「抑うつ」はどういうものか


うつと抑うつ症状について


メンタルクリニックを受診したら
〝うつですね〟と云われた


カウンセリングにいらした方から、
そうした話を、お聞きします。


仕事はなんとかしているけど、
 何もやる気が起きず、気持ちが辛くな
 っている。
 実際にはしないけど、死んだら楽にな
 るのかって、考える時がある


薬だけの治療には限界を感じて
 カウンセリングに申し込んだ


そう打ち明けて下さる方たちも
いらっしゃいます。

      ●●

うつ(鬱)とは俗称で、専門用語では
「抑うつと云います。
(よくうつ)

加藤忠文 精神科医
うつ状態のことを「抑うつ状態」という場合もあります。しかし意味には本質的な違いはありません。

専門用語としては、むしろ抑うつ状態という言葉のほうが、よく使われます。


| 抑うつは症状名 |


「抑うつ」とは病名ではなくて
症状を意味する言葉です。

「胃痛」という言葉が病名ではなく
症状を意味するのと同じように。

そして、
〝抑うつ〟イコール〝うつ病〟
ではありません。

胃痛イコール胃潰瘍ではないように。


抑うつ症状は
うつ病の中心的な症状ではありますが、

しかし、うつ病に限らず、
様々な要因によって起き得るものです。

      ●●

抑うつ症状は
誰にも起こり得るものです。

生きることは
誰にとっても大変なことだからです。

体の病気から二次的に生じる
抑うつ症状の場合もあります。

| 抑うつ気分・抑うつ状態 |


抑うつ症状は臨床的には、

「抑うつ気分」と
「抑うつ状態」とに分けられます。

| 抑うつ気分とは |


「抑うつ気分」とは、
次のような状態として訴えられます。

・憂うつ感が襲ってくる。

気分が沈んでゆく。

・虚しい気持ちが迫ってくる。

わけもなく物悲しさに襲われる。

一人になると何故か悲しくなる。

ひとり取り残されてしまったような
 悲しさ・虚しさ・孤独感が強くなる。


・わけもなく涙が出てくる。


抑うつ気分が更に深くなると・・・

何をしても楽しいと感じられない。
・愉しいという気持ちが起きてこない。

生きていてもどうにもならない
 気持ちになってゆく。


・悲観的な気分が深くなる。
何もかもダメに思えてくる。

・自分をダメだと責め続けてしまう。
死んだら楽になるのでは、と考える。

抑うつ気分では
こうした気分状態に陥ります。

| 心身の苦しさを伴う |



抑うつ〝気分〟と聞くと、
もしかすると多くの人は

誰にでもよくあること」のように
思われるかも知れません。

しかし、
抑うつ症状としての場合には

たとえ軽度であっても
必ず、心身の苦しさを伴います。


水には「水圧」
気体には「気圧」があるように、

うつ圧」というものが、
心身をつらく苦しくしてゆきます。

従って、経験した人にしか
本当は分からないかも知れません。


たとえば
高校生や大学生から
このような訴えを聞くことがあります。

友達といる時には、元気に明るく振舞
って、悩みがない人みたいに見られてる
けど 、一人になると、悲しくなって気持
ちが沈んで、何んにもやる気が起きなく
なる。

テレビを見ていても、なんでもないとこ
ろで涙が出てくることがある。
最近では自分を責め続けていて、死んだ
ら楽になるのかな、などと思ってしまう。


深い抑うつ気分が見てとれます。



| 抑うつ状態とは |


「抑うつ状態」というのは
抑うつ気分だけでなく、

思考や意欲といった
精神機能までもが低下する状態です。

(抑うつ気分)(精神機能の低下)
という状態です。


抑うつ気分にとどまっていたり、
抑うつ気分が主体の時には、

そうした辛い気分を抱えながらも
外見的・外面的には、

いつものように振る舞えたり、
いつものようにやれている状態です。

ですので、傍(はた)からは
まったく分かりません。


| 出来なくなっていく |


しかし、抑うつ状態になるにつれて、

家事や仕事・人付き合いなどで
困難を感じるようになっていきます。

抑うつ状態とは、
これまで普通にやれていた物事が

次第に出来なくなってゆく状態です。

普段なら、いろいろアイデアが浮かん
 でくるのに、全然浮かばなくなる


そうした訴えも、お聞きします。

     ●●●

更には、普段はしないような
ケアレスミスを繰り返したり。

うっかり忘れ、物忘れが繰り返されたり。

仕事や学業の能率が落ちて
記憶力が減退したのでは・・・
と不安を感じるようになります。

実際に思考・記憶力が、うつ状態のために低下しているのである。
原田憲一 精神科医



たとえば、
