

| はじめに |
子どもの頃から
親御さんの愚痴や不満の聞き役に
なってきた人たちがいます。
子どもの頃から
お母さんの愚痴の聞き役の立場に
置かれて来た人たちがいます。
多くは女の子ですが、
中には男の子の場合もあります。

| 愚痴のゴミ箱とは |
カウンセリングでお話をしている中で、
「これってまるで
ゴミ箱のようなものですよね」
「子どもの時から、愚痴の屑カゴを
持たされてたって、思うんです」
「うっかりグチの屑かごを持たされた」
・・・振り返りながら
そう語る方がいらっしゃいます。
もしかすると
〝健気(けなげ)な頑張り屋さん〟
〝親思いの優しいいい子〟
そうした子の中に、
こうした役割体験を持つ子(人)が
多いかも知れません。
そして、ご自分のことを、
「アダルトチルドレンではないかと
思っています」
「アダルトチルドレンだと
云われたことがあります」
そう語る方たちもいます。
| 大変な中で |
義父母と同居し、父は頼りにならず、母は一人で大変だったんだと思います。
わたしはちいさな時から、ずっと母の愚痴の聞き役をしてきたような気がします。
母の愚痴や不満の相手は、いつも私でした。物心ついた時からそうだった気がします。
家の中で、愚痴を云えるような相手は母にとって、私しかいなかったんです。
わたしは、夫婦仲の良くないところにやっと生まれた子どもで、小さな時からお母さんの愚痴や不満の捨て場所にいました。
例えば、上のような体験や境遇を
お聞きすることがあります。

多くは、親御さん思いのやさしい子で、
グチや不満の聞き役になっていきます。
ひとりっ子故に、
そうした立場や役割から
逃げれられずにいた場合もあります。
本心では、苦しくなって
そうした役割から
逃れたい気持ちもあるのです。
でもお母さんのことが心配で、
健気(けなげ)に立場をつとめてゆく。
兄弟姉妹がいる場合も、
他の子どもたちは要領よく、
愚痴の聞き役から逃げていても
優しいその子は、
「せめて自分だけは・・・」と
親御さんのために
愚痴の聞き役を務めてゆきます。

| 愚痴を出せる場所 |
愚痴を出せる場があること・
愚痴を聞いてもらえる相手がいること。
それは誰にとっても
精神衛生上とても大切なことです。
カウンセリングでも
なんでも云える場であることが
まず第一に大切なことになります。
しかし、子どもの頃から
そうした役目を担わされる。
人や世間のことを
まったく分からない子どもの時から
愚痴や不満の聞き役の立場に
置かれてゆく。
これは子どもにとって、
決して幸せなことではありません。
こういうクズ籠にされた体験は、患者になる子には実によくあります。
うまくこれから逃れられた者は病気になっていません。
中井久夫 精神科医

| 両親の繋ぎ止め役 |
こうした子どもの中には
愚痴や不満の聞き役になることで、家族同士の関係をつなぎ止める役割を、担ってしまうケースもあります。
つまり結果的に
不安定な両親の夫婦関係や家族関係の結びつけ役を、受け持ってしまっているのです。
そして本人も、
直感的にそれを感じているが故に、
その役割から降りられずにいる(いた)
・・・ということだってあります。
| 心の絵を描き直して |
カウンセリングでは
心にあるもの・感じてきたことを
自由にお話しいただきながら
少しずつ、ご一緒に
心の絵を描き直してゆく・・・
白いキャンバスに、言葉で
もう一度、一緒に絵を描き直してゆく。
そうしたことを
ご一緒にしてゆけたら・・・
そう思っています。
カテゴリー【始まりの物語】