
不安発作とは
「カウンセリング 森のこかげ」です。
この記事では
不安発作を理解いただくために
具体的な症例をあげながら説明しています。

急な動悸や胸苦しさ、
目眩や息苦しさなどから始まり、
このまま死んでしまうのではないか
という不安に襲われる・・・
これが身体の病気や薬物が原因ではなく、
心理的要因が元になっている反応で、
医学的な表現では、
「心因(しんいん)性」と思われるもの。
これを『不安発作』と呼んでいます。
あわせて、
カウンセリングにも触れています。
何故というと
不安発作が一過性で終わらず、
二度・三度と繰り返される場合には
「これまでの出来事や思いを、ご一緒に整理しながら、改めて考えていく」というアプローチが、とても大切だからです。

著名人の例:宮本 輝氏の場合
まず宮本 輝(てる)氏を取り上げてみます。
小説家の宮本 輝氏が
会社勤めをしていた時代に
不安発作に襲われた経験を語っています。

最初は、休みの日に友達と競馬に出かける途中に発症したんです。
電車の中で、めまいと動悸が激しくなって、地面の底に沈んで行くような感覚に襲われたんです。
それ以降、電車に乗っていると、同じ症状が頻繁に起きるようになったんです。そのうちに、電車に乗ると考えただけで、心臓がドキドキするようになって「このまま死んでしまうかも」という恐怖心すら覚えるようになっていきました。
「もう会社に通うのは無理、サラリーマンは向いてないんじゃないか」と思い始めたんです。
(NHK知るを楽しむ 2008年1月)
上の談話にあるように
宮本氏の場合には不安発作が繰り返されて
『不安神経症』の状態へと
病像が進んだことがわかります。
『不安神経症』は現在では
『パニック障害』という診断名ですが、
治療者の間では不安神経症は、今も使われています。
不安発作は少なくない
『不安発作』という言葉を
ご存じない方が多いかも知れません。
しかし不安発作のケースは
けっして珍しいものではありません。
急性の不安発作の例は少なくない。内科外来や救急外来などでは、しばしば見られる。
高橋 徹 精神科医
高橋 徹(とおる)氏が語るように、
誰にも起こり得るものです。

急性の不安発作(最初の発作)の特徴
ここでは不安発作の「はじまり」について見ていきます。
急性の不安発作の多くは
宮本輝氏がそうだったように
ご本人にとっては、
なんの前触れも、思い当たる理由もなく
突然襲ってくるように感じられます。
高橋 徹氏が
不安発作の特徴について語っています。
高橋 徹 精神科医
それは急性(急に生じる)の状態である。
ごく短い前兆を自覚することもある。たとえば、頭が急に軽く感じる、頭がクラクラする感覚がある、頭が熱くなってくる、などと表現されることがある。
それに続いて、自律神経症状を主とした自覚症状があらわれてくる。
動悸、胸苦しさ、頭や体の震え、手足のしびれ感、血が引いてゆく感覚、めまい、悪寒、冷や汗など。
そして、このまま死んでしまうのじゃないか、などの恐怖感が襲ってくる。
実際の症例報告から
デパートへ買い物に行き店内を歩いていると、急に貧血を起こしたようになり、頭がクラクラして、頭から血が引いていくような感じが何度もして、胸が苦しくなって激しい不安に襲われた。
今にも死ぬのではないかと恐ろしかったが、体がヘナヘナして動けなかった。
十分ぐらいしてから、店員に頼んでタクシー乗り場までついて来てもらい、タクシーで近くの病院へ行った。
診察を受ける頃には、気分も良くなっていた。医師は、大丈夫心配はいらないといって、力づけてくれた。
『不安神経症』 高橋徹著
六・七年前から年に一・二度、入浴時や激しく動いたとき、心的緊張などの時に、発作的に動悸のすることがあった。
某年七月、機械を修理するため、高い台に飛び乗った途端に動悸が起こった。
これまでならすぐ止まる動悸が、なかなか止まらないばかりか、そのうち息苦しくなり、手足が痺れ、頭がぼんやりして意識が遠のくような感覚がした。
患者は死への不安に襲われ、工場内の診療所へ運んでもらった。
『続・心療内科』 池見酉次郎著
こうした不安発作の多くは
ごく軽い場合には15〜20分程度、
長くても30から40分くらい安静にしていると、自然に落ち着いていきます。

