「気分の波」のある体質をご存じですか?

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次のようなことを
感じることはありませんか?

気分が落ち込むことがあって
つらくて苦しい。

あるいは「気分に波がある」と思う。

それは、もしかすると
体質によるものかも知れません。

この記事では
カウンセリングでの経験を通して
この体質を持つかたにとって大切なことを、
具体的にお伝えしています。

特に大切になるのは
ご自分自身の〝気分の波〟というものを
理解し感じ取れるようになる
ことです。

それによって、「気分の波に翻弄されていた自分」というものを、
少しずつ変えていくことができるからです。

最後までお読みいただいて
ご一緒に考えていけたら幸いです。

体質とは持って生まれているもの

まずは、『体質としての気分の波』を知ることが、とても大切です。

〝体質・気質〟というのは
後天的な性格とは違って、
生まれた時にはすで
その人(子)の内にるものを云います。
持って生まれているものを指します。

体質・気質は人によって様々ですが
その中に「気分の波のある体質」と呼ばれるものがあります。

ご相談者の中には
「自分の気分の上下がなんなのか、いろいろ考えてもよく分からなかった」
「持って生まれた体質からくるものと知って、納得できた」
そうおっしゃる方もいます。

体質としての気分の波とは

ここでいう『気分の波』とは、
日常の中で、何かのきっかけで・・・
気持ちや気分が落ち込んで
心身が、つらく苦しい状態になることがある

その逆に〝気分の波〟が高く動くと
高揚感(こうようかん)が働いて
拍車はくしゃがかかって止まらなくなる。
拍車がかかってやり過ぎてしまう

・・・このようなことが生じます。


もちろん、同じ体質であっても
その現れ方や程度は、人によって違いがあります。

たとえば
次のように打ち明けてくださる方が、いらっしゃいます。

掲載を了解していただいたことを
感謝申し上げます。

気分に波のある体質かどうか、自分ではよく分からないです。
職場でハイテンションだけれど
家に帰って一人になると落ち込んで
、繰り返し職場のベランダから飛び降りるイメージが出てくる、ということはよくあります。
あと先生が言っていた「やり過ぎてしまう」というのは、とてもよく分かります。
たとえば私が「面白キャラ」として何かをしたことで、職場の人たちが喜んだとして、その時に私の中に、あらががたいうれしい気持ちが湧いてきて、もっともっと、と自分を駆り立ててしまうことは、あると思います。
そして、後からひどく後悔して落ち込んだりして・・・。
自分がその体質かどうかは、まだ分からずにいます。
ただ確実に言えるのは、私の母は恐ろしく気分の波がある人だ、ということです。
私が小さいころ、ふいに不機嫌ふきげんになったり落ち込んだりして、私は母の機嫌がよくなるまで一緒に落ち込んで、顔色をうかがっていました。

カウンセリングを通してご一緒に理解できたことは、
この方にとって、
嬉しい気持ちが湧いてくると(止まらなくなっていく)というのは、
体質だけでなく
ひとつの心のパターンとして
お持ちのものだった、ということでした。


理解することで変わってゆく

カウンセリングの中で
次のようなお話をうかがうこともあります。

自分で考えても、コレといった理由や原因がよく分からず、気持ちが落ち込んで、家から出られなくなることが、これまでもあった

それを繰り返したくないけれど
「自分で考えているだけでは、よくわからないので」と、カウンセリングに足を運ばれます。

「理由や原因がイマイチよく分からない」
という場合もあれば
何かきっかけのようなことがある、
という場合もあります。

しかし、そのいずれの場合にも
根底には「体質」が関わっていることが少なくありません。

ご自分が持つ『気分の波』というものを
ご一緒に考え理解してゆくことで
変えていくことができます。

つらい気分の落ち込みとは

この体質の人に生じる
〝気分の落ち込み〟は多くの場合
専門用語で
抑 (よく)うつ気分』というものです。

そして抑うつ気分とは
ただ気持ちが落ち込む・元気が出ない、というものではありません。

心身がつらく苦しい状態のものです。

「ダウンの時期」と表現する人もいます。

不安と後悔の堂々めぐり

気分が落ち込んだ状態になると
後悔や不安がひどく湧いてきて
自分のことを責めたり
つらい堂々めぐりにおちいっていきます。

気分が低下していくと・・・

過去や将来について、ちょっとした不安が浮かぶと、それがグルグル連鎖反応を起こして、苦しい悪循環の思考に入ってしまう
ご相談者の言葉

・・・ということが起こりがちです。

朝起きた時に
こうした〝気分の落ち込み〟に苦しめられる、という方がいらっしゃいます。

たとえば
高校生や大学生から
このような訴えを聴くことがあります。

友だちといるときは、明るく元気に振る舞って、みんなから悩みがない人みたいに見られてるけど、一人になると悲しくなって、気持ちが落ち込んで、なにもやる気が起きなくなる。
テレビを見てても、なんでもないところで涙が出てくることがある。自分を責めたり、死んだら楽になるのかな、みたいに考えてしまう時がある。

