心療内科とカウンセリング

心と身体

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「心療内科なのか、それともカウンセリングの方がいいのか、よく分からずに迷っていたけど、私の場合薬で問題が解決するんだろうかと思って、カウンセリングに申し込んだ」

カウンセリングをしていると
時々、上のようなお話をお聴きします。

そこで、この記事では
何かの参考にしていただくために
心療内科の元々の理念と成り立ち、などに触れています。

最後までお読みいただけると幸いです。

カウンセリング的なイメージ

心療内科に通院したり
受診した経験のある方たちも、
カウンセリングに普通にお越しになります。

皆さんのお話をうかがっていると
心療内科に対しては
なんとなくじっくり話や悩みを聞いてもらえるような、
そんなイメージを抱いて受診する方たちは、多いようです。

つまりカウンセリング的なものを期待して
受診されていることになります。

そのため、時折
「がっかりしてしまって、
一度行ったきりで(通院を)やめてしまった」

・・・そうおっしゃる方がいます。

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心療内科 : 理念と現状

心療内科という科目が
厚生省(当時)から正式に認可されたのは
1995年に起きた
阪神・淡路大震災がきっかけでした。

震災で被害を受けた方たちに
心筋梗塞をはじめとして、
さまざまな身体病が発症したことから
厚生省も無視するわけにいかなくなったのです。

中井氏が、このように報告しています。

神戸の地震(阪神淡路大震災)では、クモ膜下出血、多発性胃潰瘍、心筋梗塞が見られた。
心筋梗塞は直後だけでなく、40日〜50日、3ヶ月、半年目にも増えた。したがって負荷がなくなても、数ヶ月後まで油断できない。
たとえば激務の後、休暇を取って旅行に出る場合にも、心筋梗塞が起こる場合がある。

中井 久夫 精神科医

つまり心療内科とは、元々の理念では
「心身(しんしん)症」をる科目として、考えられたものでした。

心身症とは、心因 (心理的要因)が深く関わって発症する「身体の病気」を云います。

ですので〝内科〟とあります。


心療内科と心身症

身体病に心身症が多いことは
昔から知られていました。

(心身症とは) つまり精神的・心理的問題をまったくほんものの身体病として現すということであるから、患者は身体病の診察を受けることになる。
 中井久夫 精神科医

「心身症」というのは
上の中井医師の説明にあるように
体の病気として発症するものを、指して云います。

ですので患者さんは、皆さん
内科などを受診し通院されます。

心療内科を受診する人は
現実には、いらっしゃいません。

しかも、身体の症状だけを診ているのでは
それが心身症かどうかさえ、分かりません。

そして現実の心療内科は
精神科よりもイメージ的に受診や通院の敷居が低いために、プチ精神科のようになっています。

このような現実があるため
精神科医が独立開業する場合にも
「心療内科」を掲げることになります。

ある時、女性のご相談者から
こんな話をお聞きしました。

メンタルクリニックを受診して、いま話したようなことを(診察の時に)少し話したら、ここでは不安を緩和する薬を出せるだけなので、そういうことは、ご主人と直接話し合ってください、と云われた

むしろ良心的なお医者さん
・・・かも知れません。

精神科臨床の問題

メンタルクリニック等の精神科医療での診断・治療の劣化が、危惧されるようになってから、もう久しくなります。

井原医師は、このように述べています。

今日のメンタルクリニック等の精神科医療は、社会の変化に対応した臨床を、提供できていないように思います。
患者さんは多様であり、人それぞれに異なったものを必要としています。そのためには精神療法的
(カウンセリングと意味は同じ。医師は精神療法という言葉を好む)な視点が必要なのに、残念なことに精神科医たちの多くは、患者を薬物治療の対象としか見ていないと思います。
 井原 裕 精神科医


薬だけでよくなるのであれば、誰も苦労しません。
 星野 弘 精神科医


わたしの尊敬する先生で
著名な精神科医の神田橋條治 (じょうじ)氏は、このように語っています。

医師免許を取りたての人は治療はできないですね。大学には治療学という講義がないのを医師はみんな知っているけど、世の中の人は知らないからね。
医科大学では治療学の授業は行われていない。
卒業し、国家試験に合格して医師免許を得たのち、先輩に指導され、自身で経験から学びながら治療法を身につけてゆくのが、医師の職業人生である。
したがって筆者のような老医のほうが、八割がたの病気の治療については、大学の先生より上手なのである。

神田橋條治

神田橋先生が指摘されていることは、
なにもお医者さんだけに
限ったものではありません。

たとえばカウンセラーについても、
まったく同じことが云えます。

臨床とは、そういうものだからです。

そのため、個々人による違いが
とても大きなものになります。


荻野目慶子さんの体験

たとえば
女優の荻野目慶子さんが
自らの体験を雑誌に記しています。

     

荻野目さんは
ご自分のマンションの部屋で
交際相手が自殺しているのを発見します。

スキャンダルとして扱われ、生きる上で窮地に立たされた。家族を含め多くの人に迷惑をかけ、借金を背負い、しかし仕事は難しくなり、八方塞がりだった。
当時、病院を何軒、回ったことだろう。精神科医にも何人、逢ったことか・・・。
私の場合、本名と芸名が同一のため、その度に好奇の目を感じ、およそ心の内など話せる状態には至らず、「こんな人間が精神科医に?」という疑問、裏切られたような哀しみ、やり場のない絶望感に打ちのめされ、薬だけを手にして逃げるように去った日々。
分厚いアンケート・・・見ただけでウンザリする、或いは気恥ずかしくなるようなアンケートをさせる病院もあった。自律神経失調症に関する本で探したその道では有名な病院だったが。
おきまりのアンケートで人間を図面化し、それを入り口にして何が見えてくるのか。
どうしてまず最初にその人間の印象・・・眼光や挙動、そのとき発信している空気を感じようとはしてくれないのか。

『自殺で残された側は・・・』

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