
気分の落ち込みのために
つらく苦しいと感じること
生きづらさを感じることはありませんか?
あるいは「波のある性格」だと
思うことはありませんか?
もしかすると、それは体質によるもので
『気分の波』のある体質なのかも知れません。

この記事では
カウンセリングでの経験に基づいて
この体質を持つ方に、理解しておいていただきたい大切なことを、お伝えしています。
ここでは基本的なことに絞って
わかりやすくお伝えしていますが
特に大切になるのは
ご自分自身の〝気分の波〟というものを
理解し、そして感じ取れるようになることです。
最後までお読みいただいて
ご一緒に考えていけたら幸いです。

『気分の波』のある体質とは?
上でも記(しる)したように
体質としてある『気分の波』を知ることが
まずはとても大切なことです。
〝体質・気質〟というのは
後天的な性格などとは異なり
生まれた時には既に
その人(子)の内に在るものを云います。
持って生まれているものを指します。
体質・気質は人によってさまざまですが
その中に「気分の波のある体質」と呼ばれるものがあります。
気分の波とは
この体質の方が持つ『気分の波』とは
日常の中で、何かのきっかけで・・・
気持ちや気分が落ち込んで
心身が、つらく苦しい状態になることがある。
〝気分の波〟が高く動いて
高揚感(こうようかん)が生じてくると
拍車がかかって止まらなくなる。
拍車がかかってやり過ぎてしまう。
・・・このようなことが生じます。
もちろん、同じ体質であっても
その現れ方や程度は、人によって違いがあります。

つらい気分の落ち込み
抑うつ気分というもの
この体質の人に生じる
〝気分の落ち込み〟は多くの場合
『抑 (よく)うつ気分』というものです。
抑うつ気分とは・・・
- 気分や気持ちが沈んでゆく。
- 一人になると何故か悲しくなる。
- 訳もなく物悲しさや悲哀感に襲われる。
- 虚しい気持ちが心に迫ってくる。
- 訳もなく、涙が出てくる。
・・・このような状態を生じるものです。
そして抑うつ気分とは
ただ気持ちが落ち込む・元気が出ない、というものではありません。
心身がつらく苦しい状態のものです。
「ダウンの時期」
と表現する人もいます。

〝気分の落ち込み〟になると
気分が落ち込んだ状態になると
後悔や不安がひどく湧いてきて
自分のことを責めたり
つらい堂々めぐりに陥っていきます。
気分が低下していくと・・・
過去や将来について、ちょっとした不安が浮かぶと、それがグルグル連鎖反応を起こして、苦しい悪循環の思考に入ってしまう。
・・・ということが起こりがちです。
朝起きた時に
こうした〝気分の落ち込み〟に苦しめられる、という方がいらっしゃいます。
たとえば
高校生や大学生から
このような訴えを聴くことがあります。
友だちといるときは、明るく元気に振る舞って、みんなから悩みがない人みたいに見られてるけど、一人になると悲しくなって、気持ちが落ち込んで、なにもやる気が起きなくなる。
テレビを見てても、なんでもないところで涙が出てくることがある。自分を責めたり、死んだら楽になるのかな、みたいに考えてしまう時がある。
これらの訴えからは
深い抑うつ気分がみてとれます。
ちなみに抑うつ気分での
「消えてしまいたい」
「死んだら楽になるのかな」という思いは
うつ病で生じる『希死念慮』とは異なり
多くは、その時の感覚的なものです。

理解することで変わってゆく
カウンセリングの中で
次のようなお話を伺うこともあります。
自分で考えても、コレといった理由や原因がよく分からず、気持ちが落ち込んで、家から出られなくなることが、これまでもあった。
それを繰り返したくないと思い、
「自分で考えているだけでは、よくわからないので」と、カウンセリングに足を運ばれる方がいらっしゃいます。
「理由や原因がイマイチよく分からない」
という場合もあれば
何かきっかけのようなことがある、という場合もあります。
しかし、そのいずれの場合にも
根底には「体質」が関わっていることが少なくありません。
ですので、
繰り返したくないと考えると
ご自分に生じる気分の波、というものを
理解できるようになることが
どうしても大切になってきます。

気分の波と高揚感
気分が落ち込むことがある一方で
日常の中で何かをきっかけとして
気分が高く動いて〝 高揚感〟が生じる場面があります。
「でも、誰にでも気分の波があるのでは?」
そう言われることがあります。
ですが、ここで云う〝気分の波〟とは、
誰にでもある気持ちや気分の浮き沈みとは
まったく性質の異なるものです。
それは、本人の気持ちや感情とは別の
むしろ身体的感覚に近い〝なにか〟だと云えます。
それ故に
体質から生じるものと考えられます。
気分が高く動いてゆくと
気分が高く動いて高揚感が生じると
気持ちや感情が一緒に引っ張られて動いていきます。
感情や行動の一瞬前に〝気分の波〟が生じているのです。
そのため、自分の(本人の)気持ちや感情だけを見ているだけでは
『気分の波』の動きを把握できません。
そして高揚感の中で
・拍車がかかって止まらなくなる。
・拍車がかかってやり過ぎてしまう。
…といったことが生じます。

