
気分の波を持つ気質について。
| はじめに |
〝気質〟とは、生まれた時には
既にその人の内に在るものを云います。
持って生まれているものを指します。
そして気質というものは
各人各様で様々なのですが
その中に「気分の波」を持つ気質
というものが存在します。
そして、この気質を持つ方と
カウンセリングでお目にかかる機会は
わたしの場合
少なくないように感じています。
もちろん、お会いする方たちは
皆さん、ご自分の気質について
ご存じなくていらっしゃいます。
| 見落とされることが多い |
そして、一般的に問題となるのは
この気質を持つ人が
カウンセリングに行ったり、
メンタルクリニック等を受診しても
カウンセラーや精神科医にさえ、基盤にある気分の波が見落とされることが多い。
神田橋條治 精神科医
・・・ということです。
そのため間違った理解や対応をされて
問題の解決が進まなかったり、
かえって、
不安定な状態に陥ってゆく場合があります。
| 気分の波と気分の動き |
次のように
打ち明けてくださる方もいます。
掲載は了解を得たものです。
気分に波のある気質かどうか、自分ではよく分からないです。
職場でハイテンションだけれど、家に帰って一人になると落ち込んで、繰り返し職場のベランダから飛び降りるイメージが出てくる、ということはよくあります。
あと「やり過ぎてしまう」というのは、とてもよく分かります。
先生がおっしゃっていた「人懐っこい」ということとも、関係があるのかも知れませんが、たとえば私が「面白キャラ」として何かをしたことで、職場の人たちが喜んだとして、その時に私の中に、抗い難い嬉しい気持ちが湧いてきて、もっともっと、と自分を駆り立ててしまうことは、あると思います。
そして、自分がすっかり必要以上に「面白キャラ」になってしまったことに、後からひどく後悔して落ち込んだりします。
誰でも気分の波があると思うので、私が特別に気分の波がある気質なのか、ということが自分では判断が出来ないところではあります。
ただ確実に言えるのは、私の母は恐ろしく気分の波がある人だ、ということです。
私が小さいころ、ふいに不機嫌になったり落ち込んだりして、私はそれが自分のせいだと思って、母の機嫌がよくなるまで一緒に落ち込んで、顔色をうかがっていました。
先生の前ではこんな元気のない姿を見せてますが、元々の普段の私は、自分でいうのもなんですが、もっと明るい人間なんですよ。
人と会って話しをするもの好きだし、学生たちを誘ってお茶に行ったりもよくするし。
ボクの父と母は●●出身の人間で、でもボク自身が生まれ育ったのは関東なんですけどね。高校くらいまでは、自分のこの感じと、東京の人の感じが合わないことの違和感を感じることが多かったですね。
でも大学に入って地方出身者なんかと出会うようになると、なんかこの波が合うヤツがいて。それがだいたい間違いなく●●出身の人間なんですよ。だからそういうことってあるんですかね。
ポンポンポンと即断即決の感じだとか。カーッと怒ってボロクソ云い合って、わんわん泣いて肩抱き合って仲良くなるみたいな、ことのほうに居心地の良さを感じるんです。
気分の波のある気質、といっても
人は「気質」だけで
生きている訳ではありません。
同じ気質の人であっても
人によって違いがあります。
ですので、ご自分自身を知る
・・・ということが大切になります。
カウンセリングでも
そのことを大切にしています。

| 〝気分〟が意味するもの |
気質としての気分の波、を考えるときに
上の女性が語っているように
「誰にでも、気分の波があるのでは?」
そう云われることがあります。
しかし、ここで云う
「気質としての気分」では
「気分」としか呼びようがないので
気分と呼んでいるだけで、
この場合の「気分」とは・・・
本人の自覚的な意識とは
別のところで動き出す
〝何ものか〟のことを、意味しています。
そして、何かのきっかけで生じる
この内的な〝何ものか〟の動きに
強く引っ張られて
気持ちや感情が、一緒になって
そちらへ動いてゆくことになります。
気持ちや感情の一瞬前に
先に〝気分の動き〟があるのです。
ですので、その時の
本人の(自分の)気持ちや感情だけを
見ているだけでは
ここで云う〝気分の動き〟を
まったく理解できません。
これは、気分が高く動く時も
低く落ちてゆく時も、だいたい同じです。
(この体質の人は)たんに気分の波があるだけでなく、秘めることが不得意で、感性や感情が行動に直結しやすいが、かえって言葉では表現できない微妙な〝こころの綾〟を感知する能力があり、人と接する職業などで成功することが多い。
神田橋條治 精神科医
この能力故に、たとえば
重役の秘書として成功している女性なども
いらっしゃいます。

| 〝気質〟としての高揚感 |
ハイテンションな気分状態、と云うと
「楽しくなってハイテンションで
ワーッてなっていく状態のことですか」
・・・そう聞かれることがあります。
しかし、気質としての高揚感の現れを
そのようにだけ理解していると
よく分からない事になります。
何かのきっかけで
〝気分の波〟が高く動いてゆくと
浮いてゆく様な高揚感に
気持ちや感情が強く引っ張られて
拍車がかかって止まらなくなる。
やり過ぎてしまう。
あるいは
高揚感が開放感に拍車をかけて
自分に禁じていた事
禁じられていた事を、やってしまう
・・・という場合もあります。
そのため、異性関係・金銭的な事など
事柄によっては、カップルや夫婦の間で
深刻な揉め事になるケースがあります。
どのような場や状況・きっかけが
そうした気分の高揚をもたらすのかは
人によって様々です。
| 完璧主義と間違えられる |
この拍車がかかって止まらなくなる
という動きが、仕事などでは
「完璧主義」と間違えられる事があります。

| 気分の低下 |
ご本人自身が
苦しくなったり、辛くなるのが
気分の低下のとき・落ち込みのとき
ということもあって
(ダウンの時、と表現される方もいます)
自分自身を、うつ(鬱)だと思っている方も
多くいらっしゃるようです。
「気分の低下(落ち込み)」の場合
典型的なのは「抑(よく)うつ気分」ですが
しかし、それよりも日常的には
不機嫌さ・イライラ感、あるいは怒りっぽさ
などとして
現れることが多いかも知れません。
そのため、ご自分のことを
「不機嫌うつ病なんだと思ってた 」
そう打ち明けてくださった方もいます。

| 個性的な魅力と能力 |
この気質の人の持ち味は
行動的だということです。
行動的という意味は、
「こうしよう」
「こうやればいいんだ」と思ったら
すぐに行動につながることです。
更には
この気質を持つ人たちの中には
個性的な魅力を備えていたり、
特異な才能を発揮する人たちがいます。
この気質が
クリエイティブな創造性として
発揮されることも珍しくありません。
あるいは、
感覚的なものに秀でていて
臨機応変の能力に長けていたり。
職場などでは
コミュニケーション能力が高い、と
評価される場合もあります。
上でも記したように
重役の秘書として成功している人もいます。
しかし自分では、むしろ
苦手だと思っている場合があります。

カテゴリー【こころの物語】