【気質について】生きる上での大切な意味とは

カウンセリング Essay

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〝気質〟とは
持って生まれたものを指します。

自分の『気質』を理解することの意味と
それを生かしてゆくことの大切さについて
カウンセラーの立場から述べています。

Image for decoration(草花の絵)

気質の存在が忘れられている

わたしたちの誰もが
生まれ持っての『気質』というものを
与えられています。

ここでいう気質とは

自意識や性格が形成される以前。
生まれた時には既に
自分の遺伝子の中にるものを指します。

そして私たちは
生まれた時に既に自らの内にある気質
・・・というものに動かされながら
『自分』というものを形成していきます。

小林秀雄 文学者・文芸評論家
生まれつきという側面がありますね。
私は孫が二人いて四歳と二歳ですが、もう二人で性質が違っていますよ。
「なるほど、このへんからだんだん個性が出てくるのか、生まれつきというのはたいしたものだな」と恐ろしくなりますがね。

    小林秀雄顔写真
    小林 秀雄 (1902-1983)

小林秀雄が云うように
気質というものは
人それぞれで様々なのですが

実は、カウンセリングや臨床において
その人の気質というものが
ないがしろにされて来ています。

かえりみられることは
殆どありませんでした。

しかし優れた臨床家であった故・中井久夫氏は、
次のように語っています。

中井久夫 精神科医・臨床家
人柄っていうのはいい言葉ですよ。パーソナリティーなんていうよりずっといい。「どういう人柄であるか」っていうことに焦点を当てつづけるということは、非常に大切です。
でも私も、それをはっきり意識するのは遅かったですね。

中井氏が「人柄」という言葉で語っているのは、『気質』と言い換えても、ほとんど差し支えはない、と思います。

 

根底的な力を持つもの

根底(こんてい)的とは・・・
物事の根本や根幹を意味する言葉。

気質とは、生まれた時にはすでに存在し
その中で自分自身が生きている故に

自らで客観化することは困難ですし

しかも、遺伝子として在るものから
表出されていることなので

本人を動かす内的な力 (ドライブ力)は
後天的な性格などよりも
よほど根底的な力を備えています

地球にたとえるなら、
地殻ちかくを乗せ動いているマントル
・・・と云えるかも知れません。

地殻が性格であり、マントルが気質です。

□□□□□地球の断面図

      Image for decoration(地球の断面図)

たとえば、三宅和夫氏 (北海道大学)が
次のような母子の事例を語っています。

三宅和夫 乳幼児心理学
これは私が、時々訪問をしていたケースなのですが。
そのお母さんは、妊娠中から「子どもなんか嫌だ」「子どもなんか出来て、失敗した」と言っている人だったんです。
そして、生まれた赤ちゃんはというと、気質的にとっても楽な赤ちゃん、育てやすい赤ちゃんだったんですね。
泣いてもすぐに機嫌が良くなるし。適度な活動性もあるし、敏感し過ぎたりもしないし。女の子でしたが。

そうすると、妊娠中にはあんなことを言っていたお母さんが、変わってくるんですよね。訪ねるたびに、お母さんの様子が変わってくるのが分かるんです。

だんだん子どもが好きになってきてるんだな。赤ちゃんとの関わりが楽しいんだな、ということが感じられてくる。
このお母さんの変化は、明らかに子どもの影響です。

もしこれが、とても気質の難しい赤ちゃんが生まれていたら、と考えるとこわくなります。
おそらく、子どもにもお母さんにも、難しい問題が生じたのではないか、と思われます。

Image for decoration(林立する高層ビル)

気質を重要視する

フロイトとは、ご存じのように
精神分析療法を生み出した人物です。

フロイトの顔写真

そしてフロイトも、その理論とは別に
臨床や治療では
気質を重要視していた、と云います。

池見酉次郎ゆうじろう 心身医学
精神分析の創始者であるフロイトは、もともと自我の体質的基盤(ここでいう気質)を重要視しており、自分の理論が環境偏重主義の中で、心因論的な解釈にひどく偏ったものとなるのを恐れていた。

神田橋條治 精神科医
精神分析療法に限らず、すべての治療は相手の資質に添うときに効果が上がる。「人を見て法を説く」はそれである。

ここで申し上げている「気質」とは、

生きてきた中での
具体的なエピソードや行動を通して
自ずから見えてくるもの
・・・としてあります。

Image for decoration(人物のシルエット) Image for decoration(人物のシルエット)

生きる上での意味とは

気質とは、持って生まれているもので
しかも上で述べてきたように

自らに働くドライブ力は
根底的なものを備えています。

それ故に
生まれ持っての気質を
何らかの形で生かせるような生活の中にいたり

自らの気質と親和しんわ性のある場や環境を、何処かに持てるならば

その人は、きっと
生きている実感や充実感を
得られるに違いありません。

親和(しんわ)性・親和的とは・・・
 水と油のような溶け合わない関係とは真逆な、違和感がなく互いに馴染み合う関係性を持つ、という意味。

生きている実感が希薄

一方で、たとえ他人の目からは
良さげに見られているような人でも

気質を抑圧するような生き方をしていたり

気質と反するような生活や場の中に
生きざるを得ない場合には

ご本人にとっては
生きている実感が希薄だったり

心中に、何かは分からないけれど
息苦しいものを抱えたまま
生きていかなくてはなりません。

それ故、もともとの気質が
なにか過剰で不自然な形になって
生活の中で現れる場合があります。

逸脱行動への衝動

人と場合によっては
そうした息苦しさと抑圧感、
生きている実感の希薄さが

これまで築いてきたものを壊すような
逸脱的な行動への衝動として
噴き出してくる場合があります。

世間を見回してみても
そのようなケースを
しばしば目にすることになります。

そのような意味でも
自分自身の気質というものを
理解することが大切になります。

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