言葉が持ってしまう意味
| 与えられる言葉 |
わたしたちは、たとえば子供に対して、しばしば「お前はダメだな」という。
それはたんに、その行為に対する事実を述べているだけです。
ところがその子供にとって、それは「ダメであろう」という予言、「ダメであれ」という命令として脳裏に刻まれる。
たとえば英語では、命令形を未来形でいうことがありますね。そのほうが強い命令になる。もともと未来形と命令形は同じものです。
「コミュニケーションの世界」では「こうなるだろう」と言うことは、「こうなれ」という意味として(前意識に)伝わる。
だから、子供に対して、お前はダメだということを事実として語ることは、お前は失敗するという予言を、与えているようなものですね。
このように語るのは
柄谷行人氏
(『言葉と悲劇』ちくま学術文庫)です。
わたしたちの身体が
食物を食べて生きるように、
わたしたちの心は
〝言葉〟を食べて生きているからです。
●●●
ちなみに、前意識とは
自覚的な意識と無意識との
境界に存在して、
意識とも無意識とも交通する
半覚醒意識・・・と考えられています。

そして、わたしたちは
与えられた〝予言〟に抗して
この人生を生きて行かなくてはならない
・・・場合がある。
柄谷氏は、そう語っています。
注意すべきことは、
いったん語られた予言は、言われた人間を「拘束」し、左右してしまうということです。
ダメだと言われてきた人間は、自分でどんなに頑張ってやってみても、どこか自信を持てないままに、ずっとやり続けなければならない。
絶えず、自分は失敗するかもしれないと思ったりするし、また、その観念とも闘い続けなければなりませんね。
そうなると、人間は、子供の時に与えられた予言と闘っているようなものです。
その意味からすると、われわれは白紙の中で生きていくのではなく、まさに予言の中で生きていく、と言っていいかもしれません。

| 〝予言〟となる言葉たち |
「お前はダメだ」を別の言葉
・・・たとえば
「あんたは、
何をやってもグズなんだから」
「本当にのろまな奴だ」
というのもあります。
子ども(わたしたち)にとって
〝予言〟となる言葉は
他にも、いろいろ存在します。

| 自分を取り戻してゆく |
カウンセリングでお会いし
お話をうかがっていると、
こうした〝予言の物語〟の中で
ご自分の一部を殺しながら
生きている方に、
出会うことがあります。
もちろん、ご本人自身は
その物語を自覚されては
いらっしゃいません。
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でも、いろいろなことを
ご一緒に整理し、そして考えてゆく中で
〝予言の物語〟から
そっと抜け出して行かれる方も
いらっしゃいます。
カテゴリー【こころの物語】



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