
このページでは
心療内科の元々の理念と成り立ちについて
解説しています。
「元々の・・・」と付けたのは、
創設された当時と現在とでは、
心療内科の姿が、大きく変わってしまったからです。
「心療内科がいいのか、
カウンセリングなのかで迷っている」
という方の参考となれたら幸いです。
心療内科の創設
『心療内科』は昭和38年(1963)に
九州大学病院で初めて創設されました。
「心療内科」という名称は
その時に考案されたものです。
それ以降、さまざまな大学病院で
心療内科が独自に設置されていきました。
しかし、心療内科という診療科目が
厚生省(当時)から正式に認可されたのは
1995年に起きた
阪神・淡路大震災がきっかけです。
正式に認可されるというのは、
病院の看板やホームページなどに
心療内科と公に掲載できる、という意味です。
震災で被害を受けた方たちに
さまざまな身体病が発病したことから、
厚生省も、ストレスと身体の病気との関係を
無視できなくなったのかも知れません。
著名な精神科医の中井久夫氏が
このように報告しています。
神戸の地震(阪神淡路大震災)では、クモ膜下出血、多発性胃潰瘍、心筋梗塞が見られた。
心筋梗塞は直後だけでなく、40日〜50日、3ヶ月、半年目にも増えた。
したがって負荷がなくなっても、数ヶ月後まで油断できない。
たとえば激務の後、休暇を取って旅行に出る場合にも、心筋梗塞が起こる場合がある。
中井 久夫 精神科医
心療内科の元々の理念と目的 :
心身医学との関係
上でも触れたように、
『心療内科』が日本で最初に創設されたのは
九州大学病院でした。
創設の中心にいたのが
池見酉次郎(ゆうじろう)氏です。
(1915〜1999年)
池見氏は「心身医学」の普及に尽力し、
国際心身医学会の会長も務めた人物です。
このことは、
心療内科と心身医学との密接なつながりを、物語ります。
心身医学と心療内科
心身医学は
正式名称を「精神身体医学」といい、
略して「心身医学」と呼んでいます。
心身医学とは、
心と身体のつながり(心身相関)を研究し、
実際の医療に役立てる医学のことです。
池見氏などが目指した心療内科の
元々の理念と目的は、
主に内科的な身体の病気を対象として、
心身医療としての対応が必要な患者さんを治療する部門というものでした。
ですので「内科」と付いています。
要するに、
「心身症」の患者さんを対象とするものです。
心身症は、しんしんしょう、と読みます。
心身症とは端的にいうと、
ストレスや心理的なものが要因となって、発症する身体の病気を指します。
身体の病気に心身症の多いことは
昔から知られていました。

その後の心療内科
(心身症とは) つまり精神的・心理的問題をまったくほんものの身体病として現すということであるから、患者は身体病の診察を受けることになる。
中井久夫 精神科医
「心身症」というのは
上の中井氏の説明にあるように
身体の病気として発症するものを指します。
ですので患者さんは、皆さん
内科などを受診し通院されます。
心療内科を受診する人は
現実には、いらっしゃいません。
しかも、症状だけを診ているのでは、
それが心身症かどうかさえ、分かりません。
さらには、
心療内科の土台となっていた心身医学も、
薬物治療が全盛になっていく中で
精神科医療の世界では省みられなくなり
認可後の心療内科は
創設時の目的や理念からは
すっかり変わっていくことになります。
メンタルを扱う科目で
精神科よりも受診や通院の敷居が低い
・・・というイメージが作られていき、
精神科医が独立開業する時に
「心療内科」を掲げるようになっていきます。
ちなみに、
精神科医が他の科目の医者ように
独立開業できるようになったのも、
最も大きな理由は
薬物治療が拡大していったからです。
ある時、女性のご相談者から
こんな話をお聞きしました。
メンタルクリニックを受診して、いま話したようなことを(診察の時に)少し話したら、ここでは不安を緩和する薬を出せるだけなので、そういうことは、ご主人と直接話し合ってください、と云われた。
むしろ良心的なお医者さん
・・・かも知れません。
カウンセリング的なものを期待しての受診
カウンセリングをしていると
時々、次のようなお話をお聴きします。
心療内科なのか、それともカウンセリングの方がいいのか、
よく分からずに迷っていたけど、
私の場合、薬で問題が解決するんだろうかと思って、
カウンセリングに申し込んだ。
皆さんのお話をうかがっていると、
じっくり話や悩みを聞いてもらえるような、
そんなイメージを抱いて
心療内科やメンタルクリニックを受診する方たちも、多いようです。
つまりカウンセリング的なものを期待して
受診されていることになります。
そのため時折
「がっかりしてしまって、一度行ったきりで
(通院を)やめてしまった」
そうおっしゃる方とも出会います。
この問題については、
井原 裕(ひろし)氏がこのように語っています。
今日の精神科医療は、社会の変化に対応した臨床を、提供できていないように思います。
患者さんは多様であり、
人それぞれに異なったものを必要としています。
それを捉えていくためには、精神療法的(カウンセリングと意味は同じ。医師は精神療法という言葉を好む)な視点が必要なのに、
残念なことに精神科医たちの多くは、患者を薬物治療の対象としか見ていないように思います。
井原 裕 精神科医
カテゴリー【心と身体】
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