たとえば、このようなケースが
仕事の場などでは
拍車がかかって止まらなくなる動きが
「完璧主義」と受け取られているケースがあります。
しかし、これは〝主義〟ではなく
体質からくる動きを意味しています。
たとえば普段は
「気配りのできる明るい人」
「場を盛り上げるのが上手で楽しい人」
と信頼されている方が
パートナーから 「もうやらないで欲しい」と言われている行動を
高揚感の衝動によって繰り返してしまい、トラブルになるケースもあります。
「どうしてしたのか」と
パートナーから問われても、
「自分でもよく分からない」としか答えられません。
ですから、ここで云う気分の動きは
自分の意識や性格とは別のものとして捉えることが大切です。
先生が最初に云っていた「拍車がかかって止まらなくなる」という感覚が、自分でも分かるようになってきました。
カウンセリングでご一緒に考えていくことで
そうしたお話を、お聴きするようになります。

意識されにくい
気分の高い動き・高揚感
ご本人にとっては
気分の落ち込みの時がつらいので
日常の中で気分が高く動いていく時
高揚感が働いている時というのは
苦痛や苦しさを感じるものではない為に
ほとんど意識されずにいます。
でも、実際の人生の中で
せっかくの機会をダメにしてしまったり
人との関係を損なうことが起きる時には
むしろ、高揚感の状態が
起因(きいん)する場合が多いようです。
次のようなお話を
お聴きすることがあります。
掲載は了解を得たものです。
仕事・アルバイト等の面接に行くと
面接担当者との間で話が盛り上がって
「ぜひ、明日からすぐに来て欲しい」と云われることも多いけど
帰ってから
不安や後悔がひどく迫ってきて
その日のうちに断りの電話を入れる
・・・ということを、繰り返してしまう。
ご本人は自覚できずにいましたが
「帰ってから、不安や後悔がひどく迫ってくる」というところには
『上がった後の気分の低下』によるものが
強くかかわっています。

たとえば、お話しをしていく中で
次のように打ち明けてくださる方がいます。
掲載は了解を得たものです。
気分に波のある体質かどうか、自分ではよく分からないです。
職場でハイテンションだけれど
家に帰って一人になると落ち込んで、繰り返し職場のベランダから飛び降りるイメージが出てくる、ということはよくあります。
あと先生が言っていた「やり過ぎてしまう」というのは、とてもよく分かります。たとえば私が「面白キャラ」として何かをしたことで、職場の人たちが喜んだとして、その時に私の中に、抗い難いうれしい気持ちが湧いてきて、もっともっと、と自分を駆り立ててしまうことは、あると思います。
そして、自分がすっかり必要以上に「面白キャラ」になってしまったことに、後からひどく後悔して落ち込んだりして・・・。
誰にでも気分の波はあると思うので、自分がその体質かどうかは、まだ分からずにいます。
ただ確実に言えるのは、私の母は恐ろしく気分の波がある人だ、ということです。
私が小さいころ、ふいに不機嫌になったり落ち込んだりして、私はそれが自分のせいだと思って、母の機嫌がよくなるまで一緒に落ち込んで、顔色をうかがっていました。

この体質にみられる特質・資質
この体質を持つ人たちには
人を惹きつける魅力をもつ方が多いと思います。
他のタイプには真似のできない
ちょっとしたことにパッと気がついて
すぐに行動する(身体を動かしている)ような
臨機応変さに長けていることも特質です。
この体質が
クリエイティブな創造性として
発揮される例も珍しくありません。
たとえば
舞台俳優・演出家として
特異な才能を発揮している男性がいます。
『こころの綾』を感じとる感性
(この体質の人は)たんに気分の波があるだけでなく、感性や感情が行動に直結しやすく、秘めることが不得意です。
その一方で、言葉では表現できない〝こころの綾(あや)〟を感知する能力があり、人と接する職業などで成功することが多い。
神田橋條治(じょうじ) 精神科医
この能力ゆえに
職場や仕事などでは
コミュニケーション能力が高い、と評価されたりしますが
ご自分では、むしろ
苦手だと思っている場合があります。
コミュニケーション能力があるとか、初対面の人とでも上手に会話ができてすごい、とか云われるけど、自分は精一杯やっているので、むしろ苦手だと思っているんです。
重役の秘書として成功している女性。
「お客様アンケート」では
常に一番評判がいいという人がいます。
臨機応変さに長けていることと
〝こころの綾〟への感性ゆえに
接客業などで
多くの人を惹きつけている人の中には
この体質の人が多いはずです。

小学生や中学の頃などには
相手に波長を合わせることに向いた資質が
周囲に気を使いすぎて空回りしてしまうと
「お調子者」「八方美人」のような陰口につながって、ショックでひどく傷つく場合があります。
こうした傷つき体験が
後々までトラウマとして影響を与えて、生きづらさにつながっていたケースを、複数拝見しています。

見落とされることが多い
わたしの場合には
この体質を持つ方と
カウンセリングでお会いする機会は、少なくないように思っています。
もちろん、いらした時には
ご自分の体質についてはご存じありませんが
お話しを何度かしてゆく中で
気分の波とのご自分に合った付き合い方を
皆さん見つけていかれます。
しかし多くの場合に問題となるのは・・・
何かのきっかけで
カウンセリングに行ったり
クリニックを受診したとしても
カウンセラーや精神科医にさえ、基盤にある気分の波が見落とされることが多い。
神田橋條治 精神科医
・・・ということが挙げられます。
この記事では、最初に記したように
基本的なことをお伝えしています。
たとえ同じ体質であっても
人それぞれに違いがあるものです。
お話しにいらしていただけたら幸いです。
カウンセリングは
「試しに一度」でも、もちろん大丈夫です。
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