っちゃうことがある。
小さな石がね。

三島由紀夫


トラウマ体験というものも、

三島がここで語る〝体験〟の話と
相通じるものがあります。

| 奥で生き続ける〝体験〟 |


例えばですが・・・

頭ごなしの言動や態度に対して、

ひどく過敏・過剰に反応する人が
いらしたりします。

もちろん、そうした言動や態度に対して、
不愉快に感じない人は
いないはずです。

しかし中には、
そうした言動や態度を見せる人に対して

非常な嫌悪感や拒否感
あるいは、ひどく怒りや反発心を
示す人がいます。

しかもそれは、
実際に頭ごなしの言動を
行なう人に対してだけでなく、

そんな印象を受けるだけの人にさえ、
一方的に嫌悪感や反発心を
抑えられません。


もしかすると、 過去に誰かから
そうした扱いを受けて、

ひどく傷ついたり恨んだり、
不安や脅えたりした体験の記憶が

底の奥に隠れているのかもしれません。

それが、いま目の前にいる人に、
オーバーラップされてしまう ・ ・ ・。

| 回復のために |


フラッシュバックからの回復には、

それがフラッシュバックによって
起きている、ということを

知ることが大切な第一歩です。




落ち着いた場で、
少しずつ少しずつ、一歩ずつ、

その体験を
整理・消化してゆく中で、

一歩だけ・その分だけ
ご自分自身が成長してゆくこと。

それが本来の意味での
〝回復〟なのだと思います。

     ●●●

細かなことは色々ありますが、

そうした思いで
ご一緒に話し合っていきます。


カテゴリー心と身体






お読みいただけると幸いで
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