これらの訴えからは
深い抑うつ気分がみてとれます。

ちなみに抑うつ気分での
「消えてしまいたい」
「死んだら楽になるのかな」という思いは
うつ病で生じる『希死念慮きしねんりょ』とは異なり、
この苦しさから逃れたいという思いのことです。


気分の高い動きと高揚感

気分が落ち込むことがある一方で
日常の中で何かをきっかけとして
気分が高く動いて〝 高揚感〟が生じる場面があります。

気分が高く動いてゆくと

高揚感と云うと
「ハイテンションで、楽しくなってワ〜ってなっていくことですか?」
・・・そうかれることがあります。

しかし、そのようなイメージでは
ここで云う「気分の高い動き」の現れを
うまく理解できないことになります。


気分が高く動くと、
本人の意識(気持ちや感情)が一体になって反応していきます

つまり、感情や行動の一瞬前に、実は〝気分の波〟の動きが生じているのです。

そのため、自分の(本人の)気持ちや感情だけを見ていても
気分の動きは把握できません。

そして高揚こうよう感の中で
・拍車がかかって止まらなくなる。
・拍車がかかってやり過ぎてしまう。

…こういったことが生じます。

完璧主義と間違えられる

仕事の場などでは
拍車がかかって止まらなくなる動きが
「完璧主義」と受け取られているケースがあります。

しかし、これは〝主義〟ではなく
体質からくる動きを意味しています。

パートナーとトラブルになるケース

たとえば普段は
「気配りのできる明るい人」
「場を盛り上げるのが上手で楽しい人」
と信頼されている方が
パートナーから 「もうやらないで欲しい」と言われている行動を
高揚感の衝動しょうどうによって繰り返してしまい、トラブルになるケースもあります。

「どうしてしたのか」と
パートナーから問われても、
「自分でもよく分からない」としか答えられません。

自覚がされにくい高揚感

ご本人にとっては
気分の落ち込みの時がつらいので、
高揚感が働いている時というのは
苦痛や苦しさを感じるものではない為に
ほとんど意識されずにいます。

しかし、実際の人生の中で
せっかくの機会をダメにしてしまったり
人との関係が壊れることが起きるのは
むしろ、高揚感の状態が関係しています。

そして、ご一緒にお話しをしていく中で

先生が最初に云っていた「拍車がかかって止まらなくなる」という感覚が、自分でも分かるようになってきました。
ご相談者の言葉

そうおっしゃる方は少なくありません。

理解し感じ取れるようになることで
体質としての気分の波はなくならなくても、
「気分の波に翻弄されていた自分」を
少しずつ、変えていくことができます。

それによって
いろいろなことに変化が生まれます。

高揚感の後の気分の低下

高揚感が働いていた後に
気分の低下が生じる、ということがあります。

次のようなお話を
お聴きすることがあります。

掲載は了解を得たものです。

仕事・アルバイト等の面接に行くと
面接担当者との間で話が盛り上がって
「ぜひ、明日からすぐに来て欲しい」と云われることも多いけど
帰ってから
不安や後悔がひどく迫ってきて
その日のうちに断りの電話を入れる
・・・ということを、繰り返してしまう。

ご本人は自覚できずにいましたが、
上がった後の気分の低下』によるものが
つよく影響しているエピソードです。

この体質にみられる資質

この体質を持つ人たちには
人をきつける魅力をもつかたが多いと思います。

この体質が
クリエイティブな創造性として
発揮される例も珍しくありません。

たとえば
舞台俳優・演出家として
特異な才能を発揮している男性がいます。

『こころの綾』を感じとる感性

この体質の人が持つ資質を
神田橋條治氏が、こう述べています。

(この体質の人は)たんに気分の波があるだけでなく、感性や感情が行動に直結しやすく、秘めることが不得意です。
その一方で、言葉では表現できない〝こころの綾(あや)〟を感知する能力があり、人と接する職業などで成功することが多い。
神田橋條治(じょうじ) 精神科医



