気分に波のある「体質」とは : 気持ち(メンタル)に波がある、落ち込みがつらい

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(初出: )

「気分の波」と体質

気持ちが落ち込んでつらくなる。
気分・メンタルに波がある」。
そう感じることはありませんか?

こうした「気分の浮き沈み」は
性格的なものではなく、
生まれ持った“体質”による場合があります。

この記事では、
カウンセリングでの経験をもとに
気分の波のある体質」について
わかりやすくお伝えします。

筆者からのひとこと

筆者自身も、この体質を持っています。

子どもの頃は
内気で〝引っ込みじあん〟な面が目立っていましたが、
カウンセリングを行うようになって
自分の体質に気づき、
自分自身を観察することで
多くのことを理解できました。

「気分の波のある体質」の場合には、
ご自分の体質を知らずにいることで
気分の波に振り回されて
物事をダメにしてしまったり、
情緒が不安定になって、生きづらさに繋がる場合があります。

大切なのは、
ご自分自身の〝気分の波〟というものを
理解し感じ取れるようになること
です。

最後までお読みいただいて、
ご一緒に考えていけたら幸いです。

体質とは持って生まれているもの

「自分の気分の浮き沈みがなんなのか、いろいろ考えもよく分からなかった」
「体質からくるものと知って、はじめて納得できた」
そうおしゃる方がいます。

私たちは人それぞれに、
さまざまな気質や体質を持って生まれています。

体質・気質〟というのは
後天的な性格とは違い、
生まれた時にはすでに
その人(子)の内にるものを言います。

その中に
気分の波のある体質」があります。

池見酉次郎(ゆうじろう)氏が、
次のように説明しています。

池見酉次郎写真

人間の情意の面で感情や気持ちの動き方と根本にある行動の傾向先天的に備わっている特性を「気質」と呼んでいます。
これに環境的な要因が加わってつくられたものが「性格」なのです。

池見酉次郎 心身医学

池見氏は心療内科の創設者で、
心身医学を築いてきた人物です。


体質としての気分の波 : 気分の落ち込みと高揚感

体質としての『気分の波』とは
次のようなものを言います。

何かのきっかけで・・・
気持ちや気分が落ち込んで
心身が苦しい状態になることがある

一方で〝気分の波〟が高く動くと
高揚感(こうようかん)が働いて
拍車はくしゃがかかって止まらなくなる。
拍車がかかってやり過ぎてしまう

もちろん、同じ体質であっても
その現れる形や程度は
人によって違いがあります。

たとえば
次のように打ち明けてくださる方が、いらっしゃいます。

掲載はご了解をいただいたものです。

回想している女性のイラスト

気分に波のある体質かどうか、自分ではよく分からないです。
職場でハイテンションだけれど
家に帰って一人になると落ち込んで
、繰り返し職場のベランダから飛び降りるイメージが出てくる、ということはよくあります。
あと先生が言っていた「やり過ぎてしまう」というのは、とてもよく分かります。
たとえばですが
私が「面白キャラ」として何かをしたことで、職場の人たちが喜んだとして、
その時に私の中に、あらががたいうれしい気持ちが湧いてきて、もっともっと、と自分を駆り立ててしまうことは、あると思います。
そして、後からひどく後悔して落ち込んだりして・・・。
自分がその体質かどうかは、まだ分からずにいます。
ただ確実に言えるのは、私の母は恐ろしく気分の波がある人だ、ということです
私が小さいころ、ふいに不機嫌ふきげんになったり落ち込んだりして、私は母の機嫌がよくなるまで一緒に落ち込んで、顔色をうかがっていました。

この方の場合には、
嬉しい気持ちが湧いてくると(止まらなくなっていく)というのは、
体質としての気分の動きに加えて
「心のパターン」が関わっていたことが、
カウンセンリグの中で理解されていきました。