頭に霧や靄(もや)がかかったみたいで
頭が働かない、考えがまとまらない。

文章を読んでいても、
ただ文字を追っているばかりで
内容が頭に入ってこない。

| 抑うつと親和的な体質 |


抑うつ気分や抑うつ状態を

繰り返しやすい体質の方が
いらっしゃいます。

自分でも原因がよく分からないけど
気持ちが辛くなって、落ち込んでなん
にも出来なくなることがある。


・・・・・・・・・・・・

部屋に閉じこもって、
大学にも行けなくなって、
部活にも参加できず、
友達関係も上手くいかなくなっていく。


わたしの場合には
この体質を持つ方と
カウンセリングでお会いする機会は

意外に多いと思っています。

しかし一般的には

この体質を持つ人が
何かのきっかけで

カウンセリングに行ったり、
クリニックを受診したとしても

カウンセラーや精神科医にさえ、基盤にある気分の波が見落とされることが多い。
    神田橋條治 精神科医
・・・という現実があります。


気分の波を生じやすい体質


| 回復のために |


繰り返すようですが、

「抑うつ症状」とは、軽度であっても
心身のつらさ苦しさを伴います。

自分流に無理をして、かえって
症状を長引かせる結果になったり。

つらさ苦しさを自分一人で
耐えている方も、いらっしゃいます。

薬だけの治療に限界を感じて
 カウンセングに申し込んだ

という方も、いらっしゃいます。

     ●●●

抑うつ症状の場合には、

ご自分のペースで
じっくり話しの出来る場が

とても大切になります。

カウンセリングは
そのような場としての意味を
大切にしています。


予防的な意味から、

二・三ヶ月に一度くらいで、
定期的に話しにお越しの方も
いらしたりします。

試しに一度、のような形でも大丈夫です。

| 深まる抑うつ状態 |


抑うつ症状が深まってゆくと

好きだったもの、
これまで楽しんでいたものにも

興味や関心が失われてゆきます。

自分がこうした状態になるなんて
  考えたこともなかった

そうおっしゃる方もいます。

     ●●●

外出したり
人に会うのもひどく億劫になり、

たとえば、外出しようとして
頑張って支度はするけれども

なかなか玄関から出られずに
時間ばかりが過ぎていく

・・・ということを繰り返したりします。

仲間に○○(趣味の集まりや飲み会)
 に誘われるけど、なんとか理由をつけ
 て断っている。でもいつも断り続けて
 いると、どうしたんだと心配されるの
 で、たまに無理して出かけるけど、
 苦痛でつらくて、すぐに帰りたくなる



あるいは
人の輪の中にいても、

自分だけが取り残されたような
疎外感、孤独感、悲哀感に襲われます。


夜眠れずに朝早く目が覚めたり、
逆に、起きれなくなって
仕事や学校に遅刻してしまったり。

それでも、
「自分はまだやれる」と思えている間は
それを支えに踏ん張れますが、

なにかのきっかけで
「もう出来ない」「もうやれない」
・・・そう感じた瞬間に

心身の破綻が
いっぺんに襲ってくるとがあります。


それは、たとえるなら

乾いていたタオルを
最後の一滴までも絞り尽くしてしまった
・・・と、云えるかもしれません。

その日を境に
布団やベットから出られなくなって、

会社や学校に行けなくなる事があります。

そうした状態になられてから、
カウンセリングにいらっしゃる方も
おられます。

もちろん、回復には
遅すぎるということはありません。

     ●●●

クリニックを受診して薬を処方されても
効いているのかどうかも分からない、

という場合も、多いかも知れません。

薬ばかりが増えてゆく、という人も
いらっしゃいます。

| 季節性の抑うつ症状 |



季節の変わり目になると
抑うつ気分に陥る、という人もいます。

筆者なども、その一人です。

いまは若い頃よりも
随分と程度は小さくなりましたが、

季節の変わり目になると、

一週間か十日ぐらい、
抑うつ気分に苦しめられることが
しばしばありました。

ひとりになると妙に気分が沈む。

憂うつで悲しい気分・虚しい気持ちが
身体の奥の方から迫ってくる。

そんな時ふと気がつくと、
季節の変わり目だった、ということが
何度となくありました。

     ●●●

以前、北欧に長年住んでいらした方が
面談にいらしたときに、

その国では、
季節性のうつ病の人たちが
とてもたくさんいる、と

お話しされていたことを
思い出します。


カテゴリー心と身体





お読みいただけると幸いで
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