
交感神経の亢進と
ストレス対処行動の関係について

はじめに
わたしたちは
強いストレス状態に置かれたり
強い心の葛藤状態にあると
そうした状態によって心身の内に生じる
負のエネルギーを
少しでも解消する必要に迫られます。
そのための行動を
『ストレス行動』と呼んでいます。
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葛藤(かっとう)に苦しむとき
ストレスの深さのサイン
ストレス行動の中には
もっと強い刺激を求めることによって
今ある心身の不快な状態を
一時的に解消しようとする行動があります。
何故なら、わたしたちの意識や感覚には
それ以上の強い刺激を受けると
前までの不快な状態を一時的に忘れる
という性質があるからです。
たとえば・・・
昔、知り合いの女性から
職場で、すごくイヤなことがあったり
頭にくることがあると
トイレに入って
「自分の腕を思いッ切りつねる」
と聞いたことがあります。
痛みにまぎれて
不快な気分が一時的に消えるそうです。
彼女の対処行動は、
リストカット・アームカット
過食嘔吐などとも共通するものです。
そして、それらは
ストレスの深さのサインかも知れません。

交感神経の亢進と感覚麻痺
たとえば、こんな生理現象があります。
足が痛くて歩くのが苦痛な時でも
何かにひどく驚くと
痛いのを忘れて駆け出している。
ビックリしたのが消え去ると
また足の痛みが戻ってくる・・・。
スポーツや何かの作業をしている時など
夢中になって集中していると
ちょっとくらいの切り傷を作っても
気づかないことがあります。
そのような経験は
誰にも覚えがあることでしょう。
著名な免疫学者・安保 徹氏が
次のように語ります。
安保 徹
ゴンちゃんで親しまれているサッカー選手の中山雅史選手が、試合中に足首を捻挫していたにもかかわらず、試合が終わるまでプレーし続けて、話題になったことがあります。試合後のインタビューで「試合中は全然痛くなかったが、終わったら立てなくなった」と答えています。
交感神経の亢進によって知覚麻痺の体が作られる、という分かりやすいエピソードです。
自律神経の働き
これらはすべて
交感神経の亢進による
一時的な感覚麻痺が生じているのです。
自律神経は
交感神経と副交感神経という
役割の違う二つの神経系で出来ています。
交感神経亢進による感覚麻痺は
元々は、非常事態に対応するための生体の働きとして、備わったものです。
わたしたちは、その働きを
無意識にスレトス行動として
用いているわけです。
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自律神経失調症について

嗜癖(しへき)化されやすい
強い刺激によって
不快な状態を解消しようとする行動は
嗜癖行動になりやすい性質を持っています。
* 嗜癖(しへき)とは
あたかも習慣であるかのように
やらずにはいられない状態の意味。
たとえば
『食べ吐き行動』と云われるものも
生理学的には
このようなストレス行動・・・
つまり、感覚麻痺を用いた
ストレスの処理行動と云えます。
食べ吐きをやめたい、とおっしゃって
カウンセリングにもいらっしゃいます。
いっぱい食べて、苦しみながら吐き出すと
疲労感と共に
「無心な気持ちに満たされ」ます。

慢性的な激辛食品の摂取などにも
共通するものがありそうです。
何故なら「辛さ」とは
神経学的には味覚(味)ではなく
痛みの一種だからです。
繰り返される盗撮や痴漢
そして万引き行動などにも
強い刺激や興奮によって
一時的に何かを解消しようとする意味が
隠れていることがあります。
実際にそうした悩みで
カウンセリングにお越しくださる方も
いらっしゃいます。
強い歯ぎしもストレス行動のひとつです。
「歯を喰いしばって頑張る」
・・・という言葉があります。
こうしたストレス行動による問題は
私たち誰にとっても無縁ではありません。
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