気分の落ち込み : 気分の低下と抑うつ気分

この体質によって生じる
〝気分の落ち込み〟とは、
〝気分や気持ちの低下〟状態から
専門用語でいう『抑 (よく)うつ気分』までを含む、幅広いものです。

「抑うつ気分」とは、
ただ気持ちが落ち込む・元気が出ない、というものではありません。

心身がつらく苦しい状態のものです。

「ダウンの時期」と表現する人もいます。

気分の低下とは

気分や気持ちが低下してくると

例えば、
そんな大した事ではなくても「約束」していたことが、
急に気が重くなったり、
なぜか行く気持ちが失せてしまったり。

気分が低下すると
「約束」ということに、ひどく拘束感を感じるようになり
このようなことが起きてきます。

抑うつ気分とは

抑うつ気分の状態になると

後悔や不安がひどく湧いてきて
自分のことを責めたり、
つらい堂々めぐりの思考におちいっていきます。

過去や将来について、ちょっとした不安が浮かぶと、それがグルグル連鎖反応を起こして、苦しい悪循環の思考に入ってしまう
ご相談者の言葉

・・・こうしたことが起こりがちです。

朝起きた時に
こうした〝気分の落ち込み(抑うつ気分)〟に苦しめられる
という方がいらっしゃいます。

たとえば
高校生や大学生から
このような訴えを聴くことがあります。

友だちといるときは、明るく元気に振る舞って、みんなから悩みがない人みたいに見られてるけど、一人になると悲しくなって、気持ちが落ち込んで、なにもやる気が起きなくなる。
最近ではテレビを見てても、なんでもないところで涙が出てくることがある。自分を責めたり、死んだら楽になるのかな、みたいに考えてしまう時がある。

これらの訴えからは
深い抑うつ気分がみてとれます。

上にも記したように、
抑うつ気分とは、
心身がつらく苦しい状態のものです。

ちなみに抑うつ気分での
「消えてしまいたい」
「死んだら楽になるのかな」という思いは
うつ病で生じる『希死念慮きしねんりょ』とは異なり、
この苦しさから逃れたいという思いのことです。

学生にみられるこうした訴えと
最初に掲載した女性の談話とを重ねると
抑うつ気分というものが
お分かりになると思います。

職場でハイテンションだけれど、家に帰って一人になると落ち込んで・・・・

理解することで変えていける

カウンセリングの中で
次のようなお話をうかがうことがあります。

自分で考えても、コレといった理由や原因がよく分からず、気持ちが落ち込んで、家から出られなくなることが、これまでもあった

それを繰り返したくないけれど
「自分で考えているだけでは、よくわからないので」と、カウンセリングに足を運ばれます。

「理由や原因がイマイチよく分からない」
という場合もあれば、
何かきっかけのようなことがある
という場合もあります。

しかし、そのいずれの場合にも
根底には「体質」が関わっていることが少なくありません。

ご自分が持つ『気分の波』というものを
ご一緒に考え理解してゆくことで
少しずつ、変えていくことができます。

体質としての気分の波 : 高揚感

気分の低下がある一方で
日常の中で何かをきっかけとして
気分が高く動いて〝 高揚感〟が生じる場面があります。

高揚感と云うと
「ハイテンションで、楽しくなってワ〜ってなっていくことですか?」
・・・そうかれることがあります。

しかし、そのようなイメージでは
日常の中で生まれる「高揚感」の現れを
うまく理解できません。

この体質に生じる日常での高揚感には
躁病の患者さんにみられる
多幸感(たこう・かん)というものは
ほとんどありません。

高揚感に引っ張られて
自分の感情が一緒になって動いていき

・拍車がかかって止まらなくなる。
・拍車がかかってやり過ぎてしまう。

このようなことが生じます。

これが続くと、
思考がだんだんと空回りする状態になります。

こうした思考の空回りが
イライラ感だとか怒りっぽさ、
そして
〝せっかち〟な焦り感へと、表面化していく場合があります。

ですので、ご自分のことを
「不機嫌うつ病なんだと思ってた」
そうおっしゃった方もいます。

あるいは、
電灯のスイッチを入れた時に
起動電流が瞬間的に高く動くように、
気分の波が瞬間的にバッと高く動く時には、
そこから生じる言動によって、
「動きが唐突」「発想がユニーク」
「個性的で面白い」「落ち着きがない」
まじめな場面でそれが現れると、
「ふざけてるのか真面目なのか、
なにを考えているのか分からない」など、
相手によっても
さまざまな感じで受けられるかも知れません。

