
気分が落ち込んで苦しむこと
生きづらさを感じることはありませんか?
もしかすると体質が関わるもので
『気分の波のある体質』かも知れません。
この体質を持つ方たちが
苦しむことが少なくなるために。
そして
この体質に備わった大切な資質を
より良く生かしてゆくために。
カウンセラーとしての経験を通して
理解しておくべき大切なことを
お伝えしています。
カウンセリングでは
あなたが、ご自分自身を理解しながら
少しずつ楽になってゆくことを
大切にしています。

はじめに
〝体質・気質〟とは、生まれた時には既に
その人(子)の内に在るものを云います。
そして体質や気質というものは
人によって様々なのですが
その中に『気分の波のある体質』
というものがあります。
わたしの場合には
この体質を持つ方とカウンセリングでお会いする機会は、少なくないように思います。
しかし多くの場合、問題となるのは
カウンセラーや精神科医にさえ、基盤にある気分の波が見落とされることが多い。
神田橋條治(じょうじ) 精神科医
・・・ということが挙げられます。

たとえば、次のように
打ち明けてくださる方もいます。
掲載は了解を得たものです。
気分に波のある気質かどうか、自分ではよく分からないです。
職場でハイテンションだけれど
家に帰って一人になると落ち込んで、繰り返し職場のベランダから飛び降りるイメージが出てくる、ということはよくあります。あと「やり過ぎてしまう」というのは、とてもよく分かります。
先生がおっしゃっていた「人なつっこい」ということとも、関係があるのかも知れませんが。たとえば私が「面白キャラ」として何かをしたことで、職場の人たちが喜んだとして、その時に私の中に、抗い難いうれしい気持ちが湧いてきて、もっともっと、と自分を駆り立ててしまうことは、あると思います。
そして、自分がすっかり必要以上に「面白キャラ」になってしまったことに、後からひどく後悔して落ち込んだりして・・・。誰でも気分の波があると思うので、私が特別に気分の波がある気質なのか、ということが自分では判断が出来ないところではあります。
ただ確実に言えるのは、私の母は恐ろしく気分の波がある人だ、ということです。
私が小さいころ、ふいに不機嫌になったり落ち込んだりして、私はそれが自分のせいだと思って、母の機嫌がよくなるまで一緒に落ち込んで、顔色をうかがっていました。
同じ体質の人であっても
個性や現れ方といったものは
当然、皆さん違いがあります。

気分の波のある体質とは
『気分の波のある体質』というのは・・・
気持ちや気分が落ち込んで
心身が、つらく苦しい状態になる。
何かのきっかけで
気分の〝高揚感 (衝動感)〟が生じると
拍車がかって止まらなくなる、やり過ぎてゆく。
・・・こうした気分の動きが、生じやすい体質のことを指します。
著名な精神科医の神田橋條治氏が
この体質の人が持つ共通の感性について
次のように語っています。
神田橋條治
(この体質の人は)たんに気分の波があるだけでなく、感性や感情が行動に直結しやすく、秘めることが不得意です。
その一方で、言葉では表現されない微妙な〝こころの綾(あや)〟を感知する能力があり、人と接する職業などで成功することが多い。
神田橋氏が語るように
微妙な〝こころの綾〟を感じ取る感性ゆえに
重役の秘書として成功している女性。
舞台俳優として
特異な才能を発揮している男性がいます。
「お客様アンケート」では
常に一番評判がいいい、という方もいます。
相手先の企業の担当者と
すぐに打ち解けて仲良くなる、みたいな方もいらっしゃいます。
しかし、その一方で
〝こころの綾〟を感じ取る感性を持ってはいても、それを上手に生かすことが出来ず
〝独りよがり〟になったり
空回りになって神経を疲れさせたり
・・・という方たちも拝見しています。

〝感性や感情が行動に直結しやすい〟
というのは
たとえば、「そうか、こうすればいいんだ」
「そうだ、こうしてみよう」
・・・そう思い付いたり
パッと何かを閃くと
すぐに行動に移す。
あるいは、すぐさま行動したくなる
という意味です。
行動力があり決断が早い一方で
日常生活や学校生活などで
相手がいる場合には
衝動的な言動に受け取られて、相手を戸惑わせる場合があります。
つらい気分の低下
この体質の人に生じる
〝気分の落ち込み〟のことを
『抑 (よく)うつ気分』と云います。
抑うつ気分とは、ただ気持ちが落ち込む・元気が出ない、というものではありません。
心身がつらく苦しい状態のものです。
- 気分や気持ちが塞いでゆく。
- 一人になると何故か悲しくなる。
- 憂うつな気分が深く心を占めてくる。
- 虚しさや悲哀感が迫ってくる。
- 訳もなく涙が出てくる。
- 消えてしまいたい、という気持ちが湧いてくる。
抑うつ気分になると
こうした気分状態に陥ります。
後悔や不安がひどく湧いてきて、
ぐるぐる堂々めぐりに陥ってゆきます。
自分自身をダメだと責め、 過去の出来事がひどく後悔されたりします。