異常はないと云われる
突然こうした発作に襲われると
誰もが「重い病気の前触れではないか」
と不安になります。
そしてクリニックや病院を受診して
検査をしますが、不安発作の場合には
「重大な病気につながるような異常は特に見当たらない」と告げられます。
(医者や看護師に)
「神経症です、と云われた」
という人もいらっしゃいます。
心臓に異常がない場合でも、
精神的な要因によって動悸が生じることは、決して珍しくありません。
最近では特に、こうした不安発作によって
病院や救急外来を受診するというケースが増えているようです。
内科医の菅 正明氏が
次のように語っています。
菅 正明 (九大医学部第一内科・当時)
内科を訪れる神経症の患者さんの多くは、なんらかの身体愁訴(しんたいしゅうそ・身体的不調の訴え)を持つことである。
しかもその身体的自覚症状のために背後にある心理的要因に気づかず、内科的治療にもかかわらず、一向に治る傾向がなく、症状や訴えはますます慢性化してくる。

不安発作から不安神経症へ
精神科医の高橋 徹氏が指摘します。
不安神経症の症例の大部分は、急性の不安発作のかたちをとった不安症状からはじまっている。
高橋 徹
特に注意すべきは
宮本輝氏のケースのように
その時だけの一過性では終わらずに
短期間に不安発作が繰り返される。
あるいは
急性の不安発作以降に
漠然とした身体の不調感が続く、場合です。
そのようなケースでは
不安神経症へと進行する可能性が高いことが分かっています。
下の症例の方々は
不安神経症の状態へ進んでいったケースです。
実際の症例報告から
仕事で車を運転中に突然、動悸、発汗、呼吸困難、からだの震えが生じて、死の恐怖に襲われた。
車を止めて休んでいると、症状は消失したが、頭の重さや倦怠感がほぼ毎日続いた。
『精神科治療学』 2002年11月号
職場で急に息苦しくなり、動悸がして「今にも死ぬのではないか」という恐怖におそわれ、落ち着かなくなった。
その日は早退して近くの内科を受診した。検査の結果、重大な病気の前兆ではないと云われ安心する。
しかし数日後に、出勤途上で再び発作を起こし、それ以来なんとなく落ち着かない気分が続き、
頭がフラッとしたり息苦しくなるなどの状態が、繰り返し起こるようになって仕事も休みがちになる。
『不安神経症』 高橋徹著
35歳のとき、初めて急性不安発作を起こして発病した。発作は、めまいを前兆とし、動悸、胸苦しさ、息苦しさが激しい不安感とともに生じてきた。
数ヶ月後、急性不安発作の再発はみられなくなったが、動悸、息苦しさ、外を歩いといると地面が沈むような動揺感に悩まされるようになる。
3カ所の耳鼻科で、めまい等を検査したが、自覚症状以外には異常は認められなかった。
『不安神経症』 高橋徹著
不安神経症の影響
不安神経症にまで進んでしまうと
たとえば
日常生活が不自由になったり、
仕事が出来なくなってしまったり、など
生活にとても大きな影響をもたらします。
そのため、早めの対処が大切になります。
高橋医師は次のように述べています。
高橋 徹 精神科医
急性の不安発作の例は少なくない。
内科外来や救急外来などでは、しばしば見られるが、多くは一過性で過ぎてしまう。
しかし中には、その後漠然とした不安感や体の不調感を抱えるようになったり、ほどなく再度不安発作を起こして、繰り返してゆくことがある。
そうしたケースでは、様々な不安症状をあらわすようになり、不安神経症になってしまうケースがある。不安発作の発症初期に、余り日をおかずに再び不安発作が起きているケースでは、予後(よご)が良くないことが確かめられた。

カウンセリングと対話療法
カウンセリングは別名
『対話療法』とも云われます。
筆者はカウンセラーとして
長年カウンセリングを行なっていますが
ご相談者の方から・・・
「こうした場で話をするって大切なんですね」
・・・そう云われることがあります
ご相談者の中には
「こういうふうに話しをしていくと、
いろいろな事が分かってくるものですね」
そう語る方もいらっしゃいます。
(急性の不安発作から始まったものが)自律神経失調症だと医師から言われて、十年間薬をもらって飲み続けている。
ご相談者のお話
そうした方とも実際にお会いしています。
臨床・治療について故・河野友信氏は
次のように語っています。
河野友信 精神科医・心身医療
時代状況を反映して、ストレス関連の病態が増えていますが、治療は必ずしもうまくいっているとは言えません。
臨床経験があれば、容易に理解できることですが、マニュアル的な治療では殆どうまくいきません。
個別的で複雑系である人間の内面は、マニュアル的治療ではうまく扱えないからです。
心がかかわる事柄・問題でしたら
どのようなものでも、
カウンセリングがとても大切な役割を持っています。
カウンセリングは「試しに一度」でも、
もちろん大丈夫です。
お気軽にお問い合わせください。
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