ストレスと身体【過敏性腸症候群】

過敏性腸症候群について。

| はじめに |

〝過敏性腸症候群〟という言葉は
今ではよく知られています。

以前には
「神経性下痢」と呼ばれていました。

欧米では19世紀のはじめ頃から
精神的な要因が胃腸の調子や働きに
影響を及ぼすことが知られていた
と云います。

| 大腸の働きと感情 |

「心身医学」には昔から
大腸は心の鏡である
という言葉があります。

患者の精神状態を知るには、表情を⾒るよりも、レントゲンで⼤腸の動きを⾒た⽅がよく分かる。
池⾒⾣次郎(ゆうじろう)心療内科医

・・・と云われるように

喜怒哀楽の感情や情動の動きに
大腸が敏感に反応するからです。

情動とは、
感情のより激しいものを云います。

腸の運動機能は⾝体的な疲労や、不安・緊張・恐怖などの⼼理的刺戟によって容易に変化します。
授業中や通勤通学途中の電⾞などで、急な腹痛・下痢症状で悩む⼈は少なくありません。

苅部正⺒ ⼼療内科医
感情に密接に結びついているものに神経性下痢があります。その主な症状は、軟便あるいは下痢便が⻑期間つづくことです。
しかも神経性下痢は、精神的な興奮、緊張、不安などに際して、ひどくなる傾向があります。
⻑く下痢を続けているにもかかわらず、栄養状態は悪くありません。

池⾒⾣次郎

| 過敏性腸症候群・IBS |

過敏性腸症候群とは・・・
腸自体には疾患や病変は見られずに
下痢や便秘が続く状態です。

つまり、大腸の機能障害を云います。

一時的・一過性的に現れる場合もありますが
慢性的に繰り返す人たちもいます。

お腹の調子がわるく、それと関連して便秘や下痢などが続く状態のときに、最も考えられる病名です。
もちろん、大腸に腫瘍や炎症などの疾患がないことが前提になります。
よく見られる症状ですが、年齢と共に減ってくる傾向があります。
命に関わるものではありませんが、お腹の痛みだとか、便秘・下痢などの症状、それに対する不安や心配などのために、日常生活に不自由や支障をきたすことがあります。

日本消化器病学会

機能障害」というのは
肉体や臓器には具体的な病変は見られず

その働きや動きに不具合が生じている
・・・というものです。

ちなみに
身体の機能障害として現れる神経症を
昔から「転換型」と呼んできましたが
現在では
このような身体の機能障害を
「心身症」と診断する傾向になっています。

関連ページ
神経症とカウンセリング

今は昔のような転換型の神経症が見られなくなった、とも言いますが、この病名が避けられ、心身症と命名する傾向があります。
その方が治療者にとって、安心できるからかも知れません。

中井久夫 精神科医
消化管の運動や分泌の調節には、中枢神経系(脳と脳に直接つながる部分)が関与し、さまざまなストレス感情を要因とする消化管の機能異常が見られる。
過敏性腸症候群は、腹痛と下痢、便秘などを主症状とするもので、ストレスとの関連が高頻度にみられる。

最新自律神経学

| 自律神経と大腸 |

自律神経は、運動の神経系とは異なり、
身体の生命維持活動を担うものです。

役割の異なる二つの神経系
交感神経と副交感神経で成っており

大腸の筋肉にも
神経の枝を伸ばしています。

そのため、自律神経の過度な緊張が
大腸の筋肉に伝わり、

大腸が局所的に
収縮や痙攣(けいれん)を
起こすことがあります。

それが大腸に内臓痛を
引き起こすことになります。

ですので、下痢や便秘などがなくても、
一時的なストレスによって、大腸に圧迫感や痛みを感じることがあります。

関連ページ
自律神経失調症について


| ガス溜まりによる痛み |

ガスが、大腸の一箇所に集まって
痛みを感じる事があります。

大腸はくねっているために、
構造的にガスが一箇所に集まって〝ガス溜まり〟を作ることが、起きやすくなります。

ガスが一箇所に集中してしまうと、
腸が風船のように膨らんで
内側から大腸を圧迫することになります。

そのような時には
姿勢を変えたりして身体を動かして
ガスを散らすと大丈夫です。