コーピングとしての症状


コーピング・ストレス対処行動

コーピングの説明を読んでみると
( coping )

ストレスに対する意図的な対処行動
・・・という説明がされています。

つまりそれは

イライラするから
ドライブで気晴らしをする、
飲んで気分を変える。

仕事で疲れたから
好きな甘い物を食べて、ひと息入れる。

・・・というような事になります。



しかしそれでは
「教科書的な説明」の印象です。

わたしたちは
ホメオスタシス(生体の平常性)が
掻き乱されたり
維持できなくなるような
ストレス状態になると

それを何らかの形で
排出する必要に迫られます。

排出すためには
三つの系統が存在します。

精神的なものとして。
行動として。
身体に生じるものとして。

この三つの系統で
排出することになります。

つまり、コーピングというものを
この三つの面で考える必要があります。

そして
この三つの現れを総称して
ストレス症状」と呼んでいます。

| 症状の意味とは |

そこで、まず
「症状」というものの意味から
コーピングの概念を
捉え直してみることが必要かも知れません。

木村 敏氏(精神科医・精神病理学)が
『臨床哲学講義』の中で語っています。

症状そのものは病気ではありません。
身体の症状の場合でも、生体が自己防衛のために、そういう症状を出しているわけです。
だから、すぐに解熱剤や頭痛薬で、安易に症状を取り除くことは、考えものなのです。
「症状」は病気ではありません。
本当は病気(症状をもたらしている元にあるもの)を治さなくてはいけないので、症状はむしろ、体が病気に反応して出しているものなのです。
精神的なものも同じです。

中井久夫氏(精神科医)も
症状について
原因というより結果である
・・・そう語っています。

こうした意味からも

〝症状〟として現れ出ているものは、
すべてコーピングとしての意味が
あるかも知れない。

・・・そう考えてみることが
やはり大切になるようです。



たとえばリストカットも
ただただ痛いだけ、であれば
繰り返し行なわれるようなことは
ないかも知れません。

そこには、
ただ痛いだけではない
精神的・生理的な作用が存在している。

・・・そう考えたほうが
むしろ自然です。

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