この体質の人とは、多くの人が
「初対面の時から、打ちとけた関係ができやすい」ことが、言われています。

この能力ゆえに
職場や仕事などでは
コミュニケーション能力が高い、と評価されたりしますが
ご自分では、むしろ
苦手だと思っている場合があります。

コミュニケーション能力があるとか、初対面の人とでも上手に会話ができてすごい、とか云われるけど、自分は精一杯やっているので、むしろ苦手だと思っているんです
ご相談者の言葉

重役の秘書として成功している女性。

「お客様アンケート」では
常に一番評判がいいという人がいます。

臨機応変さにけていることと
〝こころの綾〟への感性ゆえに
接客業とかそれ以外でも、
多くの人を惹きつけている人の中には
この体質の人が多いように思います。


「でも、誰にでも気分の波があるのでは?」
そう言われることがあります。

ですが、ここで云う〝気分の波〟とは、
誰にでもある気持ちや気分の浮き沈みとは
性質の異なるものです。

それは、本人の気持ちや感情とは別の
むしろ身体的感覚に近い〝なにか〟だと云えます。

それ故に
体質から生じるものと考えられます。


小学生や中学の頃などには
相手に波長を合わせることに向いた資質が
周囲に気を使い過ぎるあまりに
空回りしてしまうと
「お調子者」「八方美人」のような陰口につながって、ショックでひどく傷つく場合があります。

こうした傷つき体験が
後々までトラウマとして影響を与えて、生きづらさにつながっていたケースを、複数拝見しています。


見落とされることが多い

わたしの場合には
この体質を持つ方と
カウンセリングでお会いする機会は、少なくないように思っています。

もちろん、いらした時には皆さん
ご自分の体質についてはご存じありません。

しかし、多くの場合に問題となるのは・・・
何かのきっかけで
カウンセリングに行ったり
クリニックを受診したとしても

カウンセラーや精神科医にさえ、基盤にある気分の波が見落とされることが多い。
神田橋條治 精神科医

・・・ということがげられます。


この記事では
基本的なことに絞って記しています。

たとえ同じ体質であっても
人それぞれに違いがあるものです。

ご一緒に考えていけたらと、思っています。

カウンセリングは
「試しに一度」でも、もちろん大丈夫です。
気軽にお問い合わせください。

よくある質問(FAQ)


Q1: 「気分の波のある体質」とはどのようなものですか?

A : 体質としての「気分の波」は性格とは違い、持って生まれたものを指します。日常の中で、何かのきっかけから気分の落ち込みと高揚感とを生じるのが特徴です。
気分が高く動いて高揚感が生じると、「拍車がかかってやり過ぎていく」傾向が生じます。

Q2: 誰にもある気分の浮き沈みと、どう違うのでしょう?

A : 体質としての「気分の波」は、本人の意識(気持ちや感情)とは別のものです。体質から生じる動きに、気持ちや感情が一体になって反応していく形になります。
例えば、つい今まで沈んだ様子をしていたのが、些細なきっかけでパッと明るい様子に変わる、ということもあります。このため「気分屋さん」と見られることもあります。
何かの原因があるように見えても、根底には体質としての気分の動きが存在します。しかも情緒が不安定になると、体質としての気分の波も不安定になる傾向があります。

Q3: 「落ち込み」の時には、どのような特徴がありますか?

A : 気分が低下して落ち込んだ状態になると、後悔や不安がひどく湧いてきて悪循環の思考に入っていきがちです。自分を責める気持ちが強くなります。
不安な気持ちからじっとしていられず、焦燥感に陥ることもあります。
体質からくる気分の落ち込みとは、ただ元気が出ないというのではありません。つらい苦しさを心身に伴います。

Q4: 気分の波と、どのように付き合っていけばよいでしょう?

A : 大切なのは、ご自分の気分の波の動きというものを、まず理解することです。同じ体質でも皆さん違いがあります。次には「観察する自分」というものを作り、「あっ、いま自分はこうなってる」というように、感じ取れるようになることです。
しかし、自己流のやり方ではどうしても限界があり、しかも自分自身を苦しめる方向へ行きがちになります。
この体質の方は、物事を直観的に把握することに優位な資質があります。したがって余り細々と内省的にならないことが、むしろ治療的です。カウンセラー等と話し合ながら一緒に考えていく、という場が必要だと思います。


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