急な動悸と胸苦しさ・めまい【不安発作について】

心と身体

ロゴマーク
更新日:

不安発作とは、急な動悸や胸苦しさ
目眩めまいや息苦しさなどから始まって
このまま死んでしまうのではないか
という恐怖心に襲われるものです。

ここでは、不安発作とはどういうものかを
具体的な症例報告をあげながら
お伝えしています。

Image for decoration(緑の草叢)

あわせて
カウンセリングの大切さについても
触れています。

宮本 輝氏の場合

小説家の宮本 てる氏が
会社勤めをしていた時代に
不安発作に襲われた経験を語っています。

宮本輝の顔写真

最初は、休みの日に友達と競馬に出かける途中に発症したんです。
電車の中でめまいと動悸が激しくなって、なんだかおかしいな、と思った瞬間に、地面の底に沈んで行くような感覚に襲われたんです。

それ以降、電車に乗っていると、頻繁にそんな症状が起きてくるようになり、そのうち電車に乗ると考えただけで、心臓がドキドキするようになって「このまま死んでしまうかも」という恐怖心が生まれるようになっていきました。
「もう会社に通うのは無理、サラリーマンは向いてないんじゃないか」と思い始めました。

   宮本 輝 小説家

宮本氏の場合には
不安発作が繰り返されることで

不安神経症』という状態へと
病像が進んだことが分かります。

不安発作のはじまり

急性の不安発作の多くは
宮本輝氏がそうであるように

ご本人からしてみると
なんの前触れも、思い当たる理由もなく
突然襲ってくるものです。

身体の病気だとか
薬物等の化学物質が原因ではなくて
そうした状態に襲われることを

『不安発作』と呼んでいます。
パニック発作と呼んでいる場合もあります。

高橋 徹(精神科医)氏が
不安発作の特徴について語っています。

高橋 徹 精神科医
それは急性の状態である。
ごく短い前兆を自覚することもある。たとえば、頭が急に軽く感じる、頭がクラクラする感覚がある、頭が熱くなってくる、などと表現されることがある。

それに続いて、自律神経症状を主とした自覚症状があらわれてくる。
動悸、胸苦しさ、頭や体の震え、手足のしびれ感、血が引いてゆく感覚、めまい、悪寒、冷や汗など。
そして、いても立ってもいられないような強い不安が迫ってくる。

このまま死んでしまうのじゃないか、気が遠くなって倒れてしまうのではないか、などの恐怖感が襲ってくる。

Image for decoration(アンブレラ)

症例報告から

四十代・女性
デパートへ買い物に行き店内を歩いていると、急に貧血を起こしたようになり、頭がクラクラして、胸が苦しくなって激しい不安に襲われた。
動悸がして、頭から血が引いていくような感じが何度もして、今にも死ぬのではないかと恐ろしかったが、体がヘナヘナして動けなかった。
十分ぐいらしてから、店員に頼んでタクシー乗り場までついて来てもらい、タクシーで近くのクリニックへ行った。

三十代・男性
六・七年前から年に一・二度、入浴時や激しく動いたとき、心的緊張などの時に、発作的に動悸のすることがあった。
某年七月、機械を修理するため、高い台に飛び乗った途端に動悸が起こった。
これまでならすぐ止まる動悸が、なかなか止まらないばかりか、そのうち息苦しくなり、手足が痺れ、頭がぼんやりして意識が遠のくような感覚がした。
患者は死への不安に襲われ、工場内の診療所へ運んでもらった。

Image for decoration

異常がないと云われる

突然こうした発作に襲われると
誰もが「重い病気の前触れではないか
と心配になります。

そしてクリニックや病院を受診して
検査をしてもらいますが

重大な病気につながるような異常は特に見当たらない」と告げられたりします。

(医者や看護師に)
神経症ですと云われた
という人などもいらっしゃいます。

心臓に病的な状態がなくても
人は精神的な要因によって動悸を訴えるような場合も、決して少なくありません。

内科医の菅 正明氏が
次のように語っています。

菅 正明 内科医
内科を受診する患者さんの多くは、心理的要因という言葉だとかカウンセリングに対して「何も思い当たるものはない」として、抵抗感を示す人が少なくない。
そして、「これだけ苦しくなるのは、何か身体に原因があるはず」として、なんらかの身体疾患の診断とその治療を求める場合が多い。

