「整理する」が意味すること

カウンセリングにおける「整理する」

| はじめに |

カウンセリングをお伝えする際に
「整理する」という言葉を
わたしはよく使います。

「整理ながらご一緒に考えてゆく」
・・・というように。

ですので〝整理する〟という言葉に
どのような意味を託しているのかを
お伝えしてみたいと思います。

ご一緒に「整理してゆくため」の
最も大切な前提となるのは

共有しようと努めること。
そして、それが出来うる限り
クライエント・センターの場で行われること。

この二つが、最も大切なものになります。

|見えないものを共有する |

ご存じのように、
カウンセリングは解剖学などとは違い
目には見えず・
手で触れることの出来ないものを

ご相談者とカウンセラーとが
言葉・対話を道しるべにして

「共有しようと努める」ことが
最も大切な基盤となります。

言い方を換えると、
それが「カウンセリング」であることの
根本態度・根本行為としてあります。

| 傾聴の意味 |

たとえば
「傾聴」と云われている意識・行為は

そのために必要不可欠な
行為のひとつです。

ただ黙って聴いていることが
「傾聴」ではありません。

故・下坂幸三氏が、それを
「あたかも、なぞるように聴いてゆく」
という言葉で表現しているように

臨床家によって
様々な言葉で表現が試みられています。

こうしたことが存在しない関係は
形がどんなに似ていようとも
カウンセリングとは別のもの

・・・と云えるでしょう。

| ブロッキング |

自分の気持ちで人の話を聴いていると
相手の話・相手の言葉を、

そして、言葉の奥にある
云わんとしていることを聴き取れない
(認知できない)状態が生まれます。

〝ブロッキング現象〟と云います。

それは
自分(聴いている側)の気持ちや感情で
相手の話や言葉を聞いている事ですし、

そのような姿が
現実のコミュニケーションの殆どです。

「傾聴」という言葉こそ使いませんが
フロイトは、同じ意味内容のことを
『治療者への助言』の中で述べています。

(自分の気持ちや感情から、相手の話に対して)注意を向けたとたん、特定の部分にひどくこだわり、他の部分には意識が向かなくなる。
このような意図的な注意の向け方は、治療者
(聴いている側)が予め持っているもの(先入見や恣意的な志向・思い込み等)だとか、治療者自身が抱えているもの、に従った選択となる。

しかし、このようなことこそ、してはならないことなのである。
このような注意の向け方をしていると、すでに分かっていること以外のことを、決して見つけ出すことはできない、という危険に陥る。

フロイト『治療者への助言』


そして、
共有しようと務めてゆくための場
・・・としてあるためには

ご相談される方の〝心のペース〟が
尊重される場であること。

そのように云われています。

カウンセリングの世界では、
それを「クライエント・センター
という言葉で表現しています。


| クライエント・センターとは |

〝クライエント・センター〟とは

カウンセリングの世界では
神様的な存在である
カール・ロジャースの言葉です。

クライエント=ご相談される方の
心のペースが中心であること・
センターであること。

センターであるよう努めること。

カウンセラーやセラピストが自分中心になって、したいようにやっていく、押し付けてゆくものではありません

・・・という意味の言葉です。

     ●●●

クライエント・センターであることが
尊重される場の中で
お話し(対話)されてゆくとき

ご相談者の頭の中に
無造作に置かれていた事だとか

心の中に、ただ散らばっていたもの

深いところで感じていたけれど
自覚がされずにいたこと・・・などが

整理されてゆくことが
起きてきます。

それはクライエント・センターである場
だからこそ
現れてくるものだと思います。

そしてカウンセラーは
クライエント・センターの場であるよう
できる限り配慮し努めながら

ご相談される方の気持ちや頭の中が
少しずつ整理整頓されてゆくよう
お手伝いすることになります。


白いキャンバスに、言葉で
もう一度、絵を描き直してゆく・・・

そのための対話を通してのお手伝いは
カウンセラーの大切な役目となります。

しかし、これらのことは
中井久夫氏が
面接の技術は、長い修練と工夫を経てしか、身に付けることができない。

・・・と語っているように
誰であろうと、一朝一夕で
身に付けられるものではないものです。

さらに実際のカウンセリングでは
一回一回がすべて違うので
様々なことが起こり得ますし、

臨機応変な対応が必要となりますが

上に記したことを、
整理する、という言葉に託しています。

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