
気質とは : 性格との違い
気質というのは、
生まれた時から与えられている
感情や行動の特性を言います。
環境や体験によって形成される後天的な『性格』とは、根本的に異なります。
特性(とくせい)とは
〝特徴的な性質〟のことで、
「個性」と言ってもいいと思います。
この記事では
カウンセリングの経験を通して
次のことを解説しています。
- 気質とはどのようなものか。
- 気質が持つ生きる上での大切な意味。
気質は〝自分〟を形成していく根本の「土台」ですが、
なぜか「性格」ばかりが言われて
軽視されています。
しかも、気質と性格とを
勘違いしている人も多いようです。
この記事が
「気質」に目を向けていただくための
きっかけになれば、幸いです。
気質について : 生まれた時に与えられているもの
気質というのは、
自意識や性格が形成される以前に、
生まれた時には与えられているものです。
端的に言うと、
遺伝子の中から現れでている特性です。
池見酉次郎(ゆうじろう)氏が、
次のように説明しています。
池見氏は、心療内科の創設者で
心身医学の普及に尽くした人物です。
人間の情意(感情や気持ちの動き方と根本にある行動の傾向)の面で先天的に備わっている特性を「気質」と呼んでいます。
これに環境的な要因が加わってつくられたものが「性格」なのである。
池見酉次郎 心身医学
池見氏が語るように、
気質とは、持って生まれた感情や反応の傾向のことです。
それに環境の影響が加わって作られたのが「性格」になります。
下の図は
性格をイメージ化したものです。
気質と自分らしさ
このように、わたしたちは
『気質』を土台として、
「性格(気質+環境)」を含めた〝自分〟というものを形成していきます。
ですので、気質を理解することは
自分らしく生きるための第一歩です。
文学者として有名な小林秀雄は
次のようなエピソードを語ります。
小林秀雄 文学者・文学評論家
生まれつきという側面がありますね。
私は孫が二人いて四歳と二歳ですが、もう二人で性質が違っていますよ。
「なるほど、このへんからだんだん個性が出てくるのか、生まれつきというのはたいしたものだな」と恐ろしくなりますがね。
ここで「生まれつき」と言っているものが、気質のことです。

気質が母子関係に与える影響
気質は母子関係にも影響を与えます。
たとえば
三宅和夫 (みやけ かずお)氏が
赤ちゃんの気質が、母親を変えていった事例を語っています。
三宅和夫 北海道大学
これは私が、時々訪問をしていたケースでした。
そのお母さんは、妊娠中の時から、「子どもなんかイヤだ」「子どもなんか出来て、失敗した」と言っている人だったんです。
そして、生まれた赤ちゃんはというと、気質的にとっても楽な赤ちゃん、育てやすい赤ちゃんだったんですね。
泣いてもすぐに機嫌が良くなるし。適度な活動性もあるし、敏感し過ぎたりもしないし、女の子でしたが。
そうすると訪ねるたびに、お母さんの様子が変わってくるのが分かるんです。
だんだん子どもが好きになってきてるんだな。赤ちゃんとの関わりが楽しいんだな、ということが感じられてくる。
このお母さんの変化は、明らかに子どもの影響です。
このケースの場合では、もしとても気質の難しい赤ちゃんが生まれていたらと、想像するとこわくなります。
おそらく、子どもにもお母さんにも、難しい問題が生じたのではないかと思います。
親にもそれぞれ気質があり、
生まれる子どもにも、気質があります。
気質(マントル)と性格(地殻):
自分を動かす内的な力
気質というものが
本人を動かしていく内的な力は、
後天的な性格などよりも
はるかに根底的な力を備えています。
根底(こんてい)的とは、
物事の根本や根幹を意味する言葉です。
地球にたとえるなら
地殻を乗せて動いているマントル。
地殻が性格であり、マントルが気質です。
地球の断面図
このように、気質というのは
わたしたちの“根本的な傾向”に、深く関係しています。
しかも気質は生まれた時にはすでに
自分の中に在るものです。
私たちが自分の遺伝子を意識できないのと同じように、
そこから現れ出てくる特性(気質)を
自分自身で客観化することは
大変に難しくなります。
例えるなら、それは
無意識的な「力」として
わたしたちを動かしている存在です。
変わらないものと変わるもの : 気質と性格
ここで言う「気質」とは
何かのテストで分かるというような
抽象的ものではありません。
いろいろなことを振り返り、
一緒に話し合っている中で
自然に見えてくるものとしてあります。
私たちは二十数年来、心身両面から性格改造という問題に取り組んできた。
しかし、「氏より育ち」という立場からの療法では、どうにもならないものを、ますます強く意識するようになった。
先天的なものに関しては、どうにも動かしようのないものがある。
池見酉次郎 心身医学
池見氏が「先天的なもの」と言うのが
持って生まれた「気質」のことです。
そして池見氏の談話は、反対方向から
気質というものの重要性を
私たちに教えてくれています。

わたしがカウンセラーとして経験を重ねる中で、わかってきたことは
カウンセリングや治療において、
その人の気質というものが
蔑(ないがしろ)にされている、ということです。
気質を一緒に理解しながら、
それに基づいて考えていくという指導や教えは、まったく見当たりません。
しかし、優れた臨床家・中井久夫氏は、
次のように語っています。
人柄っていうのはいい言葉ですよ。
パーソナリティーなんていうよりずっといい。
眼差しが、「どういう人柄であるか」っていうところにあり続けることは、(治療や臨床では)非常に大切です。
でも私も、それを意識するのは遅かったですね。
中井久夫 精神科医
中井氏が「人柄」と語っているのは、
『気質』と言い換えても
ほとんど差し支えはないと思います。
気質を理解する : 直すのではなく生かしてゆく
「気質」とは、
変えたり直すものではなく、
大切に〝活かしてゆく〟ものです。
なぜなら気質とは、
〝自分らしさ〟の根本に関わるもので、
私たちを内側から動かしてゆく力は
根底的なものを備えているのです。
それ故に、生まれ持っての気質を
何かの形で活かせるような生活がある。
あるいは、
気質と親和性(しんわせい)のある場や環境を、何処かに持てている。
そうだとしたら、その人は間違いなく
生きている実感と充足感とを、
単に意識の上からではなく
身体感覚の深い面から得られるに違いありません。
「自分はもしかすると、何かから〝生かされている〟のかも知れない」
このような感覚は、
実はここから生まれてくるものです。
* 親和(しんわ)性・親和的とは・・・
水と油のような溶け合わない関係とは真逆な、違和感がなく互いに馴染み合う関係性を持つ、という意味。
気質を抑圧する生き方と
生きている実感の希薄さ
一方で、たとえ他人の目からは
良さげに見られている人でも、
気質を抑圧するような生き方をしていたり、
気質と反するような生活や場の中に
生きざるを得ない場合には、
ご本人にとっては
生きている実感がひどく希薄だったり、
心中に、何かは分からないけれど
息苦しいものを抱えたまま
生きていかなくてはなりません。
それ故、もともとの気質が
なにか過剰で不自然な形になって
現れていることがあります。
逸脱行動への衝動
人と場合によっては
そうした息苦しさと
生きている実感の希薄さが、
いまあるものをすべて壊すような
逸脱的な行動への衝動として
噴き出してくる場合があります。
それは表現を換えると、
生きている実感を求めて心身が発する
悲鳴のようなものかも知れません。
世間を見回してみても
そのようなケースを
しばしば目にすることになります。
こうした意味からも、
自分自身の気質というものを
まず理解することが大切になります。
ご一緒に考えていけたら幸いです。
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