

〝体質・気質〟とは
持って生まれているものを云います。
それは人によって様々ですが
その中に
『気分の波を持つ体質』があります。
ここでは
〝気分の波〟とはどういうものか。
そして
この体質が有する特質について
お伝えしています。
少し長くなりますが
お読みいただけると幸いです。

気分の波を持つ体質とは
〝体質・気質〟とは
生まれた時には既に
その人(子)の内に在るものを云います。
持って生まれているものを指します。
小林秀雄 文学者・文芸評論家
(1902 - 1983)
生まれつきという側面がありますね。
私は孫が二人いて四歳と二歳ですが、もう二人で性質が違っていますよ。「なるほど、このへんからだんだん個性が出てくるのか、生まれつきというのはたいしたものだな」と恐ろしくなりますがね。

そして体質や気質というものは
各人各様で様々なのですが
その中に
『気分の波を持つ体質』があります。
関連ページ
【気質について】
生きていく上での大切な意味とは
神田橋條治 精神科医
(この体質の人は)たんに気分の波があるだけでなく、秘めることが不得意で、感性や感情が行動に直結しやすい。
しかし、かえって言葉では表現できない微妙な〝こころの綾〟を感知する能力があり、人と接する職業などで成功することが多い。
こうした能力故に、たとえば
重役の秘書として成功している女性。
舞台俳優として
特異な才能を発揮している男性がいます。
そうした人の一方で
〝こころの綾〟を感じ取る感性を持ってはいても、それを上手に生かすことが出来ずにいる
・・・という人たちが、多くいます。
理解されにくい
わたしの場合
この体質を持つ方とカウンセリングでお目にかかる機会は、
少なくないように感じています。
そして皆さん、いらした時には
当然ですが
ご自分の体質のことを
ご存じなくていらっしゃいます。
それ故に
体質としての気分の波にご自分が翻弄され、
人間関係でつまずいたり
苦しんだり、してらっしゃいます。
しかも多くの場合、問題となるのは
神田橋條治 精神科医
カウンセラーや精神科医にさえ、基盤にある気分の波が見落とされることが多い。
・・・ということが挙げられます。

気分の波とは
次のように
打ち明けてくださる方もいます。
掲載は了解を得たものです。
気分に波のある気質かどうか、自分ではよく分からないです。
職場でハイテンションだけれど
家に帰って一人になると落ち込んで、繰り返し職場のベランダから飛び降りるイメージが出てくる、ということはよくあります。あと「やり過ぎてしまう」というのは、とてもよく分かります。
先生がおっしゃっていた「人なつっこい」ということとも、関係があるのかも知れませんが。たとえば私が「面白キャラ」として何かをしたことで、職場の人たちが喜んだとして、その時に私の中に、抗い難い嬉しい気持ちが湧いてきて、もっともっと、と自分を駆り立ててしまうことは、あると思います。
そして、自分がすっかり必要以上に「面白キャラ」になってしまったことに、後からひどく後悔して落ち込んだりして・・・。誰でも気分の波があると思うので、私が特別に気分の波がある気質なのか、ということが自分では判断が出来ないところではあります。
ただ確実に言えるのは、私の母は恐ろしく気分の波がある人だ、ということです。
私が小さいころ、ふいに不機嫌になったり落ち込んだりして、私はそれが自分のせいだと思って、母の機嫌がよくなるまで一緒に落ち込んで、顔色をうかがっていました。
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愚痴のゴミ箱を持つ子

同じ体質の人であっても
性格とか現れ方といったものは
当然、個々人によって違いがあります。
先生の前では、こんな落ち込んだ姿を見せていますが、元々は明るい人間なんです。自分のところの学生を誘って喫茶店に行ってお喋りするのも好きですし、ズドーンと落ち込む、ウァ〜とハッピーになるっていのうは、しょっちゅうあって。
高校生くらいまでは、自分のこの感じと、周りの人の感じが合わないことの違和感を感じることが多かったですね。
でも大学に入って、地方出身者なんかと出会うようになると、なんかこの波が合うヤツがいて。
ポンポンポンと即断即決の感じとか、カーっと怒ってボロクソ云い合って、わんわん泣いて肩抱き合って仲良くなるみたいな、ことのほうに居心地の良さを感じるんですよね。
でも、わたしの妻は、わたしのこの感じとは、もう付き合い切れないとなってしまっていて、わたしとは一緒に行動しようとしません。
念のために申し添えておくと
このお二人とも
知的なお仕事についていらっしゃいます。

