【神経症】治療とカウンセリング


神経症というもの


ここでは主として

カウンセリングを通した
神経症の改善・回復について
書かれています。

少し長い文章ですが
お読みいただけると、幸いです。


| 〝神経症〟という用語 |


「神経症」と呼ばれている
症状や状態があります。

昔は「ノイローゼ」とも
呼ばれてもいました。

一般に、神経症と言うよりもノイローゼのほうが通りがよいであろう。

しかし、このドイツ語は、もともと神経症を指す言葉だったが、日本にはいって、意味がぼやけてしまった。

中井久夫 精神科医
     ●●●

しかし最近では、

「神経症」という用語は、表立っては
余り使われなくなっています。

ただし、
言葉が使われなくなったのは

神経症というものがなくなったから、
ではありません。

むしろ、社会環境や生活環境が
激しく変化している中で

増えているように思います。


| 動物園の動物にも |


ちなみに、
私たちの仲間である動物園の動物にも、

神経症やストレス症状が
広く見られることが知られています。

| 病名の細分化 |


神経症は、
精神的な症状から身体に現れる症状まで

様々な症状として現れます。

そのため
人の数だけ症状がある
とも云われる程です。

したがって〝神経症〟という
大きな括り方ではなく、

症状ごとに
細かく診断名・病名を付けて
呼ぶ傾向になっています。

神経症と呼ばれる分野は、あまりにいろいろな症状があり、
しかも「最近の出来事や抱えている悩み」が原因として大きいものや、「心の働きの癖」が原因となっているもの。「生まれつきの体質や気質」が原因として大きいもののなど、さまざまです。

ですから、神経症という大雑把な呼び名を廃止して、症状ごとのたくさんの診断名に分けた方がよい、と考える傾向になっています。

 神田橋條治 精神科医

大きな意味で捉えると
神経症の症状というものは、

外側に在るもの
(ストレス状況や悩みなど)と

その人の内側に在るものとの
化学反応によって生ずる・・・

そう云えるかも知れません。

ですので、
病名や診断名に細かくこだわっていても
余り意味がありません。

     ●●●

1980年代くらい迄は、

道に落ちている犬のフンを、
 知らずに踏んでしまうのではないか


・・・という不安な想念が
頭から離れなくなって、

外を歩けなくなる、という症状が
しばしば見られました。
(恐怖症あるいは不安神経症)

     ●●●

たとえば、その他にも

人の視線がひどく気になって
不自然な態度になってしまう。

あるいは、自分の視線が
人に不快な思いをさせるのではないか

・・・という不安によって
自然な態度がとれなくなってゆく。

対人恐怖症。
(現在の名称は社交不安障害)

     ●●●

自分の体から匂いが出ていて、
人に不快な思いをさせている

・・・という思い込みに囚われる
自己臭神経症。

このような症状も
昔から知られています。

| 機能障害・転換型 |


上に記したものは
精神的な症状としての神経症ですが

身体の〝機能障害〟としての神経症も
知られています。

機能障害というのは、

肉体には具体的な病変や異常は
見られないけれども、

その動きや働きの面で
障害が起きている状態を指します。

     ●●●

たとえば
役者さんの中には

セリフを喋っている時に
口が思うように動かなくなる症状に
苦しむ方が、いらっしゃいます。

ジストニアと呼ばれます。

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昔から知られている症状に
「書痙(しょけい)」があります。

字を書こうとすると
腕や手がこわばり震えて
字を書けなくなる症状です。

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「書痙(しょけい)」と似ていますが

音楽大学の在学生だとか
音楽教室の先生の中に、

楽器演奏にかかわる指や手が
脱力したりして
思うように動かなくなる

という症状に悩むケースがあります。

     ●●●

「神経性頻尿」といって、

わずかな量の尿でも
強く耐え難い尿意を感じる。

こうした頻尿感が

精神的な要因によって起こることを
「神経性頻尿」と云います。

神経性頻尿は
一時的なストレス症状としても
よく見られます。
膀胱は、心臓や消化器と同じように情動の影響を受けやすく,その結果として排尿の異常が起こり得る。

たとえば、試験の前には、排尿後であっても、わずかな尿量で強い尿意を感じることは、誰しも経験することであろう。
精神的な緊張が、膀胱刺激を容易に変動させる。

神経性頻尿の心身医学的研究

スポーツ選手に見られるイップスも
このカテゴリーに入ります。

     ●●●

こうした
〝身体の機能障害〟としての神経症を

「転換型」と呼んできました。


| 歌手・田辺靖雄さんのケース |


歌手の田辺靖男さんのケースも、
こうした病態だったかも知れません。



ある朝、仕事に行くために玄関を出て、歩こうとしたとき、両足の付け根に激しい痛みが走って、そのまま一歩も歩けなくなってしまった。
足を踏み出そうとすると激しい痛みが襲ってくる。

すぐに病院へ連れていってもらい、その日から車イス生活。

通院しながら、病院でありとあらゆる検査をしたけれど、どこにも異常が見当たらない。「原因不明」と告げられた。

そこで、すぐに入院するよう云われた時、奥さんで歌手の九重佑三子さんは、「原因が分からず、治療法もないというなら、入院させる意味がありません」と云って、自宅に連れて帰って来たといいます。

