
ストレス解消のための行動と
嗜癖(しへき)との深い関係
スレトス解消のために行う行動のことを、
カウンセリングでは『ストレス行動』と呼んでいます。
ストレス行動には
嗜癖になりやすい性質があることを
ご存じでしょうか。
嗜癖(しへき)とは
少し硬い言葉でいうと、
「やらずにはいられなくなるような
抑え難い習慣性をもつ行為」のことです。
依存症という用語が生まれる以前から、
使われていた専門用語です。
この記事では
ストレス行動とはどういうものか。
そして
ストレス行動と嗜癖の深い関わりについて、
どなたにも関心を持っていただけるように、
具体的な例を用いて
読み物風に記しています。
日常よく見られるストレス行動
日常生活で
よく見られるストレス行動に
「憂さ晴らし」行動があります。
たとえば
面白くない事があった時などに、
アルコールを飲んだり、
車を飛ばして走る。
八つ当たりして怒鳴る。
あるいは、
ゲームだとかギャンブルにのめり込む、
などもあります。
その他にも食行動として、
甘いものを食べる。
脂っこいものを食べる。
味付けのとても濃い食事をとる。
こうした食行動が
軽いストレス行動として行われている例は
少なくありません。
食行動ということでは、
過食嘔吐などは
若い女性のストレス行動として、
よく見られるものです。
1980年代のTVドラマの中に
こんな台詞がありました。
酒か博打か女ででも発散しなきゃ、
男は身がもたいないってことだよッ!!
熾烈な出世競争をしている
企業戦士(こんな言葉がありました)が、
ライバルを蹴落とすために
犯罪に手を染めるという物語でした。
〝ストレス行動〟が必要になる意味
「ストレス行動と嗜癖」にゆく前に
〝ホメオスタシス〟から見た
ストレスとストレス行動の仕組みについて、
触れておきたいと思います。
わたしたちにとって、
なぜストレス行動が必要になるか、
というお話です。
ホメオスタシスとは
わたしたちの体の内側では
生命を維持するための複雑な活動が、
眠っている時も起きている時も
絶え間なく続けられています。
この生命活動は、常に
安定した一定の状態であることが必要です。
乱高下するようでは、
航空機と同じで
たいへん危険なことになります。
この生命活動のいつもと変わらない
安定した状態のことを、
『ホメオスタシス』と呼んでいます。
ホメオスタシスから見た
ストレス行動の意味とは
強いストレスを受けていると、
わたしたちは
ホメオスタシスを維持するために、
ストレスから生じる心身の負荷を
なんらかの形で
排出する必要に迫られます。
何故ならひとつには、
強いストレスが続くことは
体調の不良だとか
病気の発症につながりやすくなるからです。
国立精神・神経医療研究センター
「こころ」の状態は神経系・免疫系・内分泌系を通して身体に影響を及ぼし、種々の病気を発症させます。
そして心身の負荷を
〝行動的手段〟で排出することを
ストレス行動といいます。
簡単に言うと、
ストレスを解消するための行動です。
ストレス行動の嗜癖になりやすさ
ストレス行動は
最初に記した〝憂さ晴らし〟のような
分かりやすいものばかりではありません。
もう少し複雑な成り立ちをしたもの。
あるいは
健康行動の姿を取るものなども
存在しています。
こうしたストレス行動の問題の一つに
嗜癖(しへき)が挙げられます。
嗜癖とは、はじめにも書いたように、
「やらずにはいられなくなるような
抑え難い習慣性をもつ行為」を意味します。
ストレスを処理するための行動は
それを繰り返すことで
嗜癖化する性質があるのです。

精神科医の神田橋條治(じょうじ)氏が、
ある座談会の中で
次のような例を語っています。
神田橋條治 精神科医
昔、ジョギングマニアの人が足を悪くして自殺してしまったことがあります。
走っているとエンドルフィンが出てくるためか、走れないと絶望を感じるようです。
ジョギング好きな精神科医がいて、
