心身症- 治療とカウンセリング

心身症について

| 心身症の意味 |


心身症(しんしん・しょう)という言葉を
耳にすることがあると思います。

いまでは、普通に口にされていますが、

心身症という言葉が
世間に知られようになったのは、
1980年代の不幸な航空機事故が
きっかけでした。

心身症とは・・・

精神的・心理的な要因や背景が、
発病や病気の成り立ちに
かなり深く関わっていると思われる
身体の病気・
慢性化した身体の症状を指して、
こう呼んでいます。

精神的・心理的問題をまったくほんものの
身体病としてあらわすということである。
         中井久夫・精神科医

「身体病に心身症が多いことは
 古くから認識されていた」

と云われています。

たとえば、
ミステリー作家の夏樹静子さんが
心身症としての腰痛に苦しめられたことは、
ご自身が公表されたことで
よく知られています。

心理的要因については     
こちらを、是非お読みください。

心身症では、
本物の身体の病気として現れるために
殆どの人たちは、当然ですが

内科や婦人科・循環器科など
身体の診察科を受診することになります。

心身症としては、風邪様(かぜよう)症候群
や肩コリのような軽いものから、高血圧、命
を落としかねないクモ膜下出血、心筋梗塞ま
である。
神戸の地震(阪神淡路大震災)では、クモ膜
下出血、多発性胃潰瘍、心筋梗塞が見られた。
心筋梗塞は直後だけでなく、40日〜50日、
3ヶ月、半年目にも増えた。したがって負荷が
なくなても、数ヶ月後まで油断できない。
たとえば激務の後、休暇を取って旅行に出る
場合にも、心筋梗塞が起こる場合がある。
        中井 久夫・精神科医


| 慢性化する傾向 |


心身症である場合には
身体の病気として治療しても
なかなか良くならなかったり。

一旦は良くなったとしても
しばらくして繰り返されたり、

次には別の病気として現れたり。

・・・ということが、よく見られます。

(ある症例報告から)
四十歳の会社員Aさんは、上部腹痛と下痢を
訴えて入院。翌年には胃痛で受診したT市の
大学病院の内科で、十二指腸潰瘍と診断され
手術を受けた。
その後二ヶ月して再び胃痛に襲われた。胃痛
が次第に強まって、翌年に術後の癒着という
ことで再び手術を受けたが効果なく、腹痛、
胸焼け、背痛などが続いた。
その後、原因を見つけるために、ある大学病
院で手術を受けたが、はっきりと原因をつか
めなかった。

たとえば、ひどく忙しかった仕事が
一段落した後に
風邪をひいて寝込むようなことは
よく見聞きするものです。

このような場合には、
心身症としての「風邪様症状」であることが
とても多いように思います。

あらゆる身体の病気が
心身症として、現われ得るものです。


大学病院の総合診療科を受診する患者さんの
六割から七割が、心身症としての病態を持つ
と言われていますね。
ハーバード大学でも川崎病院でも、そのよう
な報告をしています。
           河野友信 心療内科医


| 心身症のいろいろ |


心身症としてあげられことの多い
代表的な病気としては

本態性高血圧 一部の不整脈 心臓神経症
消化器性潰瘍 潰瘍性大腸炎 糖尿病
関節リュウマチ 慢性蕁麻疹 湿疹
メニエール症候群 甲状腺機能亢進症 
(本態性とは、原因が良く分からない
 という意味です)

などが挙げられます。

しかし、上にも記しているように、
どのような身体病も
心身症として現れる得るものです。

中心性網膜症は、急性ストレス関連の眼科疾
患である。第二次世界大戦の米兵に多数発症
した。
緑内障もストレス関連で発症することがある。
サラリーマンでは決算期に悪化する。
遺伝子が関与していても心身症であり得る。
たとえば甲状腺機能亢進症である。これは
甲状腺がストレスに関与した内分泌器官であ
るから当然であるが、糖尿病も心身症として
突然始まることがある。
          中井 久夫・精神科医


| カウンセンリグと治療 |


時代状況を反映して心身症やストレス関連の
病態が激増していますが、心身症の治療は必
ずしもうまくいっているとは言えません。
臨床経験があれば、容易に理解できること
ですが、マニュアル的な治療では、心身症
の治療は殆どうまくいきません。
              河野友信

かれこれ27年前ぐらいに、日本心身医学会
は次のように言っています。
「心身症というのは、体にあらわれる病気で
心理的な問題が原因になっており、そのこと
に配慮しなければ、病態もわからないし、
治療もうまくいかない」
これはすごく的を射た考えです。
              末松弘行

身体的な病気として治療されているけれども、
発症や経過に心理的・精神的な要因が強く関
わっていて、たんなる薬物治療だけでは治療
効果が思ったように上がらない。
したがって、そのような患者さんの中には、
「もう治らない」と諦めている人が多い。
               悟郷 晋浩

心身症であることが想像される場合には、
身体病としての治療だけではなく

いろいろなことを
落ち着いて話せる場で、

気持ちや状況などを振り返りながら、
少しずつ物事を理解してゆくことが
とても大切になります。

カウンセリングでは、まず第一に
そうした場としての意味を
大切にしています。

すべて身体であらわれるので、本人は精神的・
心理的問題が関わっていることを、納得しな
いことがある。
患者を取り巻く状況と身体症状との関連から、
心身症であることを察して、丁寧な面接で少
しずつ問題を共に理解してゆくことがよい
          中井 久夫・精神科医


溶接工として働いていたが、最近過労気味で
あった。
その頃から腹部膨満感があったが、吐き気と
頭痛が加わって、内科を受診。胃カメラの検
査で胃潰瘍と診断され、投薬を受けた。
しかし、その後も症状は一進一退。
しだいに冷や汗が出たり、イライラするよう
になり、仕事への意欲も低下した。病院で抑
うつ状態と診断、休養を指示される。
患者は、はじめは感情的・心理的な問題と症
状との関係を否定していたが、しだいに就労
条件への不満や上司との緊張した関係につい
て語り始めた。
そして、症状の増悪と職場のストレス状況と
の関連に気づいていき、「今まで漠然と不満
に思ってたいたことが聞いてもらえて、楽に
なった」と云って、症状が少しずつ改善し、
復職して行った。
      成田義弘・精神科医『心身症』



| 間違ったイメージ |


多くの人は、
「心理的・精神的な要因」と聞くと

なんとなく、心が弱い人がなるもの
・・・というイメージを
持つかも知れません。


しかし、それは大変に間違った先入観です。

心身症は一般に、性格が弱かったり、社会的
に困難な事態に置かれている人がなる、と誤
解されていますが、むしろ一人でいろんな問
題を背負って、頑張っているような人に、
心身症は多いものです。
               悟郷 晋浩

(ある症例報告から)
五十代のHさんは、一年ほど前から体を動か
と動悸、息切れ、胸苦しさが起こるようにな
り、やがて不整脈が起きて入院することにな
った。
入院後、薬物治療によって動悸や呼吸困難な
どの症状は改善された。しかし不整脈は消え
ず、いろいろな薬を使っても効果がなく、
Hさんは不安を抱え続けた。
そこで、治療を続けながら面接をしていった
ところ、発症の前に職場で問題が起こり対立
するような状況が起きていたことが分かった。
しかもその前から家庭内でも息子のことで、
ひどく悩みや葛藤を抱えていることが明らか
となってきた。
そこで、それらの心配事や心労について話し
い合いをしてゆく中で、次第に自分自身で不
整脈との関わに気づいてゆき、やがて不整脈
もみられなくなっていった。
       【こころ ストレス 身体】
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