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| はじめに |
赤ちゃんや幼い子どもは
親御さんが抱える感情を共有し
受け継いでゆくことがあります。
顔や形が似るだけでなく
母親あるいは父親が抱える感情や情動も
受け継いでゆくことがあるのです。
情動とは、感情のより強いもので、自律神経を通して心身の反応を瞬時に引き起こします。
アンナの日記から
たとえば
アンナ・フロイトという女性の日記に
次のような観察が書かれているのを
読んだことがあります。
![アンナ・フロイトの写真](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjbtBxPg1Ct_l7y6xOgVpukPi-u33xZKamduBQtd3i5A1rvucndVhVdD27DYsYRbbkqpNXd9Jide9NwDffas6pHkNgI-qLBgZ0ZouTmyZNjE-YmUxBguUVt5gDg0zP4fVEw93uRm4cYlDo/s0/ANN+140x135.jpg)
アンナは、ロンドンで孤児院をつくり
親のいない子どもたちを育てていました。
第二次大戦、ドイツのミサイルが
ロンドンの市街地を襲っていた頃です。
警報が響き渡る中
地下壕に逃げ込んでくる人々の中には
お母さんに抱かれた赤ちゃん
そして、幼い子どもたちもいます。
お母さんの中には
不安そうにひどく怯え、恐怖で混乱し
取り乱している人もいます。
そうした母親と一緒の子ども・赤ちゃんは
皆とてもおびえた表情で、不安げで
泣いたり震えたりしています。
その一方で、中には
普段とあまり変わらない様子の
お母さんもいます。
そうしたお母さんと一緒の子どもたちが
どのような様子かというと
地下壕の中でも
おびえた表情もみせずに
遊んだりしている、と云うのです。
こうしたことに気づいたアンナは
子どもたちを避難させる時に
自分やスタッフが
子どもたちを怯えさせたりしないよう
気を配っていることが
日記に書いてありました。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgsvos2Iax4NN6He4qKXJpsLiU04SEfwEZxqeW03soGJHnQg_-b4sPhBNCChi3Hoy0_VV7lf9ye28UbGtjUkIwDAjvzoSoEAj0mkDLvfA6RmJWf1DsiEukKinjKWmtmeCfsuNz7_yhj8Y4/s0/oneby+160x104.gif)
情動共有と連鎖
アンナの観察はひとつの例ですが
つまり、赤ちゃんや子どもにとっては
空襲や避難という状況そのもの
というよりも
その場の親から表出される
不安や恐怖などの情動に
一体になって強く反応している
・・・と想像できそうです。
子ども(赤ちゃん)とお母さんのとの間では
強い心の引力が働いているのです。
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| スズメの赤ちゃん |
たとえば、
雀の赤ちゃんは、最初から
人間に怯えているわけではありません。
観察すればすぐに分かります。
親雀が警戒して逃げるので、
それを真似ていくなかで、人間に怯える習性を身に付けていくわけです。
人間の親子は雀よりも
もっと複雑な内的交流を行なっています。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgdm_DkL5__TTsLMzqA6ScGC2GU-EfzhPNHvixrDdU3JqrIdZuScslLskc9-T3o2rmsbGPDNy7GzItViRkuD9lsBZI8s7OaxvbzgespjLXEgUJ6zGcopIP9Ga-Jr-JbiwH36VnOdqS1vo9k3LpjiBF06XFI7QDAp_Ntqy-cO33pMEio3T10p0KngpkJ/s1600/istockphoto-92%20-110x97.jpg)
わたしたちは、大人になっても
親から受け継いだ情動を内心に抱えて
生きていることがあります。
わたしたちは、
〝親と子〟という関係の
とても長い流れの中で
いま生きているし
これからも生きていく。
ですから、そう云う意味では
もしも、ホントウの「自分探し」
というものがあるとしたら
自分の親のことを知ることから
始まるのかもしれません。
余談になりますが、
この「自分探し」と云う言葉は
川島雄三監督の1950年代の映画の中で
ヒロインが既に使っています。
カテゴリー【始まりの物語】