ジョギングは嗜癖なんだから、アルコール中毒者に応用できるんじゃないかと考えて、自分が走る時に、アル中の人を一緒に走らせていました。
このジョギング好きの精神科医の考えは、
嗜癖からの離脱自体は難しくても、
同じ嗜癖の中で
アルコールからジョギングに変えれば、
少しでも社会的な適応が改善するのではないか、ということです。
運動嗜癖の危険な側面
ジョギングやランニングが
嗜癖行動になりやすいことは
よく知られています。
ストレス解消に始めたランニングや
健康作りのつもりで始めた運動によって
体を壊してしまう人たちは、
実はたくさんいらっしゃいます。
ランニング嗜癖では例えば、
健康ランナーとしてメディアで有名になった人が、
ランニング中に倒れて亡くなることが
過去に幾度か起きていますね。
サーフィンでも、
海から上がって車の中で休んでいて
そのまま亡くなっていた
・・・というケースを
しばしばお聞きします。
いまから十年ほど前(2012年)には、
著名な雑誌の元編集長の男性が
仕事からの帰宅後、夜遅くに
趣味の競技用の自転車で走りに出て、
自転車ごと倒れて亡くなっていたのが
小さな新聞記事になっていました。
死因は虚血性心不全で、
走っていて意識を失ったのだろう、ということです。
著名な雑誌の元編集長だったので
記事として扱われましたが、
死亡しないまでも
身体を壊す事例を含めると、
このようなケースは
世間ではたくさん起きています。
俳優のダスティン・ホフマンが
ニューヨークで、
ランニング中に倒れて苦しんでいる人を、
通りがかりに見つけて助けた
・・・というニュース記事を
ネットで読んだことがあります。
運動嗜癖の場合には、
このように危険な側面があります。
筆者の知り合いの男性で、
皇居のランニングだとか
フルマラソンや24時間マラソンへの参加と、
夢中になって走っていた人が、
それから二十年くらいたって、
「どうしてあんな事をあんなに夢中になってやっていたのか、いまから考えると、自分でもよく分からない」
・・・みたいなことをおっしゃいます。
サウナが嗜癖になっている場合
運動嗜癖以外にも、
例えば〝サウナ嗜癖〟があります。
場合によっては、中高年の体に
深刻なダメージを与えることがあります。
サウナ好きの芸能人や有名人の方が、
サウナで倒れるというニュースを
時々聞くことがあります。
例えば、2026年の3月に
相撲(すもう)の元大関だった
若嶋津(わかしまず)さんが、亡くなりました。
若嶋津さんが倒れてから
もう十年以上がたっていると思います。
若嶋津さんが倒れた直後に
経緯を詳しく書いた記事が出て、
私は偶然にその記事を読んでいました。
その記事によると・・・
相撲部屋の親方だった若嶋津さんは、
二・三日前から
不調感を口にしていたそうです。
とてもサウナ好きだったので、
「気分をスッキリさせてくる」と告げて、
自転車に乗って
行きつけのサウナに向かいます。
倒れたのは
サウナからの帰り道のことです。
倒れる直前に、
意識を朦朧(もうろう)とさせて
自転車を蛇行させている姿を、
近所の人が目撃しています。
嗜癖化したストレス行動が招く
問題の悪循環
ストレス行動とは、本来は
抱えるストレスや心の葛藤などを
(一時的にでも)
解消することが目的のはず。
しかし、嗜癖化したストレス行動が
更なる問題やストレスを生むことは、
少しも珍しくありません。
たとえば、
ご主人のゲーム嗜癖が
奥さんとの夫婦仲に悪影響を与える。
車を飛ばして走る。
八つ当たりで怒鳴る。
「ハンドルを握ると性格が変わる」
という人がいます。
こうしたストレス行動は、
現実にトラブルを生むことになります。
ストレス行動の中身は違っていても、
ここに記したことは
わたしたち誰にとっても
無縁ではないように思っています。
カテゴリー【ストレス】
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