

自覚症状と徴候(ちょうこう)
| 二つの症状について |
臨床と診断の観点からは、
「症状」には二つの種類があります。
その二つは、どちらを欠いても
病院やクリニック(医療)であれば
適切な治療には繋がりません。
その二つとは、
一つには
本人自身が感じ訴える「症状」。
これを「症状」・・・
正確には「自覚症状」と呼びます。
もう一つは、本人以外の他者・
医療であれば医者や看護師など
本人の様子や雰囲気・言動などから
感じ取ったり認知する「症状」。
こちらを
「徴候(ちょうこう)」と云います。
徴候のことを
「他覚症状」とも云います。
他覚症状とは、
「他者によって感じ取られる症状」
という意味です。
たとえば普段の生活の中でも、
「あなたは○○のように見える」
と人から云われて、
「自分はそんなんじゃない」
と憤慨する
・・・みたいなことがあります。
それは「自覚症状」と「徴候」の
日常版のようなものかも知れません。
この自覚症状(症状)と
徴候を一緒にして「症候」と云います。
精神病理学などで「症候学」と
云っているのは、このことです。

| 症状・徴候・状態像 |
そして、訴えられる自覚症状と
他者が感じとる徴候とを
併せて捉えることで、
医療であればその患者さんの病態を、
また、カウンセリングであれば
そのご相談者の状態を
理解するための
大切な手掛かりとなってゆきます。
これを「状態像」と呼びます。
ですので、
「症状/自覚症状」と「徴候」とは
どちらも欠くことの出来ない
大切なものになります。
| 内と外とで一つになる |
中安信夫氏(精神科医)は
このように述べています。
私は長い間大学病院におりまして、多くの研修医を指導してきましたが、研修医が行なう最大のミスは、患者の表出(外に表しているもの)は〝見えても見えず〟。
患者が語り訴える症状や体験は〝聞いても聞こえず〟で、徴候と症状を、把握できないことに起因する。
| カウンセリングでは |
念の為に申し上げるのは、
カウンセンリグと病院の診療とは
そもそも異なる、ということです。
目的とするものも違いますし、
面談・面接の方法論にしても、
ご相談者への関わり方なども
まったく違うものです。
そしてカウンセリングでは
「徴候」とか「状態像」という言葉も
ほとんど使われません。

カウンセリングで云うと
ご相談者がお話しをされたり、
語り訴えられるもの。
そして、ご一緒しながら
対話をしてゆく中で、
こちらが
自ずから感じられてくるもの。
これらのものを併せて
理解を深めてゆく
・・・ということに
変わりはありません。
ですので、
実際にお会いすることなく
オンラインやお手紙・メールだけで
関わってゆくことは、
片方が欠けた状態であることを、
よく自覚しておく必要があります。
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