「人のちょっとした態度がきっかけになって、皆から除け者にされてしまったような気分になって、自分はダメだという劣等感が襲ってくる」ことをきっかけに
気分の低下に落ち込んでいくことがあります。
「過去や将来について、ちょっとした不安が浮かぶと、それがグルグル連鎖反応を起こして、苦しい悪循環の思考に入ってしまう」
朝目覚めた時に
気分の低下に苦しめられる、という方がいらっしゃいます。
「子ども(小学生くらいから)の頃から、死にたいと思うことがあった」
・・・というお話を聴いた時には
もしかすると、この体質の人ではないかと、考えてみる必要があります。

〝高揚感〟のあらわれ方
ご本人自身では
気分の低下した状態・抑うつ気分の時が
つらくて苦しいために
『気分の高揚』状態のほうは
ほとんど意識されていないことが、多いようです。
しかし、具体的な人生や生活において
生きづらさの思いにつながったり
せっかくの機会をダメにしてしまったり
人との関係を損なってゆくのは
実は〝高揚時〟に起因する場合が
ほとんどかも知れません。
ですので、この気分の動きを理解してゆくことが、とても大切になります。

拍車がかかってやり過ぎていく
高揚感と云うと
「楽しくなってハイテンションで
ワーッてなっていく状態のことですか?」
・・・そう聞かれることがあります。
しかし体質として日常の中で生じる高揚感の現れを、そのように考えていると、よく分からないことになります。
しかも、ここで云う「気分」とは
そうとしか呼びようがないので「気分」と云っているだけで
本人の自覚的な意識とは
別のところで動き出す
〝何ものか〟のことを、意味しています。
そして、なにかのきっかけで生じる
この〝何ものか〟の動きに強く引っ張られて
気持ちや感情が一緒になって
動いていくことになります。
本人の気持ちや感情の一瞬前に
内的な動きがあるのです。
ですので、その時の
本人の(自分の)気持ちや感情だけを
見ているだけでは
ここで云う〝気分の動き(高揚感)〟を
把握できません。
何かのきっかけで
〝気分の波〟が高く動いてゆくと
浮いてゆくような衝動感に
気持ちや感情が強く引っ張られて
『拍車がかかって止まらなくなる』
『拍車がかかってやり過ぎていく』
・・・このような動きになっていきます。
完璧主義にみられる
仕事などでは
「拍車がかかって止まらなくなる」という動きが、「完璧主義」と間違えられます。
職場で
「時々近づきがたい雰囲気で、声をかけづらい時がある」
そう云われたことがある
・・・という人がいます。
気分の高揚状態の後に
気分の低下が起きてくる、という場合もあります。
たとえば、ひとつの例では
飲み会で、楽しくテンション高く飲んだ後
帰って一人になってから
あるいは翌日になって
気分の低下・低調が訪れて、気持ちが落ち込み、後悔や不安の意識に責められる、という場合があります。
振り返ると、これと似たようなことが
起きていることに気づくかも知れません。
この気分の高揚感がマイルドに働くと
「場を盛り上げるのが上手な人」
「よく気がつく賑やかで楽しい人」
・・・という評価を得ることになります。
しかし、その一方で
普段の時には
自分では「もう止めよう」と思っていたり
あるいは
パートナーから「もう、やめて欲しい」と云われているような行動を
高揚感の衝動の中で繰り返して
問題に発展していくケースがあります。

個性的な魅力と能力
この体質を持つ人たちの中には
個性的な魅力を備えていたり
他では真似のできない
特異な才能を発揮する人たちがいます。
この体質が
クリエイティブな創造性として
発揮されることも珍しくありません。
あるいは、
感覚的なものに秀でていて
臨機応変の能力に長けていたり。
職場などでは
コミュニケーション能力が高い、と評価される場合があります。
しかし自分では、むしろ
苦手だと思っている場合があります。
神田橋條治
(この体質の人は基本的に) 窮屈な環境に置かれると苦しくなり、情調が不安定となってくることがある。
この体質のことを早めに理解して、工夫や対応をしてゆくことで、自他の苦労や苦しさが大幅に軽減される。
体質としての〝気分の波〟に
振り回されることが少なくなり
その特質をより良く生かしていくためにも
ご一緒に考えてゆく
・・・ということが、とても大切になります。
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