好きな本の好きな一節



水村美苗 『日本語が亡びるとき』
筑摩書房


認識というものは、しばしば途方もなく遅れて訪れる。

きっかけとなった出来事や、会話、あるいは光景などから、何日、何年・・・場合によっては何十年もたってから、ようやく人の心を訪れる。

人には知らないうちに植えつけられた思いこみ、というものがあり、それが〝真実〟を見るのを、拒むからである。
人は思いこみによって、考えることを停止する。

たとえ〝真理〟を垣間見る機会を与えられても、思いこみによって見えない。
しかも、なかなかその思いこみを捨てられない。

〝真理〟というものは、時が熟し、その思いこみをようやく捨てることができたとき、はじめてその姿・・・
〝真理〟のみが持ちうる、単純で、無理も矛盾もない、美しくもあれば冷酷でもある、その姿を現すのである。

そして、そのとき人は、自分がほんとうは常にその〝真理〟を知っていたことさえも、知るのである。

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柄谷行人 『書評集』から
読書人


大災害が起きると、秩序の不在によって暴動、略奪、レイプなどが生じるという見方が一般的である。しかし、実際には、災害のあと、被害者の間にすぐに相互扶助的な共同体が形成される。
著者はその例を、サンフランシスコ大地震をはじめとする幾つかの災害ケースに見いだしている。

これは主観的な印象ではない。
災害学者チャールズ・フリッツが立証したことであり、専門家の間では承認されている。

にもかかわらず、国家の災害対策やメディアの関係者はこれを無視する。各種パニック映画は今も、災害がおそるべき無法状態を生み出すという通念を、繰り返し強化している。
むしろこのような通念こそが、災害による被害を倍加させているのだ。

サンフランシスコ大地震でも、死者のかなりの部分は、暴動を恐れた軍や警察の介入による火災や取り締まりによってもたらされた。
同じことがハリケーンによるニューオリンズの洪水においても起こった。
略奪とレイプが起こっているという噂がとびかい、被害者の黒人が軍、警察、自警団によって閉じ込められて大量に殺された。


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