【心身症】とはどういうものか


心身症についてお伝えしています

| はじめに |

「こころ」の状態は神経系・免疫系・内分泌系を通して身体に影響を及ぼし、種々の病気を発症させます。また、逆に身体の変化も「こころ」に影響を与えることになります。
国立 精神・神経医療研究センター

心身症 (しんしん・しょう)という言葉を、目や耳にしたことがあるでしょうか。

日本心身医学会はづきのような見方を示しています。『心身症というのは、体にあらわれる病気で、心理的な問題が原因になっており、そのことに配慮しなければ、病態もわからないし、治療もうまくいかない』これはすごくわかりやすい概念です。
末松弘行 精神科医

心療内科とは実は、元々の理念では

心身症の治療をおこなう科として
考えられたものでした。

関連ページ
▷▷ 心療内科とカウンセリング

念のために申し上げると、
「心身症」とは
本当の体の病気として発症するものです。

ですので
ただ体の具合を診ているばかりでは
それが心身症であることは分かりません。

ですので、ほとんどの心身症は
本当の意味での治療やケアとは
無縁なままに置かれることになります。

内科的な病気に心身症が多いことは
昔から知られていた、と云われます。

二十世紀前半の有名な内科医・バウアーは晩年、彼の内科患者の三割が心身症であったと述べている。
中井久夫 精神科医
大学病院のプライマリ・ケア外来(総合心療科)を受診する患者の六割は心身症としての病態をもつと言われていますね。ハーバード大学でも川崎医大でもそのような報告をしていますね。
河野友信 心療内科・心身医療

心身症をめぐって


  

たとえば、
ミステリー作家として活躍されていた
故・夏樹静子さんが

心身症としての腰痛に苦しめらたことは、
ご自身が公表されたことで
よく知られています。

心身症としては、肩コリのような軽いものから、高血圧、命を落としかねないクモ膜下出血、心筋梗塞まである。
神戸の地震(阪神淡路大震災)では、クモ膜下出血、多発性胃潰瘍、心筋梗塞が見られた。
心筋梗塞は直後だけでなく、40日〜50日、3ヶ月、半年目にも増えた。したがって負荷がなくなっても、数ヶ月後まで油断できない。

たとえば激務の後、休暇を取って旅行に出る場合にも、心筋梗塞が起こる場合がある。

中井 久夫 精神科医

心身症はこのような病態ため
当然なのですが薬での治療だけでは治らず

薬で無理やり症状を抑えるか、
良くなったり悪くなったりを繰り返して
慢性化してゆくケースが多くなります。

一旦は、なんとなく良くなったとしても
しばらくして、また再発症する
・・・を繰り返したりします。

身体的な病気として治療を受けているけれど、発病や病気の経過に心理的な要因が深く関わっていて、たんなる薬物療法だけでは、治療効果が思うようには上がらない。
したがって、そのような患者さんの中には、もう治らない、と諦めてる人も多いものです。

吾郷晋浩 心身医学

心身症としての病気

心身症として現れやすい疾患として
挙げられることの多い病気には

本態性高血圧 一部の不整脈
(本態性とは原因がはっきりしないという意味)
心臓神経症 消化器性潰瘍 

潰瘍性大腸炎 糖尿病
関節リュウマチ 慢性蕁麻疹 湿疹

・・・などがあります。

甲状腺機能亢進症は、内分泌系心身症の代表的な疾患である。
亢進症の主な疾患としてはパセド病があげられるが、精神的なショックや強いストレスをきっかけに発症する場合のあることが、昔から知られている。

『心身症の治療と診断』
(九州大学病院で)パセドゥー病の発病当時の精神状態を調べた結果では、三十人の患者のうち、十人が発病前に、強いショック体験にさらされており・・・
池見酉次郎(ゆうじろう) 心療内科

しかし、どのような身体病も
心身症として現れ得ることになります。

中心性網膜症は、急性ストレス関連の眼科疾患である。第二次世界大戦の米兵に多数発症した。
緑内障もストレス関連で発症することがある。サラリーマンでは決算期に悪化する。
遺伝子が関与していても心身症であり得る。たとえば甲状腺機能亢進症である。糖尿病も心身症として突然始まることがある。

