自律神経失調症について


自律神経と身体症状の関係

| はじめに |

自律神経失調症とは
自律神経系の不調和が
身体の症状や身体の不調感として
現れてくる状態をいいます。

自律神経失調症では交感神経が過剰になるか、副交感神経の働きが減退するかになります。
その結果、動悸、立ちくらみ、ふらつき、発汗過多、血圧上昇、片頭痛、肩こり、手足の冷え、疲れやすさ、など多彩な症状が起きてきます。
自律神経失調症は、あらゆる臓器に起こり得ので、あらゆる症状があると言っても差し支えないでしょう。

渡辺正樹 神経内科医

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▷▷ 自律神経系のモデル図 

安保徹氏のケース

自律神経失調症の要因は
幾つかあると云われています。

その中の一つで
しかも、しばしば見られるものに
心身のストレス状態があります。

著名な免疫学者である故・安保徹氏が
こんな自体験を記しています。

1999年に私の研究室の隣の部屋で火事が発生し、研究室すべてが全焼してしまった。放水の為にすべて水浸しになってしまった。
それから半年間、私の血圧は上が180~170、下が120~110。これがずっと続いたのである。人間のストレスとはこれほど凄いものなのだ。

つらい半年ではあったが、みずから経験したことでとても勉強になった。
ストレスがどれだけ病気を作るかについて、身をもって体験したのである。
まずその時から耳鳴りが始まった。
そして目の前にずっと蚊が飛んでいた。いわゆる飛蚊症(びぶんしょう)である。
加えて肩コリ。半端な肩コリではなく首が回せなくなってしまった。
そして尿が一度に出きれない。残尿感があって残った分が歩いているうちに出ててしまい下着を濡らす。
あとは不眠である。寝汗もかいた。でも、症状をひとつひとつ噛みしめながら、薬は飲まなかった。

耳鳴りや飛蚊症は
(交感神経亢進による)血流障害が原因であるし、尿を出し切れないのは、交感神経緊張状態で副交感神経が抑制され、排尿がスムーズに行なえないからなのである。

このように
ストレスによる身体症状の多くには
自律神経(交感神経と副交感神経)が
深くかかわっている場合があります。

安保氏の場合には
身体症状とそれを生み出した事象(ストレス)とが、はっきりと自覚化・意識化されています。

しかし世間の多くのケースでは
自覚されずにいることは
多いかも知れません。

内科を受診する患者さんの特徴のひとつは、なんらかの身体愁訴を持つ人が多いことである。
その内科的症状
(身体症状)のために、背後にある心理的な要因に気づかず、したがって内科での治療にもかかわらず、一向に治療効果が見えずに、症状はかえって慢性化することが多い。
菅 正明 内科医

生命維持活動を担う

自律神経は、ご存知のように
交感神経と副交感神経という
役割の違う
二つの神経系で成り立っています。

しかも自律神経は
運動の神経系とは異なって
生体の生命維持活動を担っています。

そして生体の生命維持活動を
安定して維持し続けるためには

その妨げや邪魔になる
本人の「自覚的な意識」から
影響を受けない仕組みが必要となります。


ですので、
「心臓よ止まれ」と意識して念じても
心臓の動きは止まりません。

役者さんが
泣くシーンの撮影で
涙を出そうと(意識的に)努力しても
なかなか出なくて苦労した

・・・みたいな話をよくされます。

涙腺の活動にも
自律神経が関わっています。

このように自律神経系は
本人の自覚的な意識からは
影響を受けないようになっています。

  

| 感情との関係 |

ただし、わたしたちの「心」が
自律神経系に影響を与えるルートが
ひとつ存在します。

それは「感情」と呼ばれるものです。

感情のよりエネルギーの激しいものを
情動」と呼びます。

たとえば、強い感情や情動は
自律神経系を通して
瞬時に、身体の反応を引き起こします。

何らかのストレス状態が続いた場合は、自律神経系や内分泌系(ホルモン)の作用に歪みが生じて、様々な症状が現れてきます。
ですので、どちらも「心」は関係しているのです

岡田宏基・日本心身医学会

しかし、自律神経失調症では
そうした瞬間的な激しいものとは違い
意識の奥で
慢性的に持続し続けている
ネガティブ感情のようなものです。

それは次のようなものを云います。

つらさや苦しさ・しんどさ

悲しみや怒り

強い無力感や自己否定感

絶え間ないイライラや苛立ち

カウンセリングについて

自律神経失調症は
上に記した成り立ちのために
薬による治療だけでは
なかなか良くなりにくい、と云われます。

自分ではこれといった原因が思い当たらないのに、慢性的な体の不調を訴える人が増えてきました。病院で検査を受けても異常はみつかりません。
医師も診断に困って「しばらく様子を見ましょう」とか、病院によっては「神経性の胃炎です」と診断されたりします。
内服薬で一時的に症状が消えても、また具合が悪くなったり、不調があらわれます。

『自律神経失調症』高橋書店

出来れば、カウンセンリグのような場で
お話しされてみることも
大切なように思っています。

時代状況を反映して、心身症やストレス関連の病態が激増していますが、治療は必ずしもうまくいっているとは言えません。
臨床経験があれば、容易に理解できることですが、マニュアル的な治療では治療は殆どうまくいきません。
個別的で複雑系である人間の内面は、マニュアル的治療では、うまく扱えないからです。

河野友信・心療内科医

カテゴリー心と身体