はじめに
わたしたちは
強いストレスを受けていたり
フラストレーション状態に置かれると
心身のホメオスタシスを維持するために
(心身の平常性)
それらの負荷を何らかの形で
外に排出する必要に迫られます。
つまり、それを何かの形で
アウトプットせざるを得なくなります。
そして、アウトプットとしての処理には
○ 精神的なものとして
○ 行動化として
○ 身体化させるものとして
つまり、心・行動・身体という
三つの出力系が与えられています。
そして、このうような
ストレスの排出系としての行動のことを
〝ストレス行動〟と呼びます。
ストレス行動とは
分かりやすい例では
「憂さ晴らし」と呼ばれる行動が
そうしたものに入ります。
面白くない事があった時などに
お酒を飲んで酔ったり
八つ当たりして怒鳴ったり。
あるいは
甘い物・脂っ濃い物・味の濃い物など
食べることで神経を落ち着かせる
・・・なども、よく見られます。
1980年代のTVドラマの中に
こんな台詞がありました。
酒か博打(ばくち)か女ででも発散しなきゃ、男は身がもたいないってことだよッ!!
熾烈な出世競争をしている
企業戦士(こんな言葉がありました)が
ライバルを蹴落とすために
犯罪に手を染めるという物語でした。
ストレス行動と嗜癖 (しへき)
ストレス行動は
上に記した〝憂さ晴らし〟のような
分かりやすいもの、ばかりではありません。
もう少し複雑な成り立ちをしたもの。
あるいは
健康行動の姿を取るものなども
存在しています。
そうしたストレス行動の問題の一つに
嗜癖(しへき)が挙げられます。
ストレスを処理するための行動は
それを繰り返すことで
嗜癖(しへき)化する性質があるからです。
嗜癖に変わっていく
嗜癖(しへき)とは、
クセになっているかのように
繰り返し行ない続けること、を云います。
とにかく「やらずにはいられなくなる」
状態のことです。
ストレス行動には
嗜癖になる性質があるのです。
神田橋條治 精神科医
昔、ジョギングマニアの人が足を悪くして自殺してしまったことがあります。
走っているとエンドルフィンが出てくるためか、走れないと絶望を感じるようです。
ジョギング好きな精神科医がいて、ジョギングは嗜癖なんだから、アルコール中毒者に応用できるんじゃないかと考えて、自分が走る時に、アル中の人を一緒に走らせていました。
嗜癖の危険な側面
ジョギングやランニングが
嗜癖行動になりやすいことは
よく知られています。
ストレス解消に始めたランニングや
健康作りのつもりで始めた運動によって
体を壊してしまう人たちは
実はたくさんいらっしゃいます。
ランニング嗜癖では、たとえば
健康ランナーとして有名になった人が
ランニング中に倒れて亡くなることが
過去に幾度か起きていますね。
サーフィンなどでも、
海から上がって車の中で休んでいて
そのまま亡くなっている
・・・というケースがあります。
皇居のランニングだとか
フルマラソンの大会への出場
24時間マラソンへの参加など
夢中になって走っていた人が
それから二十年くらいたって
「どうしてあんな事を夢中になってやっていたのか、いまから考えると、自分でもよく分からない」
・・・みたいなことをおっしゃいます。
いまから十年ほど前には
著名な雑誌の元編集長の男性が
仕事からの帰宅後、夜遅くに
競技用の自転車で走りに出て
自宅近くで倒れて亡くなっていたのが
小さな新聞記事になっていました。
著名な雑誌の元編集長だったので
記事として扱われましたが
死亡しないまでも
身体を壊す事例を含めると
このようなケースは
世間ではたくさん起きています。
俳優のダスティン・ホフマンが
ニューヨークで、
ランニング中に倒れて苦しんでいる人を
通りがかりに見つけて助けた
・・・というニュース記事を
ネットで読んだことがあります。
運動嗜癖の場合には
このように危険な側面があります。
ストレス行動の嗜癖化は
もちろん、ジョギングや健康行動に限ったものではありません。
たとえば、占い師にハマり込んでしまい
高価な壺や水晶などを買わされて
結局、数百万円を使ってしまった
・・・というお話を
お聞きしたことがあります。
女性に見られる食べ吐き行動も
その一つになります。
過食嘔吐をやめられるように
・・・とおっしゃって
カウンセンリグにお越しの方たちも
いらっしゃいます。
わたしの経験では
良くなってゆくことが多いように思います。
〝ストレス行動〟による悪循環
ストレス行動とは、本来は
抱えるストレスや心の葛藤などを
(一時的にでも)
解消することが目的のはず。
しかし、その行動の結果によっては
更なるストレスを抱えることになり
ストレスの悪循環になってゆく
・・・みたいなことは
案外に多いのではないでしょうか。
ここに記したことは
わたしたち誰にとっても
無縁ではないように思っています。
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