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カウンセリングを続ける中で
自分の何かが変わり始めたとき、
私たちの心には複雑な感情が芽生えることがあります。
たとえば
このまま進んでいくのが不安になったり、
〝気づくこと〟に戸惑う気持ちになったり、
というように。
この記事では
そうした変わってゆくプロセスで生まれる
複雑で矛盾した気持ちや感情に
どのような大切な意味があるのかを
これまでのカウンセリング経験に基づいて、
お伝えしています。
それを『カウンセリングの物語』と
名付けました。

カウンセリングでの物語 :
変わってゆく時に訪れるもの
ここでは、
カウンセリングを続けてゆく中で
ご相談者の心に生まれて来るかも知れない
ひとつの心の動き
・・・について触れています。
ただし、ここで触れている心の動きは
どなたにも起きてくるもの
・・・というわけではありません。
元々のご相談の内容にもよりますし
ご相談者の方が求めているもの
さらには
カウンセリングへの関わり方によって
そこで生まれてくるものも
当然変わってくるからです。

自分の気持ちに出会う旅
ご相談者の方と何回か面談を重ねる中で
次のようなお話を
お聴きすることがあります。
これ以上進みたくない。このままの自分でいたいって思うんです。
どっちが本当の自分なのか、分からなくなっている。
こうして(カウンセンリグで)考えてゆくことで、楽になるかも知れないし、変わるきっかけになるかも知れない。
そう思う自分もいれば、次の日には、なんだか進みたくない気持ちになったりして。行ったり来たりしている自分がいます。
自分は本当に、良くなりたい立ち直りたいと思っているんだろうかって考えると、やっぱり心の底では、今のままでいたいと思っているような気がします。
もうこれ以上良くなりたくない。
お読みになって意外に思われるでしょうか?
しかし、相手の人の心に添うて
一緒に考えていきさえすれば
少しも意外な言葉ではありません。

矛盾した感情の訪れ
次のような気持ちや心境を
語ってくださる方も、いらっしゃいます。
なんだか楽になった気がします。でも楽になるっていうことが、「こうあるべき・こうありたい」っていう自分の理想を諦めること、投げちゃうことのように思えて、すごく虚しくもなるんです。
これまでと違う対応をすると、なんだか自分じゃなくなったように感じがする時があって。 でも、また以前と同じ対応をしてしまう時もあって・・・これでいいような、悪いような。
うまく言えないんですけど、迷っているような、すっきりしているような、正反対の感覚を感じています。
多様なカウンセリング・プロセス
もちろん、すべての方が
このような気持ちや心境を
意識されるわけではありません。
たとえば
気づいたらいつの間にか・・・
「良くなっていた
」
「あんなに悩んでいたことなのに、考えなくなっていた
」
そうしたカウンセリングのプロセスを辿る方たちも、普通にいらっしゃいます。
たとえば、
このようなお話もお聴きしています。
変わるっていうのは、ネットで云われているのとは違うんですね。
何かあるといつも考えていたことなのに、最近では殆ど思い出さなくなったのが不思議です。

変わることへの自然な反応
ところで
上に記したような気持ちや心境を
語ってくださった方たちが
そこでカウンセリングをやめてしまったか、というと
皆さんそうではありません。
何故なら
上の記した気持ちや心境の多くは
抱えていた問題や悩みをひとつ乗り越えて
またもう一歩、歩き出そうとした時に
訪れる質のものだからです。

意識の深くで始まってゆくもの
こうした気持ちは
夏の季節を前にして木の芽が芽吹くように
とても自然な気持ちだと思います。
こうした時期は、その人の中で
大切な〝なにか〟が育くまれている時です。
卵を抱いている鳥は
じっと動かなくなるものです。
たとえば
故・下坂幸三(しもさか・こうぞう)氏は
このように語っています。
下坂幸三 精神科医・心理療法家
症状が良くなってくると、だんだん患者さんは、それをためらうようになります。
なかなかそれ以上進まない時期が来るようになります。
フロイトはそれでいいんだと言いました。無理に治そうとしなくていいよ。
症状を温存しながら、気持ちのありようを、少しずつ消化していくことが大事だよ、と 。
ご相談者ご自身の中に、その時々に生まれる気持ちを大事にしながら
カウンセリングはおこなわれます。
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