繰り返すようですが、
こらのことは、人によって違いがあります。

パートナーとトラブルになるケース

たとえば普段は
「気配りのできる明るい人」
「場を盛り上げるのが上手で楽しい人」
と信頼されている方が
パートナーから 「もうやらないで欲しい」と言われている行動を
高揚感の衝動(しょうどう)によって繰り返してしまい、
関係が壊れてゆくケースがあります。

「どうしてしたのか」と
パートナーから問われても、
「自分でもよく分からない」としか答えられません。

自覚がされにくい高揚感

高揚感が働いている時というのは
苦痛を感じるものではないために
自覚されずにいることが多いようです。

しかし、実際の人生の中で
せっかくの機会をダメにしてしまったり。
人との関係が壊れることが起きるのは

むしろ高揚感の状態が、関係していることがあります。

そして、ご一緒にお話しをしていく中で

先生が最初に云っていた「拍車がかかって止まらなくなる」という感覚が、自分でも分かるようになってきました。
ご相談者の言葉

そうおっしゃる方は少なくありません。

それによって少しずつ、
いろいろな変化が生まれてきます。

高揚感の後の気分の低下

高揚感が働いた後の気分の低下、
ということがあります。

次のようなお話を
お聴きすることがあります。

掲載は了解を得たものです。

この体質の人の持ち味として、
初対面の人とも
打ち解けるのが上手だったり、
コミュニケーションが自然にできる、ということがあります。

そのため、
アルバイトなどの面接に行くと
面接担当者との間で話が盛り上がって
「ぜひ、明日からすぐに来て欲しい」と云われることも多いけど
帰ってから
不安や後悔がひどく迫ってきて
その日のうちに断りの電話を入れる
・・・ということを繰り返してしまう。

ご本人は自覚できずにいましたが、
上がった後の気分の低下』によるものが
つよく影響しているエピソードです。

この体質の人にみられる特質

この体質を持つ人たちには
人をきつける魅力をもつ方も多いと思います。

この体質が
クリエイティブな創造性として
発揮される例も、実は珍しくありません。

たとえば
舞台俳優・演出家として
特異な才能を発揮している男性がいます。

『こころの綾』を感じとる感性

この体質の人が持つ資質を
神田橋條治(じょうじ)氏が、こう述べています。

(この体質の人は)たんに気分の波があるだけでなく、感性や感情が行動に直結しやすく、秘めることが不得意です。
その一方で、言葉では表現できない〝こころの綾(あや)〟を感知する能力があり、人と接する職業などで成功することが多い。
神田橋條治 精神科医

綾とは、織物の複雑な模様のことです。
「こころの綾」とは、言葉では表現されず
ふとした表情や雰囲気、小さな仕草などから感知される、微妙な感情の動きのことを意味します。


こころの綾への感性も手伝って、
この体質の人は
「初対面の時から、打ちとけた関係ができやすい」ことが、言われています。

この能力ゆえに
職場や仕事などでは
コミュニケーション能力が高い、と評価されたりしますが
ご自分では、むしろ
苦手だと思っている場合があります。

コミュニケーション能力があるとか、初対面の人とでも上手に会話ができてすごい、とか云われるけど、自分は精一杯やっているので、むしろ苦手だと思っているんです
ご相談者の言葉

重役の秘書として成功している女性。

「お客様アンケート」では
常に一番評判がいいという人がいます。


小学生や中学の頃などには
相手に波長を合わせることに向いた資質が
周囲に気を使い過ぎるあまりに
空回りしてしまうと
「お調子者」「八方美人」のような陰口につながって、ショックでひどく傷つく場合があります。

こうした傷つき体験が
後々までトラウマとして影響を与えて、生きづらさにつながっていたケースを、複数拝見しています。


見落とされることが多い

わたしの場合には
この体質を持つ方と
カウンセリングでお会いする機会は、少なくないように思っています。

もちろん、いらした時には皆さん
ご自分の体質についてはご存じありません。

しかし、多くの場合に問題となるのは・・・
何かのきっかけで
カウンセリングに行ったり
クリニックを受診したとしても

カウンセラーや精神科医にさえ、基盤にある気分の波が見落とされることが多い。
神田橋條治 精神科医

・・・ということがげられます。


この記事では
基本的なことに絞って記しています。

たとえ同じ体質であっても
人それぞれに違いがあるからです。

ご一緒に考えていけたら幸いです。

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