神経症性うつ・抑うつ神経症

「神経症性うつ」について




すでに1960年代の頃から

うつ症状で精神科の外来を訪れる患者
 さんが、とても増えてきている


という報告がされていました。

ちなみに、この時代には
心療内科は存在していません。

そうして増えてきた患者さんの多くが、

神経症性うつ」あるいは
軽症うつ病」と診断されています。

軽症うつ病とは、
通院治療で可能な状態像のうつ病を
通常そう呼んでいます。

| 抑うつ症状をめぐって |


「うつ」症状・・・

専門用語的には
「抑うつ症状」が認められた時に、

抑うつ症状の元にある病態が
どのような病態かを
見立てる・・・

精神医学用語では「鑑別・診断」する、
必要が出できます。

どのような病態かによって
治療やケアが、本来は異なるからです。



1・体の病気から生じているものか。

2・うつ病としての症状か。

3・神経症性の症状か。

まず、これらを鑑別することが
とても大事な作業と云われます。


抑うつ状態を訴える男性の患者さんが
外来にいらして。診察の時に、「頭が働
かなくなりますよね、新聞を読んでも頭
に入ってこないので辛いですね」と尋ね
ると、「そうらしいですね。でも朝、
新聞を取りに行くのはとても億劫だけど、
私の場合は、読むのは普通に読めるんで
すよ」と答えるので、ん? と思って、
内科に回ってもらい、そこで膵臓の病気
が見つかったというケースがあります。

      神田橋條治 精神科医

ちなみに、本来のうつ病のことを
伝統的な精神医学では、

内因性うつ病」と呼んできました。


中安信夫氏(精神科医)は
こう語っています。

(内因性うつ病の診断を間違えてはなら
 ないのは)

内因性うつ病は、抑うつ神経症や抑うつ
反応と違って、どんなに軽症であっても、
また初期であっても、希死念慮が必発で
あり、稀ならず自殺企図が生じるからで
ある。


| 神経症性と内因性 |


上に記したように、

本来のうつ病とは、
内因性うつ病」と呼ばれる病態を
指して云うものです。

神経症性のものと
内因性とされるものとは、

伝統的な精神医学では
別の病態とされてきました。

そして、神経症として
抑うつ症状を呈している病態を、

神経症性うつ
あるいは、抑うつ神経症と呼んでいます。


精神医学は以前から、内因性・外因性・
心因性の三つの原因領域を、区別して考
えていました。


「心因性」とは心理的な原因から生じた
病態について云われる言葉です。昔から
「抑うつ神経症」とか 「神経性うつ病」
と云われてきた病像なども、もちろん
「心因性」のカテゴリー に入ります。
というよりもむしろ、そういった神経症
性の病像こそ、心因性の病態の代表的な
ものと考えられているのです。


「外因性」というのは「器質性」という
ものと、だいたい同じ意味です。
身体あるいは脳に、具体的に確認できる
ような形で生じている疾患や病変によっ
て、二次的に心の症状や精神的な異常を
引き起しているものを指します。


そして、こうした心因性・外因性を除い
たものを「内因性の精神疾患」と呼んで
きました。
精神医学の中心的な病気、つまり統合失
調症、本格的なうつ病や躁うつ病、パラ
ノイアと呼ばれる妄想病、いわゆる非定
型精神病などは、すべて「内因性」に分
類されています。


精神医学という専門領域が、内科学から
分離して存在している理由、単なる心療
内科ではない精神科というものの存在意
味。それが内因性の疾患なのです。


もしそれが「心因性」や「外因性」にす
べて解消してしまえるものならば、精神
医学の存在理由なんか、どこにもなくな
ってしまうはずのものなのです。
そして、内因性といわれる疾患にはどれ
も、かなり特徴的な環境や状況が、発症
の誘因・要因として見られることに気づ
きます。

  木村 敏 精神科医・精神病理学


心因性とは、心理的要因という言葉と
同じ意味と考えられます。

そして、
心理的要因という言葉は
意味が、とても誤解されやすい言葉です。



医学関係の文章を見ると、
論者(医師)によって

「神経症性うつ病」と
「神経症性うつ」というふうに、

ふたつの呼び方がされています。

それについては、
中安信夫氏(精神科医・精神病理学)が
このように語っています。

(自分が「神経症性うつ」という用語を
 用いるのは)

まだ原因がはっきりとは分からないとは
いえ、脳内の生化学的な失調が推測され
る「内因性うつ病」に限定して
(うつ病
という用語を)
用いるべきであって、
神経症の抑うつ型とでも云うべき疾患に
対しては
(うつ病という言葉を)使うべ
きではないと考えるからである。


| 神経症性としての病態 |


「神経症性うつ」と
「抑うつ神経症」とは

同じような意味として用いられています。

神経症性うつは、
抑うつ症状を主とする状態像で

しかも、内因性うつ病ではなくて、

症状の発症に
神経症としての心理的要因が
推察できるような病態を指します。


神経症性うつに限らないことですが、

神経症の場合には
薬物治療は補助的なものであり、

カウンセリングを含めた
心理的なサポートが
大切になることがあります。


神経症性障害については、薬物は特に補
助的な位置に立つ。
薬物治療だけでは、もともと抱えている
葛藤を未解決のままに遷延(せんえん /
慢性長期化)
させる。
しかし場合によっては、そうしているう
ちに周囲の状況が変わり、問題が自然解
消するかもしれない。
しかし、あくまでもそういうものであっ
て、ただ漫然とした薬物投与、特にいわ
ゆる無診投与、あるいはそれに近い状態
は、薬物への精神的依存の生涯に陥らせ
かねない。

       中井久夫 精神科医


生きる意味を見出せない
無力感や空虚感によって、

慢性的な抑うつ気分を
ずっと抱え続けて生きてきた・・・

そう打ち明けてくださる方も
いらっしゃいます。

| もうひとつの抑うつ神経症 |


一方で、精神分析畑の人たちの語る
「抑うつ神経症」があります。

それはどのようなものかと云うと、

強迫的な生き方を有している人が、

そうした強迫的な生き方の
行き詰まりや挫折をきっかけとして
現れる抑うつ状態のことを指して、

抑うつ神経症としています。

このタイプの人たちの中には
そうした強迫的な生き方・行動ゆえに、

仕事や職業の世界で
業績を上げる・成功する、
という方たちがいらしたりします。

なにかの直接的なきっかけが
在ったとしても、

それよりもむしろ、
強迫的な生き方やあり方の
行き詰まり・挫折による失調

・・・という大きな文脈で生じてくる、
「抑うつ神経症」と云えます。 



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