崩れる山・死んだ森林

生き物のいない山々


2013年 4月に記す

よく旅番組などで、地方の山々を眺めて

「自然が残っていますね」
「自然がいっぱいですね」
などと云いますが、

実は、生き物の棲まない、
生き物が棲めない、
死んだような森や山を

眺めているのかも知れません。


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( 自然林の崩壊 高山 宏 著 )

落葉松(からまつ)の植林というのは、要するに経済林である。
何十年か育てて、建築用の木材として伐採するものだ。

建築材としては、まっすぐに伸びる木がいい。
楢(なら)やブナなどの広葉樹は役立たずで、杉や檜や落葉松などの針葉樹が、建築材には向いている。

そういう植林の代表が、京都郊外の北山杉だ。手入れに手入れを重ね、建築材として値打ちある木を育てる。
日本列島各地に杉の植林が見られるのは、杉が一番多く使われる建築材だからだ。

植林の規模が急激に大きくなってゆくのは、太平洋戦争後のことだ。
『拡大造林計画』という名で、広葉樹の多い自然林をみな伐採し、山をいったん丸裸にして、そのあとに杉や檜や落葉松を植えてきた。

戦後の『大面積伐採方式拡大造林』では、チェーソーやブルトーザーを使っての機械化が採用され、みるみる山を裸にしていった。

ある時、佐賀の山地を案内してもらったことがある。
山々を見下ろす場所に、『拡大造林計画達成』と記された、大きな石碑が建ててあった。
そこから見える限りの広大な山地のすべてが、杉の植林になっていた。

「なんにもならぬ醜の木(ブナなどの広葉樹のこと)」を切り払って、全域くまなく経済林に造りかえた、その大事業の達成を祝って建てられた石碑だった。
だが、その山々には、もう虫も鳥もすまない。

杉という常緑針葉樹一種類だけになった山では、林内は暗く、野草や花はほとんど見られない。花に寄る虫の姿もない。虫も花もない森に、鳥や獣の好む木の実もない。
針葉樹の落ち葉は腐食が遅く、地中の虫も棲みにくい。生き物がことごとく少ない山になってしまった。

それでも、育った杉の木が売れてお金になるならまだ良かったが、拡大造林計画のあと、社会情勢や経済状況が変わって、植林の山はほとんど無用の長物になっていった。

放置された人工林は弱い。
山の中に入ってみるといい、行けども行けども見えるのは茶色く枯れた葉のわびしい色ばかりだ。樹冠部分だけは緑だが、葉の大半が枯れてしまっている。
紀州の山々もそうだった。

あちらでもこちらでも、息たえだえの杉林、檜林、落葉松林を見ることができる。日本列島の三分の二は山だが、その半分近くが、人工林にされてしまった。



カテゴリーひとり言・随想



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