その日から、自宅で夫婦二人三脚で養生をしていく中で、また元気に歩けるようになり、1年後に仕事に復帰したということです。

玄関から出ようとして歩けなくなる暫く前から、体調の変調があったと云います。たとえば、あくびが出て仕がない。とにかくあくびが出る。

それから歌詞が覚えられなくなっていた。ぜんぜん歌詞が頭に入ってこなくて、ステージに出てもうまく歌えなくなっていたけど、忙しかったので、とにかく仕事をこなし続けていた、と云います。



もしかすると
発症のしばらく前から、

疲労とストレスによって、

なんらかの葛藤状態に
いらしたのかも知れません。

奥さんの九重佑三子さんは、
「絶対に治る、良くなると信じていた」
と語ります。

もしかすると奥さんは、

ご主人を見ていて
何かを感じていたのでしょうか。


ただし、一見神経症ではないかと
見まかうような機能障害が

中枢神経の疾患による場合もあるため、
まず検査が必要です。

| 心は複雑系 |


神経症に限らないことですが、

〝症状〟とは深い意味において

何か大切な意味があって、
あるいは、
もしかすると何か必要があって

現れ出ているものかも知れません。



そして、この場合の
〝意味〟とか〝必要〟とは、

「雨が降りそうなので傘を持っている」
・・・というような、

分かりやすく目に見えるもの、
ではないところに

その深い特徴があります。


更には、〝症状〟というものは、
鬼ごっこのように

追いかければ追いかけるほど、
逃げて行くものです。


そういう意味からすると、

(少しおかしな云い方に
 聞こえるかも知れませんが)


症状の意味を大切にしてゆく・・・

そのことが、もしかすると
回復へ歩んでゆくための

大切な一歩に、なるかも知れません。

症状の羅列をもってして、その人を理解することなどは、ありえない。
症状には、それなりの意味があり、歴史があり、必然性があってあらわれてきているのであろう。

そういった背景を無視することは、臨床家のなすべきことではないのである。

小倉 清 精神科医

強迫症状に悩んで
カウンセリングにいらしていた方から、
ある時

病院でのカウンセリングに行っていた時
には、症状の話ばかりだったけど、ここ
だと、症状のことだけでなくて、いろい
ろな話を聞いてもらえるので、自分に合
っている。


そう云われたことがあります。

| 〝自ずから〟の形 |


神経症からの回復を
ご一緒に考えてゆく時に

注意すべきなのは、

症状を取り除くこと」を
直接の目的・目標にしたり、

あるいは、
症状がなくなること〟にしか

両者(カウンセラーとご相談者)の目が
向かずにいる事です。

そのようになってしまっては、

深い森の中に
道を踏み迷うようなことに
なりかねません。



安永 浩氏(精神科医)は
次ぎのようなケースを記しています。
長年の神経症症状が見事にとれて医師・本人ともども喜び合ったのに、突然自殺を遂行する、といったショッキングな例も実際に存在する。
安永 浩・精神科医

著名な精神科医の木村 敏氏も
このような体験を記しています。
私は以前、自分が診察していた若い患者さんが、症状が取れたとたんに自殺をしてしまったという、苦い経験をしたことがありますが、この経験から、十分な治療関係が築かれてゆく前に、症状だけを治療するのは、ときとして非常に危険なことだ、という教訓を得たように思っています。
木村 敏・精神科医


| 気持ちを整理してゆく |


もうこれ以上、良くなりたくない。

・・・・・・・・・・

治りたいと思っているはずなのに、(症状が)なくなってしまったり良くなってしまうのが、とっても不安なんです。

・・・・・・・・・・

良くなってしまったり、解決してしまったら、いま迄の時間がすべてムダだったという気持ちになってしまう。

・・・・・・・・・・

久しぶりに思いっきり食べて吐いたら、まだこんなに吐けるんだと思って安心した。

・・・・・・・・・・

これらの言葉は、

面談の中で、ご相談者の方たちが
自ら語ってくださったものです。

意外に思われるでしょうか?


もちろん、みなさん
ご自分の状態に悩んでいるし、
どうにかしたいと思っていらっしゃる。

ですから
カウンセンリグにもお越しです。

と同時に・・・

カウンセリングを続けてゆく中で
自分の中の別の気持ちと出会い、

それを少しずつ
消化していった方のほうが、

むしろ、結果が良いように思います。


故・下坂幸三氏は、
このように語っています。

症状が良くなってくると、だんだん患者さんは、それをためらうようになります。なかなかそれ以上進まない時期が来るようになります。

フロイトはそれでいいんだと言いました。無理に治そうとしなくていいよ。

症状を温存しながら、気持ちのありようを、少しずつ消化していくことが大事だよ、と ・ ・ ・
下坂幸三 精神科医・心理療法家

| 寄り道をしながら |


神経症に限らず
回復に一直線は禁物です。

寄り道をしながら、時々休憩して
道端の草花を眺めながら
歩いてゆきます。

     ●●●

遠回りに思われるでしょうか。

でも遠回りに見えて

結局は一番の近道、ということは
案外多いかもしれません。


カテゴリー心と身体





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