中井 久夫 精神科医
興味深いのは、緑内障などにも心理的な要因が、つよく関係する場合のあることである。
池見酉次郎 心療内科
糖尿病患者の血糖値は、ストレスで上昇することが認識されています。
村上和雄 筑波大学名誉教授
私たちが調べたところでは、試験前の医学部の学生の約10%、サッカーの対抗試合前の高校選手の15%に糖尿が見られた。
これはストレスによる交感神経の緊張、その人の腎臓の体質的なものから生じる、とされている。
しかし膵臓に病変があって起こる糖尿病の場合でも、糖の出かたには感情の状態がかなり影響する。

池見酉次郎(ゆうじろう)

関連ページ
▷▷ 自律神経失調症について

心身症からの回復

時代状況を反映して、心身症やストレス関連の病態が激増していますが、治療は必ずしもうまくいっているとは言えません。
臨床経験があれば、容易に理解できることですが、マニュアル的な治療では、心身症の治療は殆どうまくいきません。
個別的で複雑系である人間の内面は、マニュアル的治療では、うまく扱えないからです。

河野友信 心療内科

心身症の要素が想像される時には
いろいろなことを自由に話せる場の中で

気持ちや問題を少しずつ整理しながら
話し合ってゆくことが、大切になります。

カウンセリングは
そうした場としての意味を
とても大切にするものです。

著名な精神科医の中井久夫氏も
そうした必要性を語ります。

すべて身体であらわれるので、本人は精神的・心理的問題が関わっていることを納得しないことが多い。
患者を取り巻く状況と身体症状との関連から、心身症であることを察して、丁寧な面談で、少しずつ問題を共に理解してゆくことがよい。

中井 久夫

関連ページ
▷▷「心因」が意味するもの

カウンセリングでお話しをしてゆく中で
いつの間にか抱えていた症状が
軽くなってゆく・消えてゆくことは
しばしば経験しています。

溶接工として働いていたが、最近過労気味であった。
その頃から腹部膨満感があったが、吐き気と頭痛が加わって、内科を受診。胃カメラの検査で胃潰瘍と診断され、投薬を受けた。
しかし、その後も症状は一進一退。
しだいに冷や汗が出たり、イライラするようになり、仕事への意欲も低下した。病院で抑うつ状態と診断、休養を指示される。

面談をしてゆく中で、患者は、はじめは感情的・心理的な問題と症状との関係を否定していたが、しだいに就労条件への不満や、上司との緊張した関係について語るようになっていった。

そして、症状の増悪と職場のストレス状況との関連に気づいていき
「今まで漠然と不満に思ってたいたことが聞いてもらえて、楽になった」と云って、症状が少しずつ改善し、復職して行った。

成田義弘『心身症』

| 間違った先入観 |

多くの人は
「心理的・精神的な要因」と聞くと
なんとなく「心が弱い人がなるもの」

・・・というイメージを
お持ちになるかも知れません。

しかし、それは
大変に間違った先入観と云えます。

心身症は一般に、性格が弱かったり、社会的に困難な事態に置かれている人がなる、と誤解されていますが、むしろ一人でいろんな問題を背負って頑張っているような人に、心身症は多いものです。
悟郷 晋浩
(ある症例報告から)
五十代のHさんは、一年ほど前から体を動かと動悸、息切れ、胸苦しさが起こるようになり、やがて不整脈が起きて入院することになった。
しかし不整脈は消えず、いろいろな薬を使っても効果がなく、Hさんは不安を抱え続けた。

そこで、治療を続けながら面接をしていったところ、発症の前に職場で問題が起こり、対立するような状況が起きていたことが分かった。
しかもその前から、家庭内でも息子のことで、ひどく悩みや葛藤を抱えていることが明らかとなってきた。

そこで、それらの心配事や心労について話しい合いをしてゆく中で、次第に自分自身で不整脈との関わに気づいてゆき、やがて不整脈もみられなくなった。

カテゴリー心と身体