気難しそうな人もいれば、
人好きのする社交的な人。
あるいは
せっかちでじっとしているのが苦手
というタイプの人もいます。
そのため身近な人からは
「いつも何か動き回っている」だとか
「なんだか落ち着きがない」みたいに
思われていることがあります。
ちなみに
ADHDと云われているけれど
かなりな割合で
実は、この体質の人たちが含まれています。
たとえば・・・
専門学校を卒業後、23歳で結婚。主婦業のかたわらスタイリスト、ファッションアドバイザーの仕事をし、34歳から54歳まで、某大学の講師もつとめた。
元気印の人間で通っており、クラス会の幹事を毎年引き受け、友人たちからは、人の10倍は働くなどと言われていた。車の運転を好み、高速道路を飛ばして走るのが何よりのストレス解消法であった。
・・・こうした方もいらっしゃいます。
大切になること
ですので、日常の中における
自分自身の気分の波の現れ方を理解する
ということが、とても大切になります。
カウンセリングでは皆さんと
そうしたことを行なっています。
理解してゆくことで
「気分の波に翻弄されていた自分」
・・・というもを、少しずつ
変えてゆくことができるからです。

気分の波が意味するもの
上の女性が語っているように
「誰にでも、気分の波があるのでは?」
そう云われることがあります。
ここで云う「気分」とは
そうとしか呼びようがないので「気分」と云っているだけで
本人の自覚的な意識とは
別のところで動き出す
〝何ものか〟のことを、意味しています。
そして、何かのきっかけで生じる
この内的な〝何ものか〟の衝動に
強く引っ張られて
気持ちや感情が一緒になって
動いていくことになります。
それ故に
「秘めることが不得意で、感性や感情が行動に直結しやすい」
・・・という形にもなります。
本人の気持ちや感情の一瞬前に
内的な動き(高揚感)があるのです。
そして、この〝何ものか〟が
体質に根ざしたものと考えられます。
ですので、その時の
本人の(自分の)気持ちや感情だけを
見ているだけでは
ここで云う〝気分の動き(衝動)〟を
把握できません。

高揚感の共通した現れ方
高揚感と云うと
「楽しくなってハイテンションで
ワーッてなっていく状態のことですか?」
・・・そう聞かれることがあります。
しかし、体質として日常の中で生じる
高揚感の現れを
そのように考えていると
よく分からないことになります。
何かのきっかけで
〝気分の波〟が高く動いてゆくと
浮いてゆくような衝動感に
気持ちや感情が強く引っ張られて
『拍車がかかって止まらなくなる』
『拍車がかかって、やり過ぎていく』
・・・このような形をとります。
諸刃(もろは)の剣(つるぎ)になる
この気分の高揚感がマイルドに働くと
たとえば、飲み会や社交の場などでは
「場を盛り上げるのが上手な人」
「よく気がつく賑やかで楽しい人」
・・・という評価を得ることになります。
(ただし、この場合でも人によっては、場を終えてから、上で語っていた女性のように、抑うつ気分に襲われて、気分が塞ぎ込む状態になる人もいます)
しかし、その一方では
普段の時には
自分では「もう止めよう」と思っていたり
あるいは
パートナーから「もう、やめて欲しい」と云われているような行動を
高揚感の衝動の中で
繰り返してしまう人がいらっしゃいます。
完璧主義にみられる
仕事などでは
「拍車がかかって止まらなくなる」
という動きが
「完璧主義」と間違えられます。

個性的な魅力と能力
この体質を持つ人たちの中には
個性的な魅力を備えていたり
他では真似のできない
特異な才能を発揮する人たちがいます。
この体質が
クリエイティブな創造性として
発揮されることも珍しくありません。
あるいは、
感覚的なものに秀でていて
臨機応変の能力に長けていたり。
職場などでは
コミュニケーション能力が高い、と評価される場合がありますし
『お客様アンケート』で、常に一番評判がいい、という人もいます。
しかし自分では、むしろ
苦手だと思っている場合があります。

気分の低下
ご本人自身が
苦しくなったり、辛くなるのが
気分の低下のとき・落ち込みのとき
ということもあって
(ダウンの時、と表現される方もいます)
自分自身を、うつ(鬱)だと思っている方も
多くいらっしゃるようです。
「気分の低下(落ち込み)」の場合
典型的なのは
「抑(よく)うつ気分」ですが
しかし、それよりも日常的には
不機嫌さ・イライラ感、あるいは怒りっぽさ、などとして
現れることが多いかも知れません。
そのため、ご自分のことを
「不機嫌うつ病なんだと思ってた 」
そう打ち明けてくださった方もいます。

最後に付け加えること
ここでは〝気分の高揚時〟について
多くを記しています。
それには理由があります。
ご本人自身では
〝気分の低下〟の状態が辛いのですが
しかし、実際の人生の中で
せっかくの機会をダメにしたり
人との関係を損なったりするのは
『拍車がかかってやり過ぎていく』
『拍車がかかって止まらなくなる』
・・・という状態にある時だからです。
神田橋條治
(この体質の人は基本的に) 窮屈な環境に置かれると苦しくなり、情調が不安定となってくることがある。
この体質のことを早めに理解して、工夫や対応をしてゆくことで、自他の苦労や苦しさが大幅に軽減される。
体質としての〝気分の波〟に
振り回されることが少なくなり
その特質をより良く生かしていくためにも
ご一緒に考えてゆく
・・・ということが、大切になります。
カテゴリー【カウンセリング Essay】