最近では、こうした不安発作に襲われて
病院や救急外来を受診するというケースが、増えているようです。

こうした不安発作の多くは
軽い場合には15〜20分程度
長くても30から40分くらい安静にしていると、自然におさまっていきます。

         Image for decoration

不安発作から不安神経症へ

注意すべきは
宮本輝氏のケースのように

急性の不安発作が「急性」で終わらずに

つまり
その時の一過性では終わらずに
短期間に繰り返されたり。

あるいは
不安発作以降に
身体の不調感が続くようなケースでは

不安神経症の状態へ
病像が進んで行きやすいことが
明らかになっています。

高橋 徹 精神科医
急性の不安発作の例は少なくない。
内科外来や救急外来などでは、しばしば見られるが、多くは一過性で過ぎてしまう。
しかし中には、その後漠然とした不安感や体の不調感を抱えるようになったり、ほどなく再度不安発作を起こして、繰り返してゆくことがある。
そうした状態が続くと、様々な不安症状をあらわすようにり、不安神経症になってしまうケースがある。

不安発作の発症初期に、余り日をおかずに再び不安発作が起きているケースでは、そうでないものに比べて、予後(よご)が良くないことが確かめられた。

予後(よご)とは・・・
  将来にわたっての状態という意味。

Image for decoration(アンブレラ)

症例報告から

四十代・男性
仕事で車を運転中に突然、動悸、発汗、呼吸困難、からだの震えが生じて、死の恐怖に襲われた。
車を止めて休んでいると、症状は消失したが、頭の重さや倦怠感が、ほぼ毎日続いた。

二十代・男性
職場で急に息苦しくなり、動悸がして、「今にも死ぬのではないか」という恐怖におそわれ、落ち着かなくなった。
その日は早退して近くの内科を受診した。検査の結果、重大な病気の前兆ではないと云われ安心する。
しかし数日後に、出勤途上で再び発作を起こし、それ以来なんとなく落ち着かない気分が続き、頭がフラッとしたり息苦しくなるなどの状態が、繰り返し起こるようになる。

十代・女性
通信制高校に入学したが、第一回目のスクーリングの日、昼休みに最初の発作があった。
突然、喉がしめつけられるような感覚がしたかと思うと、息苦しくなって、心臓の鼓動が高まり、全身が震え汗が吹き出してきた。
苦しくなってこのまま死んでしまうのじゃないか、と不安になり医務室に連れて行ってもらう。しばらくして発作は自然におさまった。
それからスクーリングでの休み時間になると、時々発作が出現するようになった。

Image for decoration(紅葉の集まり)

不安神経症の状態

宮本輝氏の場合にも
不安発作を繰り返すことで
不安神経症」の状態へと、病像が進んだことが分かります。

不安神経症までになってしまうと
たとえば
電車に乗るのが怖くなったり。

発作に襲われることが不安で
人混みや慣れない場所に
一人で行けなくなってしまったり。

ひとりで外出できなったり。

緊張を感じるような場には
いられなくなってしまったり。

・・・というように生活の上で
さまざまな困難が生じてきます。

そのため、仕事を失ってしまったり、
転職を繰り返すことも起きてきます。

Image for decoration(一輪の白い花)

大切になること

筆者はカウンセラーとして
長年カウンセリングを行なっていますが

ご相談者の方から
こうした場で話をするって大切なんですね

・・・そう云われることがあります

あるいは
こういうふうに話をしていくと
いろいろな事が分かってくるものですね

・・・そう語る方もいらっしゃいます。

症状への対症療法ばかりになると
回復から遠ざかっていく場合が
もしかすると、多いかも知れません。

自律神経失調症だと医者から言われて、十年間薬をもらって飲み続けている
そうした方も、実際にいらっしゃいます。

心身医療の河野友信(精神科医)氏は
次のように語ります。

河野友信 心身医療
時代状況を反映して、ストレス関連の病態が増えていますが、治療は必ずしもうまくいっているとは言えません。
臨床経験があれば、容易に理解できることですが、マニュアル的な治療では殆どうまくいきません。
個別的で複雑系である人間の内面は、マニュアル的治療では、うまく扱えないからです。

カテゴリー心と身体